「プロレスで沖縄の人に夢を伝えたい」=琉球ドラゴンプロレスの目指す道

長谷川亮

琉球ドラゴンプロレスを立ち上げたグルクンマスク 【長谷川亮】

 2008年7月から地域密着団体として活動した「沖縄プロレス」だが、2012年8月をもって県外へ撤退。しかし、8カ月のブランクの後、沖縄プロレスにも在籍したグルクンマスクが代表となって「琉球ドラゴンプロレスリング」を旗揚げし(2013年4月)、沖縄のプロレスの灯を守っている。昨年末にはビッグマッチを開催し、グルクンマスクのプロレス人生を決めた恩人、藤波辰爾の参戦も実現。自身がプロレスにもらった夢と希望を沖縄の人たちに返したいと願う、グルクンマスクの思いを聞いた。

「沖縄でプロレスが見たい」という声がかなりあった

琉球ドラゴンプロレスが毎週末興行を行う「カデナアリーナ」 【長谷川亮】

――まず旗揚げへ至った経緯を教えてください。

 以前は沖縄プロレスに所属していたんですけど県外へ撤退してしまいまして、僕は沖縄に残ったんですが他の選手が沖縄から離れてしまったんです。それで沖縄に残っていると、やっぱり「沖縄でプロレスが見たい」っていう声がかなりあって、じゃあやってみようかということで、周りの方の協力もあって旗揚げしたというのが経緯です。4月で旗揚げから1年になります。

――元はグルクン選手ご自身も沖縄の出身ではないんですよね?

 4年前に沖縄プロレスへ参加するため、家族ごと沖縄へ移住しました。いま考えると結構軽薄だったなという気もします(笑)。でも沖縄には十数年前から毎年1回ぐらいでよく来ていて、住みたいっていう願望はずっとあったんです。よく老後に沖縄へ住みたいっていう人はいますけど、老後住んでも面白くないなと思って、いま自分が生きる場所として沖縄に住んだら面白いんじゃないかと思ったんです。

――沖縄のどういうところにそれほど惹かれたのですか?

 何でしょうね。でも、女の子を好きになる時、顔がきれいだから好き、性格がいいから好きとか、そんな風にどこそこが好きとは言わないじゃないですか。その女の子そのものを好きになると思うんですけど、それと同じ感じです。だから思い返すと無理やりは出てきても、沖縄が好きな理由というのはそんなになかったかもしれません。空気感というか、漠然と好きだなっていう。そうやって移住してもう丸4年になります。

子どもが楽しめないと大人も楽しめない

“広く浅く”をコンセプトに子どもも大人も楽しめるプロレスを展開 【長谷川亮】

――沖縄プロレスは那覇市の国際通り沿いに常設会場を持ちましたが、琉球ドラゴンプロレスは嘉手納町の商業施設「ネーブルカデナ」にリングを構え、試合は週末開催という興行スタイルです。


 この会場で何かイベントをやっていきたい、プロレスをやったら面白いんじゃないかっていうお話をいただいて、それが旗揚げのきっかけです。それがなければ団体を起こしていたか分からないぐらいで、そういった後押しを受けていろんなことがうまく合致しました。そこから毎日バタバタしている間に気が付いたら1年近くが経っていて、旗揚げがすごく昔のように感じます。それぐらい密度が濃くて早い時間でした。

――毎日開催していた沖縄プロレスと違い、試合は土日に集中して行っていますね。

 やっぱり平日にばらけてしまうので、それを週末に全部集中させようという感じで今はやっています。沖縄プロレスの時とシステムは違うんですが、手応えはすごくあります。

――今日は子どもやファミリー層の観客が目立っていました。

 やっぱり世間の目というのは、プロレスに対して多少なりとも偏見があると思うんです。野蛮だとか怖いとか、血が出るんじゃないかとか。そういう偏見の部分があると思うんですけど、それを払拭してくれるのは子どもの存在だと思います。子どもが見られる、子どもが見るに耐えうるものなら大人でもそんなに怖くないと思うし、子どもが楽しめないと大人も楽しめないと思うので、小学生以下は無料にしています。

――いろんなお客さんがいる中でも特に子どもたちへ向けていきたいというのはあるんですか?

 というよりも“広く浅く”ですね。あんまりオタクにしたくないんです。どうしてもマニアックな世界になりがちですけど、どちらかというと大衆娯楽としてみなさんに楽しんでいただけるものを作っていきたいというのはあります。マニア向けのコンテンツには絶対したくなくて、ただマニアが見てもちゃんと納得できるようなクオリティーは持っていないといけないなとは思います。
 茶番だったり子どもだましだったりすると、逆にそういうのは子どもから見破られるので。ある一定のクオリティーとかレベルはちゃんとキープしておいて、通のお客さんも納得するけど子どもたちも素直に楽しめるっていうのをやりたいです。

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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