関東学生陸上競技連盟は２９日、２０１４年１月２日、３日に開催される第９０回東京箱根間大学駅伝競走（箱根駅伝）に出場する全２３チームの区間エントリーを発表した。

　史上４校目の学生駅伝３冠が懸かる駒澤大は、主力の中村匠吾（３年）を１区、村山謙太（３年）を２区、油布郁人（４年）を３区に配置した往路重視のオーダーを組んだ。エースの窪田忍（４年）は補欠に登録された。２年ぶりの王座奪還を目指す東洋大も、設楽啓太・悠太（ともに４年）を補欠とし、手の内を隠した。前回覇者の日本体育大は、服部翔大を２年連続で山上りの５区に登録。連覇に向けて往路で勝負を決める構えを見せた。

　スポーツナビでは、区間エントリー発表を受けて、法政大ＯＢで、現在は駿河台大学駅伝部監督、また実業団のモンテローザでも活躍する徳本一善氏に、今大会の展望などについて語ってもらった。

　僕は優勝候補は駒澤大だけと見ています。今回のオーダーの限り、１、２、３区で逃げに逃げまくって勝負を決めるつもりなのだと思います。

　レース当日に往路・復路で４人までエントリー変更ができますので、補欠に回った窪田選手も当日変更で出場するでしょう。気になる配置は、５区か９区と予想しています。９区に窪田選手を置けば、選手は「何が起こっても９区に窪田がいれば大丈夫」と安心できます。５区であれば、前半で勝負を決めて、復路は流れに乗ってひたすら後続を突き放す作戦ですね。その場合の大八木弘明監督のイメージは、東洋大が完全優勝した１１年大会でしょう。窪田選手は、動きを見ても５区の適性があります。調子も急上昇していると聞いていますし、快走が期待できそうです。逆に言えば、もし５区の馬場翔大選手（２年）や９区の染谷滉二選手（４年）がそのまま出場するならば、この２人には注目ということになります。大八木監督の彼らに対する期待は相当なもののはずです。

　“４本柱”（窪田、村山、中村、油布）と言われる主力以外の選手も、心配なところはあまりありません。１年生の西山雄介選手や中谷圭佑選手ら、将来のエース候補もいます。駒澤大はまさに抜け目のない、盤石のオーダーだと思います。

　日本体育大は、オーソドックスで良いオーダーだと思います。２区に本田匠（４年）、５区に服部選手、９区に矢野圭吾（４年）と、どの人が予想しても「この選手しかいない」という選手が主要３区間に配置されています。あとは、補欠に回った勝亦祐太選手や山中秀仁選手（ともに２年）がどうなるかが気になります。

　日本体育大の連覇の鍵は、山を上る服部選手にいかにうまくつなげるか。日本体育大陣営は「４区終了時点でトップと２分差なら面白い」と思っているのではないでしょうか。ただ、“服部頼み”になっている部分も大きいので、下手をしたら３位以内に入れない可能性もあります。というのも、チーム全体として見ると、明治大や青山学院大の方が選手層が厚いからです。ある意味、服部選手だけで、格上であるこの２校を凌駕（りょうが）していると言えます。なので、１〜４区の選手がどの位置で服部選手にたすきをつなぐかで、順位が大きく変わるでしょう。

　東洋大は、層の厚さで言えば群を抜いています。ただ、僕が思うに、東洋大は気象条件で順位が左右されるチームだと思います。東洋大の選手はものすごく体が締まっていて、ピッチで押すよりもリズムで軽く走るタイプが多い。特に設楽兄弟は、強い向かい風が吹くと対応が難しい体付きをしているので、そこをどう乗り切るかは注目です。
　チームとして力があるのは間違いないので、追い風、もしくは無風であれば、東洋大の力が一気に発揮されるでしょう。

　東洋大の区間配置を見ると、設楽兄弟は２人とも補欠に回っています。５区にエントリーした成瀬雅俊選手は１年生なので、エントリー変更があるかもしれません。本当に２人のどちらかが走るなら面白いですね。僕自身は、正直、２人に山の適性をあまり見出せないのですが、体の軽さでトントンと上る動きができるならば、走り切れると思います。もちろん、柏原選手のような走りはできないので、東洋大としては５区を８０分を切るくらいで行きたいとの考えではないでしょうか。

　とは言え、普通に考えたら、設楽兄弟の配置は３区か９区。そう考えると、５区は淀川弦太選手（３年）あたりが走るのかもしれません。逆に、もし設楽兄弟のどちらかが５区にきたら、東洋大は相当追い込まれて、ばくちを打つしかないチーム状況だと考えられます。そうなったら、東洋大の優勝はちょっと難しいでしょう。