ナダル対フェデラーに歓声、ため息、驚き=全豪オープンテニス

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「好カード」ではなく「貴重なカード」

「貴重なカード」となったナダル(右)対フェデラー、大人のテニスに会場からは歓声が上がり、ため息がもれた 【Getty Images】

 ロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)の対決はもはや「好カード」と言うより「貴重なカード」と言った方がいいのだろう。次いつ見ることができるか分からない――立錐の余地もなく観客で埋まったセンターコートは、大きな期待で膨らんでいた。

 第1セット、フェデラーのサーブで息を呑む攻防が始まった。互いにスキを見せずに進んだ第4ゲーム、まずフェデラーが絶妙のタッチでチャンスを抉(えぐ)り出した。ハーフボレーを短く落としてからボレーを叩き、さらに絶好のリターンでナダルを前におびき出しパッシングを決めて0−30。しかし、ここまで来たナダルの集中力は神がかっている。フェデラーがネットに出てくるところに、バックハンドのパッシングショットを通すと、バックサイドを攻めながらミスを誘って巻き返し、ジュースではネットに出てサービスキープ。フェデラーに先手を奪われる怖さを知り尽くしているからだろう、集中して守り、かつチャンスにはリスクをかけて左右のライン際を攻めた。

 フェデラーもあくまで強気だった。第7ゲーム、15−15からナダルがリターンエースに次いで、針の穴を通すようなフォアハンドのパッシングをダウンザラインに決めて15−40。フェデラーはここからファーストサーブのレベルを上げ、ネットに出て圧力をかけてジュースに持ち込むと、ワイドに交わすようなサービスエースを決めて乗り切った。

 力の出し入れ、コースの駆け引き。大人のテニス、絵に描くようなボールの軌跡を追いながら、スタンドは歓声、ため息、そして先走った驚きで湧いた。

 フェデラーの動きが予想以上に良く、ナダルはサイドラインぎりぎりまで動かさなければいけない。タイブレークに入ると、細かなせめぎ合いでいきなりミニブレークを1本ずつ。しかし、ナダルは前に出るフェデラーを強烈なショットで迎え撃って2−1から連続ミニブレークでリードを奪い、59分をかけて先手を奪った。このセットの2人のポイント差はわずか3。フェデラーのバックハンドのアンフォースドエラーが12、ウィナーは0と、数字の上ではナダルのバック攻撃が功を奏しているが、いつもより周到にフォアを攻めてバックサイドのスペースを作り出した印象だ。

サンプラスに並ぶグランドスラム通算14勝目へ

 ナダルは第2セットの第1ゲーム終了後に、この大会で痛めている左の手の平の治療を受けた。特にサーブに影響があると話していたが、第1セットの流れで自信を深めたのだろう。第3、第5ゲームのサービスゲームをラブゲームでキープ。第6ゲームで一気にギアを上げ、15−30からベースラインのコーナーに落ちた返球を後ろ向きでクロスコートに戻してチャンスを広げると、このセットの5本目のブレークポイントでついにサービスブレークに成功した。

 2セットが終わって1本のブレークポイントも奪えなかったフェデラーは、ここまでの神経戦で集中力がやや薄れたか、第3セットはポイントでのミスが目立った。第3ゲームを先にブレークされると、第7、第9ゲームもサービスキープできずストレートで勝負が決まった。

 フェデラーは、大きめのラケットに切り替え、コーチとしてステファン・エドバーグを招聘してこの大会に臨んできた。今年がツアー16年目、夏には33歳。年齢的なハンディを、様々な方策で乗り越えようとしている。このナダル戦で、その決意と可能性とを世界のファンに示すことができたのではないか。

 一方のナダルは、昨夏以降に3勝してナンバーワンに返り咲いた好調を維持し、4回戦の錦織圭、準々決勝のグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)戦と回を追うごとに集中力に磨きがかかってきた。最後の相手は、メジャーでは初めて決勝の舞台に立つスタニスラス・ワウリンカ(スイス)で、対戦績はナダルの12勝、これまで1セットも奪われていない。ピート・サンプラスに並ぶ、グランドスラム通算14度目の栄冠に大きく近づいた。

(文:武田薫)

<了>
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