葛西、「自分を褒めたい」銀メダル獲得 メダルの色を分けたテレマークの差

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メダルを確定させたジャンプをチームメートも祝福

メダルの色を分けたテレマークのポイント差。金メダルの獲得はならず、葛西も悔しさをにじませた 【写真は共同】

 2本目は上位30人に絞られスタート。序盤に登場したドミトリー・ワシリエフ(ロシア)が強い向かい風を受けて144.5メートルとヒルサイズ越えの大ジャンプ。さらにマリヌス・クラウス(ドイツ)も140.0メートルと大ジャンプが続いたことで、スタートゲートは2ゲート分(約1メートル)下げられた。

 その中で、ノーマルヒル銀メダリストのペテル・プレヴツ(ポーランド)が、131.0メートルのジャンプを見せると、2本目の最高点となる140.3点を獲得。合計274.8点となり、その時点でトップに立った。このとき風の状況は、「条件としては130メートルに届かなくてもトップに立てるのではないかと思った」と横川コーチが語ったように、難しい追い風が吹き、ウィンドファクターでも得点が伸ばせる状況となっていた。
 葛西は「1本目を飛んで3位以内に入っていたので、すごいバクバク感はありました。ただ、それを抑えながら、集中して自分のジャンプを出せるというパターンが自分の中にあり、できるという自信もありました」と、W杯で同じような経験をしてきたからこそ、緊張しながらも自信を持って2本目のジャンプに臨むことができた。

 そして、低めの飛び出しからスピード速く飛び、133.5メートルの位置でランディング。しっかりと着地を決めて滑っていくと、ゴールゲート付近で待ち構えていた伊東、清水礼留飛(雪印メグミルク)、竹内択(北野建設)が、「のりさん、勝ちましたよ!」と走り寄ってきた。

「(3人が来てくれて)涙が出そうなぐらいうれしかった」とチームメートと喜びを分かち合うと、電光掲示板には「1」の表示。29番目に飛んだ葛西が暫定1位となり、この時点でメダルが確定した。

夢の金メダルへの挑戦は団体戦で

 残すところはノーマルヒル個人を制したストッフ。難しい風というのは同じ条件。現世界王者のジャンプを固唾(かたず)をのんで見守った。ストッフのジャンプは132.5メートルで着地し、飛距離では葛西よりも1メートル短い。

 葛西は「(ストッフのジャンプは)やっぱりか、という感じでした。でも後ろで択や大貴、礼留飛が『お願い、お願い、1位、1位』と言ってくれていて、僕も祈る気持ちで1位になりたいと思いました」と、仲間と祈りながら結果を見守ったが、再び電光掲示版に「1」の文字が表示され、ストッフの二冠が決まった。葛西との得点差はわずか「1.3点」だった。

「もうちょっとで金に届きそうだったんですけど。うれしい半分、いや、6対4ぐらいで悔しいです。でもこれは、テレマーク(着地の姿勢)のポイント差ですね」と葛西が語るように、2人の飛型点を比べると、それぞれ1本目が1.5点、2本目が0.5点ほどストッフが葛西を上回っており、この2.0点がメダルの色を分けてしまった。

「五輪に入ってから、なるべくストレスを溜めないようにしていましたし、金メダルを取るイメージでずっとやっていました。今日の朝もイメージトレーニングをしていて、(金メダルを取るシーンをイメージしたら)自分一人で泣いていました。それを今日はやりたかった」と葛西は悔しさをにじませた。

 それでも7度目の出場で、悲願だった個人でのメダル獲得に胸を張る。

「個人戦でメダルを取るというのは難しいことだと自分でも思っていました。なおさら、今の時代、非常にジャンプ界のレベルも高く、誰が勝ってもおかしくないという状況の中で、銀メダルを取れたのは、自分でも自分を褒めたい」と笑顔を見せた。

 しかしまだ、金メダル獲得という夢の可能性は消えていない。次は17日(現地時間)にラージヒル団体での戦いが待っている。「団体戦も金メダルを狙えるというぐらい、(日本チームの)レベルが上がってきている。目標を達成するまで、完璧なジャンプをして金メダルを取りたい」

 葛西を中心に、若い清水らがこの日のようなジャンプを見せれば、長野五輪以来の団体金メダルも見えてくるだろう。

(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)

<了>

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