すでに日本をリード?香港競馬の『今』

橋本全弘

「香港人の80%は競馬好き」

立錐の余地もないほどに観客で埋め尽くされたシャティン競馬場 【提供:橋本全弘】

 香港国際競走デーは、キャパシティー8万人のシャティン競馬場がファンで満杯、立錐の余地もないほど混み合っていた。世界各国から集まった実力馬達による国際GIの熱い戦いにファンは酔いしれ燃えるような熱気が伝わってくる。この熱気は、日本の競馬が一番華やかなりし頃、年間4兆円を売り上げた平成2〜3年、あの絶頂期の雰囲気に似ていた。

 そんな中、香港在住の競馬ファンの中国人に話を聞くことができた。「香港人の80%は競馬好き。競馬場は狭いからなかなか行けないが馬券は街のどこでも買えるし、みんな毎週楽しんでいるよ」とまくし立てた。80%は大げさだと思うが、街のあちらこちらに場外馬券発売所があり、またインターネット発売も普及している。

ハッピーバレーは目いっぱい楽しめる社交場

こちらはハッピーバレー競馬場、ギャンブル場というよりも社交場としての雰囲気に満ちている 【提供:橋本全弘】

 香港カップから3日後、今度は香港島内にあるハッピーバレー競馬場を観戦した。香港名物のトラム(路面電車)に乗り、終点・ハッピーバレー競馬場へ。街のアチコチに「ハッピーウエンズデー」の大きなポスター。ハッピーバレー開催(ナイター競馬)はほとんどが水曜日の為このコピーがいたるところから目に飛び込んでくる。地上7階建て、まさに夜空に浮かぶ競馬場スタンド。広さだけなら大井競馬場などに比べるとこぢんまりした感じだったが、10香港ドル(約134円)の入場料を払って中に入ると、そこはフェスティバル会場のように賑やかで華やか。もちろん、馬券を賭けるというギャンブル場ではあるがそれ以上に感じたのが社交場としての雰囲気。長く英国領だったこともあり外国人の姿が多く目に付いた。

 訪れた日はクリスマスも近かっただけに、場内にはサンタ姿のキャンペーンガールが何人もいてレースの合間に踊ったり歌を歌ったり……と盛り上げていた。直線コースのラチ沿いにアルコールスタンドや特設舞台が出来ていてレースの合間にはバンド演奏。こんなこと日本の競馬場だったらいきなり警備員が来て止められるんじゃないかな……と思った。こちらではギャンブル場でもあるが、それ以上に目いっぱい楽しめる社交場だった。

同じ香港競馬でも別の国の競馬場のよう

 香港競馬はシャティン競馬場とハッピーバレー競馬場の2場で交互に開催されるシステムをとっているが、馬券勝負ならシャティン、楽しく酒を酌み交わしながら競馬観戦を楽しむのならハッピーバレー。同じ競馬でも別の国の競馬場のような雰囲気を感じた。1週間で2種類の競馬を楽しむことができたのは面白かった。

 馬券的中がすべての日本の競馬とは異なった香港競馬に新たな競馬の楽しみ方を見つけたような気がした。

<了>

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著者プロフィール

 1954年生まれ。愛知県出身。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、スポーツニッポン新聞東京本社に入社。87年、中央競馬担当記者となり、武豊騎手やオグリキャップ、トウカイテイオー、ナリタブライアンなどの活躍で競馬ブーム真っ盛りの中、最前線記者として奔走した。2004年スポニチ退社後はケンタッキーダービー優勝フサイチペガサス等で知られる馬主・関口房朗氏の競馬顧問に就任、同オーナーとともに世界中のサラブレッドセールに帯同した。その他、共同通信社記者などを経て現在は競馬評論家。また、ジャーナリスト活動の傍ら立ち上げた全日本馬事株式会社では東京馬主協会公式HP(http://www.toa.or.jp/)を制作、管理。さらに競馬コンサルタントとして馬主サポート、香港、韓国の馬主へ日本競馬の紹介など幅広く活動している。著書に「名駿オグリキャップ」(毎日新聞社)「ナリタブライアンを忘れない」(KKベストセラーズ)などがある。

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