南部監督「世界トップと戦えるチームに」=バレーボール全日本男子監督就任会見

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新監督の最終候補は5人いた

荒木田本部長が監督交代の詳細な経緯を説明。4カ月半に及ぶ議論により、最終候補5人の中から南部監督が選出された 【坂本清】

荒木田 今回の監督交代、新監督の決定まで、およそ4カ月半にわたり私たちは活動してまいりました。その経緯を簡単に説明させていただきます。まず、13年の9月8日(日本時間)、20年の東京五輪開催が決定しました。その日の夜、日本の男子が韓国に敗れて14年の世界選手権への出場権を逃すということがありました。われわれとしては、世界選手権への出場は当然のこととして認識していたので、突然それを逸したことにひどいショックを受けました。

 なんとかしなければならないということで9月15日には強化担当者が集まり、これからの強化方針を検討しました。そのためにはまず、ゲーリー・サトウ監督率いる全日本の活動を全部見直し、彼の力も借りながら彼の考えることや構想、データをすべて確認し分析もしてレポートにまとめました。それが10月24日でございます。そして11月25日のグラチャン(ワールドグランドチャンピオンズカップ)終了翌日に自分たちが何をするべきか、これからどうするべきかをもう一度考えたいということで、ゲーリー監督とも話をしながら方向性を確認しました。

 そして12月9日、第1回男子強化委員会を開催し、ここではゲーリー監督も昨年の活動を報告しました。彼が非常によく頑張ったことは事実ではありますけど、やはり、日本のバレーと米国のバレーを融合するにはまだまだ時期尚早で難しい部分があるのではないかというのが全体の考えでありました。どういうバレーをするべきか、リオ五輪に出るためにはどうすればいいのか、東京五輪で勝つためには何をするのかを考えて、構想を持っている人にこれからの日本を率いてもらう話になりました。

 その時点ではゲーリー監督を解任するとかではなくて、あくまで候補の一人として担当者がそれぞれ推薦する中から候補者を決めようということになりました。そして12月28日、第3回男子強化委員会で5人の候補者がそれぞれプレゼンをし、大体5時間を掛けて最終的な候補者を決めました。それが南部正司さんです。

 理由としては、Vプレミアリーグの監督としての実績。それからブラジルをはじめ海外の場で積極的に学びチーム強化に取り入れる積極的な姿勢。あくなき向上心が決め手です。そして14年の1月22日、強化事業本部会で承認、1月29日の理事会でも承認いただきました。そこから、パナソニックパンサーズとの交渉もありまして、正式には2月5日就任となりまして、本日発表という運びになりました。

 国際バレーボール連盟の決定で、ナショナルチームの活動期間が約5カ月程度しかなくなってしまいました。それを考えると、リオ五輪まではあと2年半ではなくて、最後のOQT(五輪世界最終予選)までには11カ月しかないということで非常に危機感を感じています。これからはどういうチームを作るかにかかっているのですが、協会が一枚岩になって自分たちの決めた道をまい進していきたいと思います。

当面の目標はリオ五輪出場

――5人の最終候補者にはゲーリー・サトウ氏は含まれていた?

荒木田 この時点でゲーリー氏の名前は入っていません。われわれは彼のやろうとしているバレーや、これからどうやって米国の「スマートバレー」を融合させていこうとしていたのかは分かっていました。

――5人のプレゼン次第ではゲーリー氏が続投する可能性があったのか?

荒木田 おっしゃるとおりです。われわれにとってゲーリー氏は最後の最後まで候補の一人でありました。

――初めて外国人監督を招へいしてよかったこと、難しかったことは?

羽牟 まず良かった点です。例えば、ミュンヘン五輪で日本が金メダルを取って40年が経ちますが、その後の結果は胸を張れるものではありません。むしろ、時間が経つごとに日本の立ち位置はどんどん悪くなってきていました。それにもかかわらず、反省に基づいて次のステップには進めていなかったと私は思っております。

 次の道を明確にしていく中で、日本にこだわらず世界に人材を求めることが、新しいナショナルチーム体制の構築という理想に最も近づくと思い、外国人監督を招へいしました。その結果、地殻変動が起こり、自分たちのことばかりを考えがちなチーム関係者たちも、ナショナルチームが危機的な状況であることを認識し、心をひとつにして話をするようになりました。これは非常に良かったことだと思います。そういった意味では、男子バレーの現状は大変厳しいですが、将来に向けて明るい兆しを感じました。

 次に厳しかったことですが、ひとつに外国人であったということ。そこから発生するコミュニケーション不足であったり、バレー観に隔たりがありました。そしてその隔たりを埋めることを怠ってしまったというのを感じております。ただ、ここで改めて言いたいのは今後も、世界各国から優秀なふさわしい人材を今後とも必要に応じてお迎えしたいという気持ちはなんら変わりありません。

――ゲーリー氏の「スマートバレー」は今後も引き継ぐのか?新しい強化教科方針は?

桑田 ゲーリー・サトウ氏がわれわれに残していただいた「考えるバレー」は、私を含め日本バレー界の財産として継続していきたいと考えています。

――次の監督に対する目標設定はあるのか?

桑田 南部新監督は16年のリオ五輪出場を目指すというのが当面の目標です。20年の東京五輪でメダルを取るというビジョンもありますが、とりあえずは、リオ五輪の出場を決めると同時にアジア地区の2位以上を確保して欲しいと考えております。

ギャップを埋められなかった

――新監督に最も期待すること、今後のスケジュールは?

荒木田 やはり昨年までのメンバーがそろっていながら、世界選手権に出場できないというのが非常に大きなことでした。これからOQTまで(実質)11カ月しかありません。この間に若い選手たちに切り替えてどこまでやれるかというのを皆でサポートしていかなければならないと思います。

 昨年の男子バレーを見ていて、気持ちが外に出ていない(と感じました)。これから若い選手たちに切り替えた場合、技術は劣るだろうけれど、とにかく若い子のいいところを出してほしいです。熱い思いとか一生懸命やる姿勢を出して、南部監督も一緒に成長してほしいと思います。
 今年は世界選手権がないのでメインはワールドリーグ、秋のアジア大会です。この2つで勢いをつけて、来年のワールドカップで五輪出場権は取れなくても、ベスト8に入るくらいの結果を出して自信をつけてもらいたいです。そして再来年のOQTに臨んでもらいたいですね。20年の東京五輪に出場する12人が初めて五輪に出るというのは避けたいので、そのためにも16年のリオ五輪に出られるよう頑張りたいと思います。

――日本のバレーと米国のバレーの融合は何が難しかったのか?

荒木田 米国のバレーはアスリートの、選手個々の自立したアスリートがそろい、心身ともに充実したトップアスリートがやるバレーだったと思います。日本の選手はそのレベルには到達していないです。自立していないとか批判されますし身体の面でも違います。それをそのまま持ってきても難しい。そこをどう埋めていくかというのをゲーリー氏と話をしてきましたが、なかなか埋まらなかったというのがあります。

 日本の選手たちが自分で考えてやっていけるのかと考えたら、まだできないのではないかということがありまして、そこのギャップを埋められなかったというのが一因です。

――5人の候補者は全員日本人でしたか?

荒木田 名前を申し上げることはできませんが、外国人の方もいます。

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