富山第一・大塚監督の個性を生かす育成法 海外留学で学んだ指導者としての原点

平野貴也

劇的な展開で高校サッカー選手権初優勝を飾った富山第一。大塚監督に育成についての考えを聞いた 【平野貴也】

 ドラマチックな初優勝から約3週間が経とうとしている。第92回全国高校サッカー選手権大会で優勝した富山第一高校(富山)は、地元で多くの祝福を受けながら新チームの活動を始めた。嫌でも前年度との比較をされることになるが、選手の個性を前面に打ち出して快挙を成し遂げた大塚一朗監督がどんなチームを作るのか今から楽しみだ。

 大塚監督は少し変わった指導キャリアを持っている。留学をきっかけにイングランドでコーチライセンスを取得。社会人チーム、女子チーム、海外クラブ、ナショナルトレセン活動、少年指導と幅広く活動してきた。その経験は、彼にどのような影響を与えたのか。富山第一高校を訪ね、大塚監督に話を聞いた。

与えられた戦力で工夫することが仕事

――あらためまして、初優勝おめでとうございます。富山へ来て、駅や商店街のいたるところに祝賀のメッセージが掲げられているのを見ました。反響は大きかったようですね

 地元に帰ってきてから、近隣のおじいちゃんやおばあちゃんが「すごく感動した」と言ってきてくれました。泣いてしまって、握手をすると手を離さないぐらいでした。いろいろな人を感動させることができたんだな、すごいことをしたんだなとあらためて思っています。

――今季は堅守速攻がベースのチームでしたが、大塚監督はどのような理想を描いてチーム作りをしていますか?

 プレミアリーグWEST(※東西10チームずつで構成されている、高校年代で最高峰の年間リーグ)でJクラブのユースチームを相手に戦っていますが、個の力では勝てません。基本的な戦略である堅守速攻は、彼らに対抗し得る術としての根本です。理想と言われても、監督は与えられた戦力でいかに工夫するかが仕事なので、難しいですね。1年ごとに選手は変わりますし、僕が先に理想を描いても実現できないというか……。

 優勝後の会見でも話しましたが、うちは寮を作らずに家から通える範囲の子が入部対象になっています。戦力を選り好みできないという部分もあります。ただ、地元の子たちでも、選手は何か良いモノを持っているものです。

 今季のチームで言えば、得点王になった渡辺仁史朗はすごく足が速い。だったら、彼を生かすにはどうするかと考えます。昨季であれば島多裕太(桐蔭横浜大)というFWがいましたが、彼はポストプレーが得意でした。そうすると、堅守速攻という考え方は同じでも、FWの前方へパスを出すのか、手前にパスを出すのかなど方法は変わってきます。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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