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“勝負の鍵”4回転ジャンプ特有の難しさ
本田武史が語る男子フィギュア展望・後編
男子フィギュアスケートで勝敗の鍵を握るのが4回転ジャンプ。本田武史氏に有力選手が跳ぶ4回転ジャンプの特徴を解説してもらった
男子フィギュアスケートで勝敗の鍵を握るのが4回転ジャンプ。本田武史氏に有力選手が跳ぶ4回転ジャンプの特徴を解説してもらった【スポーツナビ】

 ソチ五輪の男子フィギュアスケートで、勝敗の鍵を握るものは何か。もちろんスピンやステップで取りこぼさないことも重要だが、よりウエイトを占めそうなのは4回転ジャンプの成否だろう。2010年のバンクーバー五輪では、4回転ジャンプを跳ばなかったエバン・ライサチェク(米国)が金メダルを獲得。4回転ジャンプを決めながら銀メダルに終わったエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)が不満を述べたことで物議をかもした。


 しかしその後、採点方式が見直され、現在では4回転ジャンプを複数回跳ばなければ、国際大会で勝てない時代に突入している。日本代表として出場する羽生結弦(ANA)、町田樹(関西大学)、高橋大輔(関西大学大学院)もショートプログラム(SP)、フリースケーティング(FS)ともにプログラムに組み込んでくるのは間違いない。だが、高得点を稼げるだけに、ジャンプの難度が上がるのもまた事実。日本人選手として初めて競技会で4回転ジャンプを成功させた本田武史氏は、その難しさをこう表現する。「毎日跳んでいる選手でもたまに迷子になってしまう」。本田氏に、有力選手が跳ぶ4回転ジャンプの特徴を解説してもらいつつ、過去と現在における位置付けの違いを伺った。

僕らは意地の張り合いで4回転を跳んでいた

――ソチ五輪では4回転ジャンプの成否が勝負を分けるポイントになるかと思われます。4年前のバンクーバー五輪は4回転ジャンプを跳ばなかったライサチェク選手が優勝しましたが、今回は前回大会とは違った傾向が見られのるでしょうか?


 バンクーバー五輪では、4回転ジャンプを跳ばずに優勝したとあって、いろいろ議論が起こったとは思うんですが、それは選手たちが何か言うことではないと思いますし、ルールを変えたISU(国際スケート連盟)がそういう時代を作ってしまった面もあると思います。ただそこからルールの見直しがされて、4回転ジャンプが必要な時代に戻ってきているので、前回大会がそういう流れを作ったきっかけになったことは確かですよね。


――やはり4回転ジャンプがないと面白くないですか?


 そうですね。4回転ジャンプを跳ばなくても勝てるという時代を見て、「ああ、スポーツじゃないな」と思いました。やはり今までの歴史をずっと見てきて、2回転を跳んで、3回転を跳んで、トリプルアクセルを跳んで、4回転を跳んでと来たわけじゃないですか。そういう時代から20年以上たっているのに、進化せずに跳ばなくていいと言われたらやっぱり面白くないですよね。


――以前の4回転時代と現在の4回転時代で、技術的な違いは見られたりしますか?


 それは特にないですね。昔と違って、今は1つの4回転ジャンプに対して点数が付いている。僕たちの時代は4回転ジャンプを跳ぶのが競技者。男の意地の張り合いというか、「1人が跳んでいるから俺も跳ぼう」という感じだったんです。現在は1つの4回転ジャンプに点数が付いているし、高得点を出すために、「じゃあ、もう一回跳ぼう」という時代かなと思います。


――現役の選手で4回転ジャンプの成功率、美しさという点で一番優れている選手は誰でしょうか?


 それはもう羽生選手とパトリック・チャン選手(カナダ)ですね。今シーズンは失敗が多いですけど、ハビエル・フェルナンデス選手(スペイン)もすごいなと思います。

プルシェンコはコンパクトジャンパー

――高橋選手や鈴木(明子)選手をはじめ、最近は20代後半でもトップレベルで活躍する選手が増えています。選手寿命が延びているようにも感じられますが、本田さんはどうお考えですか?


 高橋選手と鈴木選手が続けているのは本当に珍しいことだと思います。ただ男子は25〜6歳で引退する選手が多いなかで、その時期が五輪に入っているかで変わってくると思うんです。高橋選手にとっては4年前のバンクーバーが、23歳のときの五輪だったわけなんですけど、そこで引退するのはまだ早かった。あと何年かは頑張りたい。だけど次の五輪は考えたくないという感じだったと思うんですよ。それでも成績を残すことによって、「次も狙っていこう」という考えに変わっていったんだと思います。


――やはり27〜28歳になるとピークは過ぎてしまうのでしょうか?


 4回転ジャンプの時代になって、27〜28歳というのは一番難しい時期なのかなと思います。ただ、それでもできるんだぞというのを見せていたのがプルシェンコ選手かなと。本当に彼の存在感や五輪に懸ける思いというのは素晴らしい。僕らはずっと現役のときから戦ってきたのですごく分かるんですけど、今でもあそこまでできる選手というのはたぶんいないと思います。


――やはり圧倒的にすごいのでしょうか?


 すごいですね。(昨年手術した)人工椎間板を持ちながら4回転ジャンプを跳ぶ人間というのはなかなかいないですよ(笑)。ただそれは、ほかの選手たちの希望になるというか、やっぱり頑張っていれば続けられるんだなと思いますね。


――プルシェンコ選手の4回転ジャンプについてはどう評価しますか?


 本当にプルシェンコ選手のジャンプはほとんど無駄がないんです。回転の速い選手で、回転軸がしっかりしたジャンプを跳ぶ。パワージャンパーというよりは芯がある回転の速いコンパクトジャンパーですね。

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