出場校出そろったセンバツの勢力図を探る 新たなスター誕生の予感

松倉雄太

選抜大会を占う意味で大きい“甲子園の経験”

選抜出場32校が決まった。昨年V、夏Vの高校が不在の中、どんな高校が注目になるのだろうか? 写真は初出場を決め喜ぶ広島新庄高 【写真は共同】

 86回目を迎える選抜高校野球大会の出場校が24日に決まった。
 前回大会決勝を戦った浦和学院高と済美高、昨夏の決勝を戦った前橋育英高と延岡学園高など、強豪校が秋季大会で早々に敗れ今大会は出場しない。新たなスター、王者の誕生が予感される今大会の勢力図を、いち早く探っていきたい。

 選抜大会を占う意味で重要なのが昨秋行われた明治神宮大会(2013年11月16〜23日)だ。優勝した沖縄尚学高、準優勝の日本文理高はともに夏の甲子園出場校だった。
 沖縄尚学高は主将の赤嶺謙やエースの山城大智、日本文理高は飯塚悟史と鎌倉航のバッテリーなどが甲子園でプレーしている。ここで培った経験をもとに秋は全国決勝まで勝ち上がっただけに、春の甲子園でも秋の経験が大きな武器となるだろう。

 他にも夏の甲子園に出場した三重高が秋の東海大会を制した。この時に4番打者だった宇都宮東真は新チームで3番に変わった。宇都宮は、「昨夏に安楽君と対戦した時は足をあまり上げずに前に突っ込む感じだったが、新チームになってからは足を大きく上げる感じで打つように変えました」と、甲子園でプロ注目の右腕、済美高・安楽智大と対戦した経験が、この冬の進化に大きな影響を与えたと話す。昨夏は安楽の前に3三振と悔しい経験をしただけに、2度目となる甲子園での打撃に注目したい。

 2年ぶりに選抜大会に出場する横浜高も昨夏の出場校。関東大会準々決勝で佐野日大高と対戦し1回に5失点を喫し敗退。ベスト8組の4校で唯一競り合いに持ち込めなかったが、それでも選出されたのは、エースの伊藤将司、主砲の高濱祐仁など昨夏のレギュラーがほとんど残るタレント集団というのも理由の一つに考えられる。秋は高濱や捕手の高井大地らがケガで出場できない試合もある中で、強豪の東海大相模高や慶応義塾高に競り勝ち神奈川県大会を制覇。関東ベスト8まで勝ち進んだ実績は、甲子園経験のたまものと言えよう。
 3年ぶり出場の明徳義塾高も、エース・岸潤一郎の存在が大きい。1年夏にベスト4、2年夏はベスト8と甲子園での経験と実績は十分ながら、頂点には届かず、涙に終わった。「自分の悪い点を直して、来年につなげたい」と話した夏から7カ月。3度目の正直を春の舞台で晴らしたい。

旋風巻き起こせるか、好投手擁する初出場校

 春夏を通じて初出場を果たしたのが、豊川高、広島新庄高、美里工高。この3チームの共通点は今年注目の好投手を擁しているところだ。

 豊川高の右腕・田中空良は、秋の東海大会で142キロのストレートを披露した。東海地区でトップクラスの力を持つと言われた準々決勝の大垣日大高戦では11奪三振で3失点。勝てば選抜出場に大きく近づく準決勝の静岡戦でも2失点で粘り、チームのサヨナラ勝ちにつなげた。この時に、「信じられない」と話していた甲子園。そのピッチングに注目したい。
 広島新庄高は左腕の山岡就也。昨夏は巨人にドラフト3位指名された田口麗斗を擁しながら、広島大会決勝再試合で惜敗するなど、あと一歩で甲子園出場を逃したが、山岡がついに甲子園に導いた。「自信がある」というストレートは最速143キロ。「素質は田口に匹敵する」と注目するスカウトや大学関係者も多い。ピンストライプのユニホームで甲子園のマウンドに立つ姿が楽しみな選手だ。
 美里工高の伊波友和は最速144キロの本格派右腕。ダブルエースの長嶺飛翔とともに、沖縄尚学高を唯一破った(県大会決勝)投手でもある。九州大会では、夏の甲子園にも登板した笠谷俊介(大分商高)との投げ合いを、足をつりながらも制した。

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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