広島に生まれる新たなスター 一岡竜司の可能性に高森勇旗が迫る

高森勇旗

主力が抜ける度に「誰か」がカバー

合同自主トレで笑顔を見せる一岡(左)。ルーキーの大瀬良とともに活躍が期待される 【写真は共同】

 ところで、広島カープというチームにはある歴史があるのをご存知だろうか。
 それはもう恒例のこととなったが、広島で育ったスター選手がFAで流出していくという歴史だ。これまでも、川口和久氏(巨人)を皮切りに、江藤智氏(巨人)、金本知憲氏(阪神)、新井貴浩選手(阪神)、黒田博樹投手(ヤンキース)といった面々が広島を巣立っていった。しかし、江藤氏の穴を金本氏が、金本氏の穴を新井選手が、新井選手の穴を栗原健太選手が、黒田投手の穴を前田健太投手が……といったように、主力選手が抜ける度に新たな主力選手を生み出してきたことも、同じく広島の歴史と言っていい。つまり、FAで誰かが抜けるということは、新たな「誰か」が生まれる前兆ではなかろうか。

 前述したように昨年、広島からFA宣言をして巨人に移籍した選手がいる。
 大竹寛投手。2年連続2ケタ勝利を挙げ、前田健太投手、野村祐輔投手、バリントン投手とともに10勝カルテットの一角を担った主力選手だ。広島は昨年、盤石の投手力を武器に初のCS切符を手にした。その投手力を支え、先発ローテとして君臨し続けてきた男が抜けることは、あまりにも大きな痛手となるだろう。そう、広島はまたしてもFAで戦力を失ったのである。
 と、いうことはまた新たな「誰か」が生まれる予感がする。

菊池も期待「戦力になる」

 その「誰か」――、私は一岡投手に期待したい。

 それは実際に対戦して彼の可能性を感じたからだ。特徴的なフォームと落差のあるフォークで浅尾投手に近づくことができたら……、広島にとって大きな戦力となるはずだ。

 今月、広島キャンプを訪れた際に一岡投手にあいさつをした。新しいチームに加わって緊張しているかと思いきや、「高森さん、小笠原(道大/中日)さんのモノマネ、めっちゃ覚えてますよ!マジ笑いました!」と明るい表情で話してくれた。この新しい場所への適応能力、たくましさも彼の魅力だ。

 一岡投手の実力を新しい仲間も認めている。昨年、ゴールデングラブ賞を獲得した菊池涼介選手は「先発かどうかは分かりませんが、戦力になると思います」と語り、ルーキーの田中広輔選手は「カーブとフォークが決まり出したら、かなり良いと思います」と期待を込めた。

 昨年、広島はドラフト1位で大学ナンバーワン投手の大瀬良大地投手を引き当てた。若い2人が活躍することで大竹投手の穴を埋め、新たな投手王国を築き上げたとき、広島はまたしても歴史を紡ぐことになるだろう。
 そして、2人が広島の柱となれば、近い将来に予想される「過去最大級の穴」に対する準備も早々に整うはずだ。

<了>

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著者プロフィール

1988年5月18日生まれ。富山県出身。岐阜・中京高−横浜ベイスターズ。 2006年ドラフト4位で横浜ベイスターズに入団。09年にはファームで打率3割9厘、15本塁打、56打点を記録し、イースタン・リーグ最多安打に輝き、ビッグホープ賞、技能賞を獲得した。12年に現役引退。 特技は「球界一」と称されたモノマネで、ITスキルを生かしたデータ分析も得意。現在は野球の取材をしながら、マルチに活躍している。

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