錦織快勝、狙い通りの試合で猛暑かわす=全豪オープンテニス
第1セットをわずか24分で奪取
錦織はストレート勝ちで3回戦進出。出だしから効率よくゲームを進め、体力の消耗も避けられた 【Getty Images】
この日の予報も最高気温は44度。午前11時ですでに38度を超えていた。湿度は低く、東京の暑さと比べればまだ過ごしやすいのだが、それは木陰に逃げ込めばという話。コート上はゴマ油をしいた中華鍋のようだった。大会2週目から気温は下がるという予報だから、錦織にとってはここが辛抱のしどころだ。
2回戦の相手、23歳のドゥサン・ラジョビッチ(セルビア)は世界ランク117位。昨年のデビスカップ決勝でヤンコ・ティプサレビッチ(セルビア)に代わって出場した経験が生きたのだろう、予選を勝ち上がってグランドスラムで初めて本戦入りしてきた。こうした選手は、出だしをしっかり抑えないと勢いづくことは百も承知――。錦織は快調な滑り出しを見せた。
「風がなかった分、1回戦より暑く感じましたが、プレーはやりやすかったですね」
第1セットのファーストサーブの確率は73%、アンフォースドエラー(凡ミス)は5本。錦織らしいスムーズなショットメイクでスタートを切った。第3ゲーム、30−30からフォアハンドのウィナーを2本続けて決めた。錦織がリターンから攻撃的に威嚇できていたため、ラジョビッチはサーブの腕が縮んで、第5ゲームにはダブルフォールト2本を献上した。第1セットをわずか24分で片づけたのは大きい。
錦織は大会に気分良く入れている。ブリスベン国際で準決勝まで勝ち進み、前週のクーヨン・クラシックは、エキシビションとはいえ、決勝でトマシュ・ベルディヒ(チェコ)を倒して優勝した。昨年のオフから、マイケル・チャン氏がコーチとしてチームに加わっており、練習の成果は実りつつあるようだ。
「1回戦が5セット、3時間半を戦った割には疲れが残っていなかった。体も強くなっている感じがしますね」
猛暑が続く中、ストレート勝ちは大きい
「暑くなると、まず頭がもうろうとして、次にけいれんが来る人もいますが、集中力が失われがちになるんです。今日の3セット目、相手が良くなったこともありますが、僕も集中力を制御できなかったところもあって、競ってしまった」
互いにサービスキープで進んだ第3セット、第8ゲームを先にブレークされた。錦織はすぐ思い直したようにラブゲームでブレークバック。5−6からの第12ゲームにセットポイントを1本握られる場面もあったが、ここは落ち着いて処理できた。タイブレークは再び一方的な展開でのストレート勝ち。余裕のプレーは、体調が安定していることの表れでもある。
「ストレートで勝てたのは大きいですね。第4セット、第5セットまで行っていたら、疲労もたまっていたと思います。次は(アンドレアス・)セッピでない方がいいですが……」
3回戦の相手は、昨年のウィンブルドンでフルセットの末に敗れたアンドレアス・セッピ(イタリア)かと思われたが、ドナルド・ヤング(米国)となった。昨年優勝した全米室内選手権でストレート勝ちした、手のうちを知り尽くした相手だ。ここを乗り切れば、翌週は気温20度台まで下がる予報となっており、順当に行けば好条件でラファエル・ナダル(スペイン)との対戦に向かうことができる。
錦織の試合が終わったのが午後1時2分。その50分後にヒートポリシーが適用され、さらにスコールにも見舞われた。錦織は狙い通り、効率よく試合を進められたことで、こうした不測の事態から免れた。
その他の日本勢では、女子シングルス2回戦で奈良くるみ(大阪産業大)がマグダレーナ・リバリコバ(スロバキア)にストレート勝ちし、昨年の全米オープンに続きグランドスラム2大会連続で3回戦進出を果たした。一方、森田あゆみ(キヤノン)は第8シードのエレナ・ヤンコビッチ(セルビア)に完敗。女子ダブルス1回戦に登場したクルム伊達公子(エステティックTBC)とシュアイ・ジャン(中国)のペアは、アンドレア・フラバチコバ、ルーシー・サファロバ組(ともにチェコ)に敗れた。
<了>
(文:武田薫)
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