高木姉妹が抱いたそれぞれの葛藤=スピードスケート

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「妹ばかりが注目されて悔しかった」

代表入りした菜那だが、選考会での結果には悔いも 【原田亮太】

 高木菜那(日本電産サンキョー)にとって、2歳年下の妹・高木美帆(日体大)はなかなか乗り越えられない壁だった。身長も美帆より9センチ低く、スケートのタイムも劣っていた。何より美帆は、2010年のバンクーバー五輪に出場している。当時、高校生だった菜那にとって「夢のまた夢の舞台」だったという五輪に、美帆は15歳で出場したのだ。

「やはり妹ばかりが注目されていて悔しい気持ちはありました。姉妹としては仲良くしているんですけど、スケーターとしては複雑な気持ちで、葛藤もありました。姉として負けてしまうのは悔しいし、4年前は心の底から祝福はできていなかったんです」

 しかし、菜那はようやくその壁を乗り越えた。12月27日から29日まで行われていたスピードスケートのソチ五輪代表選考会。菜那は1500メートルとチームパシュートの代表に選ばれ、悲願だった五輪出場を成し遂げた。一方、本調子とはほど遠かった美帆は出場した1000メートル、1500メートル、3000メートルですべて5位に終わり、代表チームから漏れてしまった。

ソチ冬季五輪代表に選ばれ、岡崎朋美(左)から祝福を受ける高木菜那=29日、エムウエーブ 【共同】

 菜那も決して好調だったわけではない。1500メートルは4位、3000メートルは7位、5000メートルは5位と一度も表彰台に上がることができず、菜那自身も認めているとおり「拾われて」の代表入りだった。最終日の5000メートルで5位に終わったときは悔しさに涙した。

「五輪を目指してここまできたので、3本とも悔いの残るレースとなってしまったし、それが一番悔しかったです。前回滑ったときとは感覚が違ったので、これが実力かなと思います。緊張しすぎて、レース前に心が疲れてしまっていました。早く終わってほしいという気持ちが強かったんですけど、せっかくの4年に1度の大会だからもっと楽しく臨みたかった」

 結果的には、4枠あった1500メートルで4位に入ったのが最後はモノを言った形だ。

「五輪を甘く見ていた」

美帆は2大会連続の五輪出場はならず 【原田亮太】

「初めての五輪なので姉には頑張ってほしいです。私は全種目5位だった時点で覚悟はしていました。この結果を受け止めたいと思います。こうやって刺激し合える仲ですし、そういう存在でもあるので、ぜひ五輪で頑張ってほしいなと思います」

 美帆は自身の悔しさを押し殺しながら、姉の悲願達成を祝福した。バンクーバー五輪に中学3年生で出場したことから、大きな注目を集めた美帆は今春から日体大に進学。しかし環境が変わった影響からか、今季はフォームを崩し、苦しい戦いが続いていた。10月の全日本距離別選手権では1500メートルで6位、3000メートルで5位。ワールドカップ(W杯)を経て迎えた今大会でも、満足いく滑りができなかった。

「完璧に自分の実力不足でした。調整の仕方や技術面をこの大会に合わせることができなかった。微妙な差で全部代表を逃しているので、負けを認めざるをえない大会でした。もっと時間が経てば、反省部分がもっともっと出てくると思います」

 4年前は自らの力というより、監督に勝たせてもらった。今年は監督やコーチに頼りきりだった自分を卒業して、自ら考え、その手法を実行していた。しかし、結果につながらなかったということは、それが自身の力になっていないということでもある。

「前回は監督が練習の調整をしてくれたので何も考えていませんでした。バンクーバー以降、いろいろな遠征も行かせてもらって、ジュニアでも勝つことができた。さらには転戦を乗り越えていけるようにもなっていました。でも、それが自分のなかで五輪を甘く見ることにつながったのかなと思います。五輪シーズンの調整が未熟でした」

実現できなかった2人の夢

4年前は妹・美帆が五輪出場。今度は姉・菜那(前列左から2人目)が大舞台へ臨む 【原田亮太】

 菜那は出場できない妹の無念を背負いながら、ソチの舞台に立つ。4年前は現地で妹に声援を送ったが、今回は逆に応援される立場となる。自分は妹の快挙を「素直に祝福できなかった」と明かしたが、美帆はどうだろうか。姉妹として仲は良くても、今や互いが互いを認め合うライバル。心中穏やかではない部分もあるはずだ。

 もちろん菜那もそれは分かっている。そして自分は妹にまだ劣っているという認識もある。「今は妹の調子があまり良くないので勝てているときもありますけど、このあいだ一緒にW杯の成績を見ていたら、調子が良いときの妹のタイムはやはり速いなと。ベストの状態で戦ったらたぶん勝つのは難しいと思います」。菜那はそう語り、美帆の実力をあらためて評価した。

 その一方で姉らしい配慮も見せる。
「今までは落ち込んでいる私が妹に声を掛けられる立場でした。だからどうすればいいか分からないんですけど、とりあえず妹にはいつも通り接して、ちょっとでもお姉ちゃんができたらいいなと思います」

 美帆は早くも4年後の平昌(ピョンチャン)五輪に目を向けている。
「平昌は年齢的にも上を狙える歳だと思っています。平昌に向けては完璧な形で五輪出場を決めたいと思いますし、本大会でも上位を狙っていけるところに、4年かけてしっかりと上り詰めたいと思います」

 明暗を分けた高木姉妹の結末だが、彼女たちの見据える先は一緒だ。「2人で五輪に出場する」。今回その夢はかなわなかったものの、菜那は21歳、美帆は19歳とまだ若く、次回大会以降で両者の競演が実現する可能性は十分あるだろう。最後に菜那はもう1つの希望も明かした。「次は2人でパシュートにも出られるようにしたい」。その願いを実現すべく、今後も共に切磋琢磨(せっさたくま)を続けていく。

<了>

(文・大橋護良/スポーツナビ)
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