ピアースとガーネットが過ごした特別な夜 古巣ボストンで永遠に語り継がれる思い出

杉浦大介

これ以上ないほどエモーショナルだった古巣戦

セルティックスで過ごした日々に感謝するピアース。ライバルチームに移籍しても、地元ファンからは盛大な拍手を受けた 【Getty Images】

「俺たちはボストンで素晴らしい時間を過ごした。あの時代の一部となった人たちは、誰もが決して忘れることはないはずだ。いくつかの物事は永遠に変わらない。そんな時代の一部になれたことを幸福に思う」

 1月27日、ボストン――。ボストン・セルティックス対ブルックリン・ネッツ戦で催された感動的なセレモニーを、例えテレビ画面を通じてでも見た人なら、誰もがケビン・ガーネットの言葉に納得することだろう。

“伝統チーム”と呼ばれるようなフランチャイズは、トリビュートの演出方法も心得ているもの。入団以来15年を通じてセルティック・グリーンのユニホームを着続けたポール・ピアース、2007年以降の6年に渡って精魂込めたプレーを見せたガーネットが、昨オフのネッツ移籍以降、初めて古巣ボストンに戻って来た。

 08年にはチーム史上17度目のファイナル制覇の立役者となった2人を、ボストニアンは忘れてはいない。ネッツ戦の第1クォーターには2人のハイライトシーンが満載されたビデオが流され、地元ファンは彼らに盛大なスタンディングオベーションをプレゼントしたのである。

「今日は特別な夜だった。悪い時期も、未熟だった時期も、成長できた時期も、すべてを経験してこの街で一人前の男になれた。みんなが力を合わせて優勝も勝ち取れた。ファンのみんなには感謝の気持ちしかないよ」

 これ以上ないほどエモーショナルだった試合を終えて、ピアースは感無量の表情でそう語った。

開幕当初は噛み合わなかったが……

 もっとも、いかに移籍が本人たちの意思ではなかったとはいえ、本来ならライバルシティのはずのニューヨークに移ったあと、ボストン帰還時に彼らがこれほどまでに熱狂的に迎えられたことを怪訝(けげん)に思う人も中にはいたかもしれない。

 全盛期を過ぎたピアース(36歳)とガーネット(37歳)はセルティックスの構想から外れた形になり、昨オフにブルックリンに放出。デロン・ウィリアムス、ジョー・ジョンソン、ブルック・ロペス、アンドレイ・キリレンコらとともに、史上空前の金額が費やされた“パワーハウス”の一員となった。

「もう金は十分に稼いだし、個人タイトルも手にしてきた。今の目標は優勝だけ。ブルックリンにはそれを勝ち取る最大のチャンスがあると思っている」

 昨夏の入団会見時にそう語っていたピアースだったが、今季開幕当初のネッツは故障者もあって噛み合わず、最初の18戦中13敗とスタートダッシュに失敗。ピアースのプレーも冴えず、慣れ親しんだボストンを離れて気持ちの切り替えができていないかのように見えた。

 それでも14年に入って一気に調子を上げたネッツは、今年に行われた12戦中10勝。まだシーズン20勝23敗と負け越しレコードだが、希望は見えてきた。完全に再建状態に入ったセルティックス(今季15勝31敗でイースタン・カンファレンス15チーム中12位と低迷)とは一線を画し、後半戦ではさらに勝率を上げていきそうな予感が漂い始めている。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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