最年長女王ナ・リ、三度目の正直で栄冠=全豪オープンテニス

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順調なスタートを切るも嫌な流れに……

3度目の決勝に挑んだナ・リがついに初優勝。経験の差を見せ、全豪最年長の女王に輝いた 【Getty Images】

 全豪オープンテニス第13日は25日、女子シングルス決勝が行われ、2年連続3度目のファイナルに臨んだナ・リ(中国)がドミニカ・チブルコバ(スロバキア)を下して初優勝、男女を通じてアジア初のチャンピオンに輝いた。グランドスラム優勝は2011年の全仏オープンに続いて2度目の快挙。31歳334日での優勝は、オープン化以降、全豪最年長記録となった。

 リにとってはどうしても負けられない決勝だっただろう。ファイナルまで勝ち進んだ11年と昨年は、第1セットを奪いながらの逆転負け。今大会はここまで、運に恵まれながら勝ち進んできた。1回戦は最年少のアナ・コンニュ(クロアチア)、2回戦は2番目に若いスイスのベリンダ・ベンチッチ(ともに16歳)、準決勝で対戦したカナダのユージェニー・ブシャール(19歳)と、対戦した7選手のうち3人が10代の選手。3回戦のルーシー・サファロバ(チェコ)にはマッチポイントを握られ、チャレンジから息を吹き返した。サビーン・リシッキ、アンジェリーク・カーバー (ともにドイツ)、セリーナ・ウィリアムズ(米国)といったシード選手が早い段階で次々と消えたことも大きいか。ここまでの幸運はめったにない。しかも、決勝の相手は苦手なアグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)ではなく、これまで4戦して全勝のチブルコバだったのだから……。

 風が強い中で始まった第1セットの第1ゲーム。リはグランドスラム決勝に初めて進んだチブルコバの立ち上がりをたたいた。ジュースから得意のバックハンドをダウンザラインに通していきなりサービスブレーク。第2ゲームもあっさりキープして順調なスタートを切った。しかし、メルボルンの観客は完璧なテニスから崩れていくリの姿に見慣れている。第1セットを奪ってからの逆転負けを、過去6年で5度も繰り返してきたからだ。

 第3ゲーム、ブレークポイント2本を逃してから、リの様子が怪しくなった。第6ゲームに2本のダブルフォールトを献上して3−3に並ばれると、チブルコバのショットが確実に入り始め、逆にリがウィナーを決めに行ってはミスを頻発するという嫌な流れに。第11ゲームを再びブレークしたものの、第12ゲームで打ち負けてタイブレークにもつれた。

経験の差か、強気の攻撃が生きる

 過去2度の決勝の相手は、キム・クライシュテルス(ベルギー)、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)と、いずれも格上だった。だが、今回はランキングでリが4位、チブルコバが24位、しかもリはこれが4度目のグランドスラム決勝と、経験の差が大きかった。第1セット、リのファーストサーブの確率は52%と低く、チブルコバのショットを勢いづかせる原因となっていたが、嫌な流れの中でも強気に攻め続けた。バックハンドをサイドラインぎりぎり、フォアハンドをベースライン深くに打ち込み、その強気がタイブレークの短い勝負で生きた。リターンエース、フォアハンドのダウンザラインからネットに出てボレーを決める迫力で、2度目のセットポイントを奪った。

 接戦を強気で攻め切った内容が、明らかにリの気分を楽にした。第2セットに入ると、見違えるように持ち前のストロークが決まり出した。アンフォースドエラー(凡ミス)は第1セットの25本から5本に激減。第1、第2ゲームでともに連続4ポイントを畳み掛け、一気に6−0で勝負を決めた。

 チブルコバはツアーのトップ50位内では最も背の低い161センチ。今大会は、3回戦のカルラ・スアレス・ナバロ(スペイン)からマリア・シャラポワ(ロシア)、シモーナ・ハレップ(ルーマニア)、ラドワンスカと4人の上位シードを倒して決勝に進出した。その快進撃は称賛に値するだろう。そして、想像を絶するプレッシャーを乗り切ったリの精神力にも拍手を送りたい。

 セリーナの故障は気になるが、今大会は若手選手の台頭が目立った大会だった。アナ・イバノビッチ(セルビア)、チブルコバといった中堅プレーヤーの勢いも消えていない。今季のツアーは少しの油断も許さない激戦模様になりそうだ。

<了>

(文:武田薫)
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