錦織、ナダル戦で見せた確かな成長=全豪オープンテニス

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ショットメークさえ渡り、ナダル追い詰める

ナダルと大接戦を演じた錦織。試合後は敗戦に「落胆している」と悔しがった 【Getty Images】

 全豪オープンテニス第8日は20日、男子シングルス4回戦が行われ、第16シードの錦織圭(日清食品)は世界ランク1位のラファエル・ナダル(スペイン)に6(3)−7(7)、5−7、6(3)−7(7)のストレート負け。2年ぶりのベスト8進出を逃した。

 錦織が持ち味を存分に発揮してナダルを追い詰めた。

 この日は気温22度の絶好のコンディション。風が強くセンターコートを巻いていたためだろう、錦織は第1セットの第1ゲームをいきなりサービスブレークされた。しかし、1度も勝っていないとはいえ、6度目の対戦に冷静な試合運びが光った。ナダルの強烈なスピンボールは、ハードコートで高く跳ねる。錦織は後ろに下がらず、ベースライン前後に位置してボールの上がり際を叩く戦術。しっかり打ち合えば、持ち前のショットメークがさえ渡った。

 第4ゲーム、40−15からジュースに持ち込んで早々にブレークバックに成功。第7ゲームのサービスゲームでは、0−40からバックハンドのダウンザライン、サービス・ウィナー、ドロップショットと多彩な攻撃を見せて連続5ポイントを奪うなど、王者と互角に試合を進めた。だが、タイブレークの勝負どころで、ナダルはギアを上げてくる。先手を奪われ、そのまま第1セットを落とした。

最後まで切れなかった錦織の集中力

 ナダルは、かねがね錦織のテニスを高く評価し警戒していた。
「ケイはテニスで一番難しいことができる選手だ。ボールを早くとらえ、切り返しができる。それも実にたやすくやってしまう」

 第2セット、ナダルは執拗(しつよう)に錦織のバックサイドを攻めた。それでも錦織は、早いリターンで反応しながら左右に揺さぶり、第5ゲーム、ナダルのサービスゲームで反撃に出た。フォアハンドの逆クロスをライン際に沈め、強烈なリターン、さらに意表を突くドロップショットで脅しをかけ、最後はネットのせめぎ合いを奪って先にブレーク。もし、この試合で悔いを残したとすれば、4−3リードの第8ゲームのサービスゲームだろう。30−0から痛恨のダブルフォールト。気持ちが少し揺らいだのか、打ち合いでのミスが続いてブレークバックを許してしまった。ナダルは第11ゲームをキープすると、第12ゲームでは15−0から連続4ポイントを奪ってまたもブレーク。2セットを先取した。

 世界ランク1位、第1シードを相手に2セットのハンディは重い。それでも、錦織の集中力は最後まで切れなかった。よほど体調が良いのだろう。

「4試合を戦って、きついという感じがありません。痛いところがどこもないというのは、これまでなかったこと。体が強くなっているのかなと思う」(錦織)

 第3セット、体力と気力の確かな成長を実感させる内容だった。2セットが終わって2時間が過ぎ、第3セットに入っても第4ゲームを先にブレークされて1−4となった苦境から、錦織は盛り返した。第7ゲームをダブルフォールト絡みでブレークすると、第9ゲームの打ち合いも制して5−4と逆転。センターコートは興奮の渦に包まれた。しかし、ナダルは最後の最後まで集中力を落とさなかった。第12ゲーム、30−30から錦織に2本の小さなミスが出て追いつかれ、もつれ込んだ2度目のタイブレークは、2ポイント目に錦織が先にミスしたところで、そのまま逃げ切られた。

「勝てなければ意味がない」

「ここまで来たら、いくら良いプレーをしても勝てなければ意味がないですから。どのセットも少しの違いだっただけに余計にショックが大きく、落胆しています」

 昨年と同じベスト16とはいえ、腰を抑えていた昨秋の痛々さは消え、ショットや動きに自信がみなぎっていた。大会前のクーヨン・クラシックの優勝もあるだろうが、やはり昨年のオフからコーチとしてチームに加わったマイケル・チャンの存在が、精神的に影響しているのだろう。錦織の24歳という年齢は、ツアーでは決して若くはないが、本人が笑ったように「おじいちゃん」ではない、次世代の担い手だ。始まったばかりの今シーズンに、大きな夢を抱かせるプレーだった。

 ベスト8が出そろい、ナダルは準々決勝で22歳のグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)と、またジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)を倒したロジャー・フェデラー(スイス)はアンディ・マレー(イギリス)と対戦する。

 女子では第2シードのビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)は勝ち上がったが、第3シードのマリア・シャラポワ(ロシア)はドミニカ・チブルコワ(スロバキア)に逆転負け。昨年、ツアー6勝した新鋭のシモーナ・ハレップ(ルーマニア)がエレナ・ヤンコビッチ(セルビア)を倒してグランドスラム初の8強入りを果たした。

<了>

(文:武田薫)
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