愛子メダルならず…それでもアグレッシブに攻めきった=モーグル解説
積極的な滑りで、最後まで力を出し切った上村 【Getty Images】
上村はメダルを懸けて6人が争う、決勝3回目に進出。20.66ポイント(ターン:10.6、エア:4.20、タイム:5.86)で、最後のひとりを残した時点で3位につけていた。しかし、ラストのハナ・カーニー(米国)が21.49ポイント(ターン:11.1、エア:4.76、タイム:5.63)で上村のポイントを上回り、表彰台はならなかった。
優勝はジャスティン・デュフォー=ラポイント、2位はクロエ・デュフォー=ラポイント(ともにカナダ)だった。
スポーツナビでは、女子モーグル日本代表として2002年ソルトレークシティー五輪、06年トリノ五輪に出場した畑中みゆきさんに解説を伺った。
予選から決勝まで4本を滑った上村の滑り、また採点競技だからこその、勝つ難しさとは。
決勝は1番滑走 良い滑りもジャッジ判断は慎重に
上村選手の得点ですが、決勝のスタート順は6人中1人目だったので、点数が出にくかったかもしれません。最初に滑る選手の得点は、あとから滑る選手の基準になります。そのため、最初から高い点数を出してしまうと全体の得点に響くので、1人目に滑った上村選手に対してジャッジも厳しい(慎重な)判断をしなくてはならなかったのかもしれません。4年に1度のメダルを決める判断になるわけですから。(銅メダルの)カーニー選手は、ワールドカップ総合女王(昨季まで3連覇)ですし、ジャッジの“基準得点”が出来上がっているところはあるかもしれません。表彰台に上がった3選手はW杯ランキングで1位〜3位の選手です。彼女たちの得点を見てみると、みんな4点台かそれに近い3点台後半。でも、上村選手は3点台真ん中。そうなると(勝つのは)なかなか難しいです。
上村とカーニーの得点を分けたもの
得点のベースは、そういった今季の成績、実績の印象に左右される部分もあると思いますが、予選の滑りでのジャッジへのアピールは、若干、消極的にとられたのかもしれませんね。
得点は、これをこうしたら何点取れるというのが決まっているわけではありません。もちろん明らかなミスをしたら得点に影響しますが、あくまで決まっているのはターン50%、エア25%、スピード25%という、ジャッジの比重です。
同じスキーでもアルペンのようにタイムを争う競技だったら速い方が勝ちますが、モーグルは採点競技なので、そこが難しいですね。
勝つために大事な戦略
試合後、目に涙を浮かべて小林茂コーチと抱き合う上村愛子 【写真は共同】
また今日のコースは難しいコースでした。コブのピッチと言って、コブ同士の距離感がバラバラでしたね。通常は等間隔で整っているのですが、今回はコブが大小さまざまで、20年くらい前にあったような、自然のコブに近いようなコースでした。たぶんこの五輪からできたコースの形状なのではないでしょうか。普段からそういうコースでやっていればいいのですが、慣れていないと難しいです。さらに気温が低いためコブが硬く、ターンの際に弾き返されてしまう選手もいて、予選ではケガで棄権した選手も出ていました。気温は確か、準決勝がマイナス3度で、決勝がマイナス1度だったので、決勝のほうが温度が高い分、コブの硬さが柔らかくなって滑りやすかったと思います。
<了>
畑中みゆき/Miyuki Hatanaka
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