日本テニス界、全豪OPで新時代確立へ=選手間に広がる世代を超えた相乗効果

内田暁

全豪オープンが13日に開幕。錦織(写真)をはじめ日本からは6選手が出場する 【Getty Images】

 13日に開幕するテニスの全豪オープンに、日本からは男子2、女子4選手が出場する。6選手は全て、予選勝ち上がりではなく、ランキングによる本選ダイレクトイン出場。“ツアー”という厳しい戦いを1年間戦い抜いて確立した、真の実力により得た地位である。

錦織「ベスト8以上を狙いたい」

 男子からの出場選手の1人はもちろん、今や世界のトッププレーヤーに成長した、錦織圭(日清食品)。彼については、今更多くを語る必要もないだろう。13歳で渡米し、以降は米フロリダのIMGアカデミーを拠点とし実力と経験を積み重ねてきた。18歳でツアー初優勝を果たした際には、日本のみならず世界が「次代を担う若手」として期待を寄せた。その状況や立ち位置は、6年経った今も基本的に変わってはいない。代替わりがなかなか進まず、平均年齢27.8歳に達した“トップ10”に新陳代謝をもたらす存在として、24歳の彼に向けられるテニス界の視線は未だに熱い。

 そんな錦織の、2014年最初のグランドスラムへの仕上がりは順調だ。調整試合に選んだエキジビジョン大会“AAMIクラシック”では、世界7位のトマシュ・ベルディヒ(チェコ)や、錦織と並び次代を担う若手として期待されるグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)らを破って優勝した。

 錦織にとって全豪オープンは、2年前のベスト8に代表されるように、相性の良い大会でもある。それだけに、本人も「ベスト8以上を狙いたい」と、2年前のワンステップ上を目指している。1回戦の対戦相手は、地元オーストラリアのマリンコ・マトセビッチ。「オーストラリアは、地元選手への応援がすごいので、やり難さはある。いつもここでは、オーストラリア選手と当たる気がする」と苦笑するが、ベスト8に進出した2年前は、2回戦で地元のマシュー・エブデン相手に大逆転勝利を演じ、それを機に勢いを得た感がある。今回も、厳しいアウェーの戦いを躍進の足がかりにしたいところだ。

添田に生まれたツアー選手としての自負

 錦織の活躍にけん引されるように、グランドスラム本選出場が定位置となりつつあるのが、29歳の添田豪(空旅ドットコム)だ。00年代の日本テニスを第一人者として支えてきた添田ではあるが、長くトップ100の壁を破れず、グランドスラムの予選でも苦しい戦いを続けてきた。だが、錦織が世界に飛び出し強豪を次々と破る姿を見て、「自分と同じような体格の彼にできるのなら、自分にも可能性があるはず」と奮起。12年には、自己最高となる47位まで上り詰めた。

 しかし、昨年の全豪オープン時には「『圭に刺激を受けて……』というような時期は、もう終わった」と、ツアー選手としての自負を口にしていた。一時は、体調不良からテニスの調子を崩して、ランキングも137位まで落したが、昨年はウィンブルドン、全米オープンと予選を勝ち抜くなど復調。現在112位と、トップ100返り咲きも目前に迫っている。

 そんな彼の姿は、他の日本人選手にも好影響を与えている。女子の土居美咲(ミキハウス)も「添田さんが地道に努力し、上位へと上がっていく姿は励みになった」とコメントするなど、添田は男女を問わず後進に背中で道を示してきた存在だ。

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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