小林可夢偉を待ち受ける「孤独な戦い」 “弱小”ケータハムで生き残りを懸ける

川喜田研

F1復帰の喜びを語る

2014シーズン、ケータハムのドライバーに決まった小林可夢偉。契約金はゼロという条件で「最後のチャンス」をつかみ取った 【写真:ケータハム】

 カムイがF1に帰ってくる! 今季の開幕戦、オーストラリアGPまであと2カ月足らずと迫った1月21日、ケータハムF1チームが今季のドライバーラインナップを発表。小林可夢偉と正式に契約したことを明らかにした。チームメイトは昨年のGP2シリーズチャンピオンで2009年の全日本F3王者でもある、スウェーデン人ドライバーのマーカス・エリクソン。シート喪失から約1年、F1への復帰を目指して長く、苦しい時を過ごしてきた可夢偉の努力が、そして、彼の復帰を待ち望んでいた多くのファンの願いが、こうして実を結んだことをまずは喜びたい。

「再びF1のレースドライバーに戻ることができすごくうれしいです。ケータハムF1チームと一緒に戦えることを非常に楽しみにしています。昨年末から、チーム代表のシリル・アビテブール、チームオーナーのトニー・フェルナンデスの2人と、14年とその先についての交渉をしていました。彼らが考えているチームの目標やそのために実際に行われている投資状況などに感心させられました。なによりもチームが僕のこれまでのレースの実績と経験を評価して起用してくれたことを光栄に感じていますし、今日こうして発表ができてうれしいです。僕のこれまでの経験とすべての力を使ってチームをけん引して目標を達成できるように頑張ります」と自身のホームページでコメントを発表した可夢偉。

 また、「この機会に改めてKAMUI SUPPORTに募金してくださったファンのみなさまにお礼を申し上げます。実際に集まった募金はもちろんのこと、これだけ多くの方がサポートしてくれたというみなさまの行動が、今回のF1復帰に向けて力強い後押しになりました。この募金は僕を助けてくれただけでなく、これからチームが前進する力になります。14年はKAMUI SUPPORTに募金をしてくださったみなさまと一緒に戦うことになりますし、僕はそのことを大変誇りに感じています」と、募金に賛同した多くのファンに改めて感謝の気持ちを表すことを忘れなかった。

必死につかんだ「最後のチャンス」

 熾烈(しれつ)な椅子取りゲームが繰り広げられる現代のF1で、ひとたび失ったシートを再び取り戻すのは容易なことではない。特にここ数年は、ごく一部のトップチームを除くほとんどのチームが深刻な資金難に苦しんでおり、ドライバーの才能や実力、実績よりも各選手がチームに持ち込む「持参金」、すなわちスポンサーマネ―がモノを言う傾向が強まっている。

 12年の可夢偉が日本GPでの3位表彰台を含む計9回の入賞で通算60ポイントを挙げる活躍を見せながら、結果的にシート喪失の憂き目に遭ったのも、資金難に苦しむザウバーがより多くの「持参金」を持つドライバーを優先せざるを得なかったためだ。
 
 そうした「ペイドライバー」優先の流れの中で、日本の自動車メーカーの支援もない可夢偉が自力でスポンサー資金を集め、再びF1ドライバーの座を取り戻すための苦労は並大抵のモノではなかったはずだ。ちなみに今回の契約で可夢偉が受け取る契約金は「ゼロ」。そう、可夢偉はチームに少なからぬスポンサー資金を持ち込み、その上、自らの契約金はゼロという条件で、F1復帰の「最後のチャンス」に懸けたのだ。

 それは彼が今年、どんな形でもF1に復帰しなければ、もうその先は無いというコトを、誰よりも理解していたからに他ならない。今のF1で「2浪」は死に等しい……。F1ドライバーとしての生き残りを懸けた「最後のチャンス」を必死でつかみ取ったのである。

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