卓球のスーパーキッズが続々誕生する理由=福原、石川らも通った成功への道
10歳の少女が大学生に勝つ快挙
日本卓球界の“スーパーキッズ”である伊藤(左)と平野美。今年の全日本選手権でも活躍が期待される 【写真:北村大樹/アフロスポーツ】
全日本選手権では、2011年の大会で当時10歳だった伊藤美誠(スターツSC)、平野美宇(JOCエリートアカデミー)の2人が、ともに大学生に勝つなど、一般の部における最年少勝利を記録して、社会的なニュースになった。今年はこの2人が、中学1年生になって、いよいよ本格的に大人の世界で上位を狙うことになる。
かつて福原愛(ANA)は、14歳で世界選手権ベスト8。石川佳純(全農)は13歳で全日本選手権ベスト4に進出して、世界選手権の日本代表に選出されている。
なぜ、卓球界では、これほど次から次へと、いわゆる「スーパーキッズ」が誕生するのか。全日本選手権を前に、この点について書いてみたい。
小学生と大学生、使う用具はほぼ同じ
もう一つ重要なのは、卓球台の大きさが、乗用車のガレージにちょうど収まる程度のサイズであるため、一般的な家庭にも置くことが可能だという点だ。正規の卓球台でも、10万円から15万円くらい。つまり、比較的少ない予算で、家庭の中に正式な試合ができるコートを持つことができ、なおかつ、試合と同じ環境で練習することができる。これも、ほかの球技では、(少なくとも国土の狭い日本において)一般的な家庭で実現できない環境だろう。
“3人娘”も自宅で卓球練習を始めた
言い換えるなら、通常であれば、競技団体が行政と協力して作り上げるジュニア世代の育成環境を、各家庭で独自に作り上げることが可能なのである。実際、日本のトップ選手は、ほとんどがそのような環境で育っている。12年ロンドン五輪で銀メダルを獲得した女子団体のメンバー、福原、石川、そして平野早矢香(ミキハウス)の3人は、いずれも親が卓球の経験者で、自宅に卓球台があり、親を練習相手に卓球を始めた選手たちだ。
こうした競技の特性以外に、優れた小学生選手、中学生選手が次々に出ている理由として考えられるのは、やはり少女時代から注目を集めてきた福原の存在だ。小学生の競技人口は、福原が小学生だった1990年代には1万1000人前後だったが、彼女が初めて日本代表入りして世界選手権ベスト8の活躍を見せた2003年以降は、1万3000人を超える状況が続いた。福原はその後、15歳でアテネ五輪ベスト16に進出するなど、長く日本卓球界の顔として活躍している。小学生の競技人口の増加に、福原の存在が影響していることは、間違いないと思われる。少子化の傾向を考えれば、この増加はかなり意味のあるものだろう。