東洋大を圧勝Vに導いた“全員駅伝”=駒澤大OB神屋氏が箱根駅伝復路を解説

構成:スポーツナビ

東洋大の総合優勝で幕を閉じた箱根駅伝を、駒澤大OBの神屋氏が解説した。東洋大が強さを発揮できた理由とは!? 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 第90回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は3日、箱根・芦ノ湖から東京・大手町の読売新聞新社屋前までの復路5区間109.9キロのコースで行われ、往路1位の東洋大が、10時間52分51秒で2年ぶり4回目の総合優勝を飾った。
 復路で1度もトップを譲らない圧倒的な走りで独走し、復路新記録となる5時間25分38秒をマーク。柏原竜二(現・富士通)を擁した2年前の88回大会以来となる完全優勝となった。

 一方、トップと59秒差の2位でスタートした駒澤大は、終始、東洋大にリードを許す苦しい展開になり、10時間57分25秒で2位に終わった。出雲駅伝(2013年10月)、全日本大学駅伝(同11月)と2連勝していたが、史上4校目となる学生駅伝3冠はならなかった。

 スポーツナビでは、駒澤大のエースとして箱根駅伝に4年連続で出場し(1999年〜2002年)、現在はランニングアドバイザーを務める神屋伸行氏に、レースのポイントや今後の学生駅伝の展望などを伺った。

東洋大、勝ちへのこだわりが勝利へ

――東洋大が歴代2位の好記録で総合優勝しました。

 2年前の東洋大をほうふつさせる、“攻めの走り”を見せてくれました。駒澤大も、想定通りか、少し遅いくらいだと思います。ただ、復路で東洋大にあのタイム(5時間25分38秒)で行かれると、駒澤大としては手が出せません。東洋大が強すぎたとしか言えませんね。

 2年前に柏原選手がいたときと総合タイムがあまり変わらないので、全員で(タイムを)切り出した駅伝だったのではないかと思います。特に、各区のラスト3キロの記録を見ると、手元の計測ですが、ほとんどの区間で駒澤大より東洋大の選手の方が速く走りました。復路にいたっては、6、7、8、10区で東洋大が上回りましたね。唯一、負けた9区も1秒差です。追う駒澤大より、先頭を行く東洋大の方がラスト3キロで速いというのは、なかなかできることではありません。かといって、駒澤大がオーバーペース気味で入ったというわけではありませんでした。そう考えると、東洋大の気持ちの強さや、勝ちに対するこだわりがよく出たレースと言えます。

――駒澤大は、エースの窪田忍選手を復路に残していましたが、東洋大は主力を往路につぎ込んでいました。東洋大には不安材料だったと思います。

 復路に関して言えば、逃げる立場の東洋大の方が、落ち着いていました。逆に、追う駒澤大の方が、若干力んでいましたね。往路に続き、復路も“全員駅伝”で勝ち取った勝利だと思います。往路は主力を置いているので勝っても当然ですが、正直、復路でここまでの圧勝になるとは思ってもいませんでした。

 駒澤大の大八木弘明監督も、遊行寺坂(8区、15.9キロ地点)で「前半は押さえて、後半に詰めるぞ」と言っていました。どの区間もそういうつもりでいたはずです。ところが、後半は逆に東洋大に離されました。速いタイムで入った上に、最後に離されるというのは、選手にとってダメージは大きかったでしょう。

――プレッシャーの中でも東洋大が落ち着いてレースを運べた要因は何でしょうか?

 そういったチームを作り上げてきたんでしょうね。東洋大は、3年前に早稲田大とわずか21秒差の2位に沈んだことから、その翌年は「1秒を削り出せ」をスローガンに掲げて、箱根駅伝を制しました。今年、再びそのスローガンを掲げたということは、あの時の悔しさや勝ちに対するこだわりが続いているのだと思います。去年はそれがうまく発揮できませんでしたが、今年は2年前の再来のような快走でした。

酒井監督の思い通りのレース展開に

――昨年、東洋大は“脱・柏原”を掲げましたが結果を残せませんでした。

 東洋大は今回、エースで主将の設楽啓太選手を5区に置いているので、ある程度、山に対するこだわりはあると思います。逆に言うと、設楽啓太選手を5区に回せる余裕があったということでもあります。実際、補欠にも、延藤潤選手や淀川弦太選手といった実力のある選手がいました。そう考えると、今回の箱根駅伝は、酒井俊幸監督の言う“全員駅伝”が完全に実現できたと言えるのではないでしょうか。
 監督が思い描くレースをやるのは、なかなか難しい。作戦通りにいった東洋大と、作戦が通用しなかった駒澤大との明確な差が出たと思います。指揮官の思っている通りに走れるか走れないかは大きいですね。

――2年前や今回の箱根駅伝のような“攻めの東洋大”というスタイルは、今後も続いていくのでしょうか?

 今後も続けていくかは分かりません。ただ、今回は「先行逃げ切りの東洋大」と言いますか、「前で走ると強い」ということをあらためて感じる駅伝でした。「これが酒井監督の描く駅伝なんだ」という明確なメッセージなのかもしれません。

 もしかしたら、今後は逃げ切るレースにこだわる可能性もあります。今回、「逆転の駒澤大」を寄せ付けなかったほどの復路の強さは、往路での戦力投入にあったと思うので。来季も1区の田口雅也選手、2区・服部勇馬選手が残るので、前半で逃げ切りを図る布陣は十分可能です。追う側は非常に大変になると思います。

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