“戦国時代”制覇の筆頭は市立船橋か=最激戦区と隠れ候補が集うブロックに注目

川端暁彦

最後の国立に気合が入る選手と監督

今年も戦力が拮抗している中、優勝候補の一角に推される京都橘。前年度得点王の小屋松(左)は今年も健在 【川端暁彦】

 12月30日、国立競技場で行われる開幕戦「熊本国府(熊本)×國學院久我山(東京B)」を皮切りに、第92回全国高校サッカー選手権大会が開幕する。

 天皇杯全日本サッカー選手権と並ぶ伝統のサッカー大会であり、団体球技全体で見ても指折りの老舗大会。特に1976年度の第55回大会に首都圏開催となってからは、「決勝・国立」のイメージとともに広く一般層にも浸透するトーナメントとなった。ただし、それも今回で一区切りとなる。

 2020年の東京五輪開催決定に伴い、国立競技場が来年春より改修工事に入ることが決まっているからだ。すっかり定着した会場ではあるが、来年以降は移転するほかない。となれば、あの伝統ある国立の芝を踏めるのは今年が最後。選手のみならず、伝統をよく知る監督たちにも気合いが入るシチュエーションとなっている。

戦力拮抗の影響で消えた「ヘタクソ」

 大会全体の傾向としては近年と変わらず、戦力拮抗の戦国時代という様相だ。私立新鋭校が続々と台頭してくる流れはもちろんのこと、公立高校無償化の影響もあって公立校の競争力も増大。サッカーの普及に伴い技術的なアベレージ、指導のアベレージは大きく伸びた。今年も各都道府県予選を見てまわったが、無名校であっても「ヘタクソ」が本当にいない。全体の底上げが戦力拮抗の流れを加速させている。

 今大会、予選で有力選手を擁したチームの敗退が相次いだのも、いわば「必然」。Jクラブのユースチームに選手が集まるようになり、選手権が「タレントを見る」という意味で高校年代最高峰の大会でなくなって久しいが、近年は高校での部活動を選んだタレントでも見るのが難しくなってきた。U−17日本代表で鹿島アントラーズ内定のMF杉本太郎を擁した帝京大可児(岐阜)など、多くの有力選手が予選段階で姿を消している。Jクラブ内定選手に限定しても、選手権に出てくる選手よりも予選で敗退している選手のほうが絶対数が多い。そういう拡散の時代だ。

 前回大会から連続出場を果たしたのが、全体の4分の1程度のわずか14校に過ぎないというデータは象徴的だ。10年以上の連続出場は青森山田(青森)と星稜(石川)の2校のみである。U−18日本代表FW小屋松知哉を擁する前年度準優勝の京都橘(京都)は今年も出場を果たしたが、前年度優勝の鵬翔(宮崎)は県予選準々決勝で姿を消した。毎年、各種のメディアが高校サッカー選手権に向けての特集号や特番などを準備するが、近年は「どこが出るかまるで分からないから」と、特集内容や表紙の人選などを先送りするところが増えてきているのは象徴的だ。

1/2ページ

著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント