ナ・リ、19歳新鋭を下し3度目の決勝へ=全豪オープンテニス

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3度目の決勝進出を決めたナ・リ。序盤から強烈なショットを打ち込んだ 【Getty Images】

 全豪オープンテニスの第11日は、女子シングルス準決勝が行われ、ナ・リ(中国)がユージェニー・ブシャール(カナダ)にストレート勝ちした。また、前日に大会2連覇中だったビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)を下したアグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)は、ドミニカ・チブルコワ(スロバキア)にストレート負けを喫した。

リ、序盤から強烈なショットがさく裂

 全豪の特徴は、シーズン開幕直後の最初のグランドスラムという点にある。選手は、約2カ月のオフの間、このスタートを目標に集中して準備することができる。こうした状況設定については、得意な選手と苦手な選手がいる。

 2011年と12年、決勝まで駒を進めているリにとって、全豪優勝はどうしても欲しいタイトルだ。今回はここまでを良い流れできている。3回戦でルーシー・サファロバ(チェコ)にマッチポイントを握られた場面こそあったが、対戦が見込まれたサビーン・リシッキ、アンジェリーク・カーバー(ともにドイツ)といった上位シード勢が早めに取りこぼし、さらには世界ランキング1位のセリーナ・ウィリアムズ(米国)まで4回戦で消えた。

 準々決勝の相手は、これが初の全豪という19歳のブシャールだ。立ち上がりから、リの強烈なショットがさく裂した。ブシャールのサーブで始まった第1セットの第1ゲームで、いきなりリのバックハンドウィナーが3連発。ラブゲームでブレーク発進すると、第2ゲーム、今度はフォアハンドをたたきつけてあっさりサービスキープ。ブシャールの序盤3度のサービスゲームをすべてラブゲームでブレークし、ゲームカウントを一気に5−0まで押し込んだ。
 こうなると手がつけられない相手ということは、新鋭のブシャールも知っていただろう。第8ゲームでは、打ち合いに持ち込んで打開しようとする姿勢を見せ、2−6で次のセットへ期待をつないだ。

 第2セットの第1ゲーム、ブシャールは4度のジュースを繰り返し、2本のブレークポイントをしのぐと、第2ゲームでも粘り強く攻める。5度目のジュースで初めてサービスブレークに成功して2−0とリードした。この辺りにリの弱点がある。集中力を維持できず、過度に勝ちを意識して自滅するケースが何度もあった。

 ブシャールはそんな情報もつかんでいたはずだ。しかし、一気に流れを持ち込みたいあまりに、ブシャールが意識過剰にはまった。第3ゲームは、ダブルフォールトを交えてブレークバックされる。第6ゲームもブレークしながら、第7ゲームをラブゲームで落とした。このどちらかのゲームがサービスキープできていれば、勝負はどう転がったか分からない。ブシャールには、もう少し経験が必要ということか。ブシャールはこのセットも落としてあえなく敗退した。

ラドワンスカ、スタミナ切れを克服できず

 女子テニスではメンタルの比重が大きく、必ずしも実力通りの展開にはならない。その典型が、この日の第2試合、ラドワンスカ対チブルコワ戦だった。

 前日、アザレンカの3連覇を阻止したラドワンスカは、これまでチブルコワに5勝1敗と勝ち越し、世界ランキングもそれぞれ5位と24位と開いている。グランドスラムの経験の差も大きかったはずだが、今回の対戦は、そんなデータを吹き飛ばす展開になった。

「昨日のような、ハイレベルでタフなプレーの翌日はいつも厳しい。脚が動かなかった。昨日、私はチブルコワより倍も長い時間、コートに立っていた」

 前日の準々決勝で、チブルコワがシモーナ・ハレップ(ルーマニア)戦を6−3、6−0の1時間で終えていたのに対し、ラドワンスカはアザレンカと6−1、5−7、6−0という、2時間の激闘。173センチ、56キロと華奢なラドワンスカに、やはりスタミナの鬼門が待ち受けていた。

 身長は161センチと日本人選手と変わらないが、元気の良さで定評のあるチブルコワが、開始早々から激しく攻め込んだ。ラドワンスカも必死に対応するが、コースが甘くなり、決定打を打ち込めない。第1セットは5度もブレークチャンスをつかみながら、1度もブレークできず、チブルコワが一方的に奪った。ラドワンスカは第2セットに入ってからも全く精彩がなく、結局1−6、2−6の惨敗に終わった。

 スタミナ切れの理由は、前のアザレンカ戦だけではなかった。ラドワンスカは1回戦、3回戦でもフルセットを戦っている。決勝まで7試合を乗り切らなければならないグランドスラムの戦い方を考えさせられる試合だった。

 男子準決勝はスタニスラス・ワウリンカ(スイス)がトマシュ・ベルディヒ(チェコ)を接戦の末に退け、初めてグランドスラムの決勝に駒を進めた。対戦相手は24日に準決勝を戦うラファエル・ナダル(スペイン)かロジャー・フェデラー(スイス)か――この2人が戦う第12日は、大会の最大の山場となるだろう。

<了>

(文・武田薫)
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