葛西、「自分を褒めたい」銀メダル獲得 メダルの色を分けたテレマークの差

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41歳で悲願だった個人でのメダルを獲得した葛西。「自分を褒めたい」と喜びを語った 【写真は共同】

 飛行スピードの速いジャンプ、美しいV字飛型、そして完璧な着地。葛西紀明(土屋ホーム)がジャンプ界で“レジェンド”と呼ばれるゆえんは、そのお手本とも呼べる美しいジャンプを長年続けてきたことにある。そして今回の五輪では、その強さをも証明してみせた。

 ソチ冬季五輪のノルディックスキー男子ジャンプ・ラージヒル個人決勝が15日(現地時間)、当地のルスキエ・ゴルキ・ジャンピング・センターで行われ、41歳の葛西は2本合計277.4点(1本目:139.0メートル/140.6点、2本目:133.5メートル/136.8点)で2位となり、日本ジャンプ陣としては1998年の長野五輪以来16年ぶりとなるメダルを獲得した。

 優勝したポーランドのカミル・ストッフは278.7点でノーマルヒル個人との二冠を達成。葛西との差はわずか1.3点だった。

刻々と変化する難しい状況

 この日のルスキエ・ゴルキ・ジャンプ台は、誰も予測ができない風が吹いていた。風向きも強さも変わり、強い向かい風と思えば、風が急に止まって無風になるなど刻々と状況が変化していた。日本代表の横川朝治コーチも「飛んでみないとウィンドファクター(風の条件でもらえる得点)の点数が分からない」と話すほど。

 そんな天候は、葛西に思わぬ影響を与えた。20時30分(現地時間)からの試技は、26人の選手が飛んだ時点でキャンセルとなり、葛西を含む予選免除組の10人は誰も練習することができなくなってしまったのだ。葛西は前日練習でジャンプを一本も飛んでいなかったこともあり、「本当は試技を飛びたい感じはありました。ちょっと試したいことがあって。ただ、すぐに頭を切り替えました」と話したものの、ぶっつけ本番で決勝を迎えることになった。

 それでも横川コーチは、葛西について心配はなかったと言う。「(葛西のジャンプは)五輪に来る前に完成されていました。それが出せればメダルに届く」と、今季ワールドカップ(W杯)で絶好調の葛西が、本来の力を出しさえすれば、世界の強豪と渡り合えると確信していた。

1本目に139メートルの大ジャンプ!

 21時45分、予定より15分遅れで決勝1本目がスタート。風は本番が始まっても落ち着くことはなく、ウィンドファクターはプラス10.8からマイナス10.9と選手によって21.7点もの差がつくほど変化した。そんな天候の中、伊東大貴(雪印メグミルク)ら日本勢は運良く全員が有利な向かい風を受け、距離を伸ばして上位につけた。

「若手が援護射撃をしてくれたおかげで、葛西も自信を持って飛べた」(横川コーチ)と後輩たちの後押しを受けて、最後から3番目となる48番目の登場となった葛西は、飛ぶ前に一瞬笑顔を作り、リラックスした状態で1本目の飛行に入った。

「今日の作戦は、1本目に必ず良いジャンプをして好位置につける。1位、2位、3位ぐらいに入れば、自分のパターンになる」と1本目に集中した葛西は、139.0メートルとヒルサイズ(140.0メートル)付近まで距離を伸ばす。1本目を終えて狙い通りの2位につけた。テレマークは強引に入れる形となったが、「リザルトを見たら、(飛型点が)19点オールだったので、これならまだ勝負できる」と自信を持って2本目を迎えることができた。

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