ソフトBの若鷹がカリブの島国で見た景色=鷹詞〜たかことば〜

田尻耕太郎

真冬の日本を離れた若鷹が得たものとは――

今オフ、ドミニカのウインターリーグでプレーした岩嵜。大リーガーらもいる中で、2勝を挙げ、そのポテンシャルの高さを示した 【写真は共同】

 12月。それでも気温は毎日30度を超えていた。真冬の日本を離れ約2カ月間、中南米の島国、ドミニカ共和国とプエルトリコへ、福岡ソフトバンクの若鷹たちがウインターリーグに参戦し翼を磨いた。その武者修行で彼らが見た景色、そして得たものとは――。

 ドミニカリーグは中南米各地のウインターリーグの中でも、特にレベルが高いとされる。「本当にめちゃくちゃレベルが高くて、最初は驚きっ放しでした」と語ったのは岩嵜翔。かつての鷹のエース・斉藤和巳氏を彷彿とさせる長身のイケメン、24歳右腕である。昨季はセットアッパーとして序盤に活躍し、初のオールスター出場を果たしたものの、先発転向した夏場以降に結果を残せず、47試合で1勝4敗2セーブ14ホールド、防御率4.33の成績に終わった。伸び悩んだ1年となり、来季は先発一本で勝負すると宣言している。「そのためにはカーブの精度を上げないといけない」。明確な課題をもって海を渡った。

大リーガーの中で発揮した岩嵜のポテンシャル

 ところで、このリーグのレベルの高さとは如何ほどか。説明してくれたのは大隣憲司である。大隣も2011年オフにドミニカウインターリーグへ派遣され、実際にプレーした経験を持つ。翌年、自己最多の12勝をマークしその後WBC日本代表にも選ばれた。飛躍のきっかけになったと言える貴重な時間を過ごしたという。

「僕はあまりメジャーに詳しくないけど、同じチームでプレーした選手は今バリバリの大リーガーですよ。エンカーナシオンが4番を打っていたし、正捕手はロサリオでした。ロサリオは今オフもプレーしていたみたいですね」
 エンカーナシオンはブルージェイズの主砲。大隣と同様、12年シーズンに大ブレークしてシーズン42本塁打を放ち、WBCでは母国ドミニカの4番打者として初優勝に大きく貢献した。昨季も36本塁打、104打点をマークしており、メジャー屈指の大砲である。ロサリオはロッキーズに所属。直近2年では100試合以上出場&20本塁打以上の強打の捕手として存在感を示している。

「もちろん相手チームにもたくさんのメジャーリーガーがいましたし、僕や翔(岩嵜)がいた『アギラス』は、ドミニカ第2の都市のチームで、日本で例えるなら阪神タイガースみたいな熱狂的ファンに支えられた球団。首都に本拠地を置く『リセイ』が古豪で、日本でいえば巨人。両チームの対戦は超満員で、2〜3万人が大声で応援する異様な雰囲気でした」
 決してオフの調整などではない、本気の戦い。岩嵜も「一つ一つの執着心が違うと感じさせられた」と大いに刺激を受けた。試合ではロサリオと組むことが多かった。決め球に使ったのはカーブ。手首をひねらず投げることで、スピード感がありながら、大きく曲がる新球を手に入れた。
「充実した2か月間でした。カーブは自信になったし、空振りも取れる。大きな武器になる手応えはあります」

 ドミニカでは7試合で2勝を挙げた。平凡に映るかもしれないが、11年の大隣は0勝2敗で帰国。また、中日のエースとして5年連続2桁勝利の実績を持つ吉見一起も07年オフにドミニカで腕を磨いた1人だが、その右腕でさえ0勝3敗と苦戦した。岩嵜に秘められた無限のポテンシャル。それを証明するためにも、今季は勝負の一年となる。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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