浦和高、涙も「この先の夢に向かおう」=全国屈指の進学校、花園に散る
「花園」を知らなかった素人集団
1万3千人の観客を集めた花園、浦和高の健闘に多くのファンが大歓声を送った 【斉藤健仁】
12月28日、近鉄花園ラグビー場で全国高校ラグビー選手権大会の1回戦、浦和高(埼玉)対光泉高(滋賀)が行われた。「ウラコー」こと浦和高は、昨年度の公立高の東大合格者数ナンバーワンの進学校として注目され、1万3千人の観客を集めた。しかも前回出場時は西宮球技場での開催だったため、浦和高にとっては「初の花園」となった。
対戦した光泉高しかり、多くの強豪校はラグビー経験者がほとんど。しかし、浦和高の場合は事情が違う。中学時代の競技歴は野球、サッカー、水泳、卓球などの文字が並ぶ。県下最難関の高校のため「ウラコーにラグビーをやるために入ってくる選手はほとんどいません。だから中学生を誘うことなどは一切しません」(小林剛監督)
また、さいたま市の浦和区はサッカーの街だ。浦和高の近くには駒場競技場があり、埼玉県サッカー協会もある。浦和高のサッカー部は過去、3度、全国高校サッカー選手権に優勝した古豪だ。そのため、ラグビー部は毎年4月、監督と選手が一丸となって、昼ご飯を食べる時間を削ってまで、男子400人ほどの新入生の勧誘に精を出す。選手層を厚くし、試合形式の練習をするために15人で行うラグビーでは部員確保が欠かせない。
初心者でも勝つために確率の高いプレーを
柴田主将(中央)は「本気で部活をやろう」とラグビー部を選んだ 【斉藤健仁】
そうやって集まってきた素人集団を、「ウラコーでラグビーを教えたくて先生になった」という同校のOBの小林剛監督(39歳)が13年前から徹底的に鍛え上げてきた。校訓が文武両道を意味する「尚文昌武」であり、高校時代は部活と行事に精を出す風潮も後押しする。ちなみに小林監督は筑波大ラグビー部出身で、1995年度、関東大学対抗戦では明治大の50連勝を阻止し、大学選手権の1回戦では前年度優勝の大東文化大を破った時のFLだ。
ただ「僕は臆病なので」と自己分析をする小林監督は、初心者集団を勝たせるために、確率の高いプレーとしてディフェンスとモールを磨き、一歩一歩、強化を進めてきた。しかし、その前には深谷高が立ちはだかった。花園予選では過去5年連続で対戦、うち4度は決勝で顔を合わせ、すべて僅差で敗戦。過去3年間は、深谷高に高校生ながら日本代表合宿に招集されたSO山沢拓也(筑波大1年)というスター選手の存在も大きかった。
アタックは選手の自主性に任せる
それでも実戦では従来のラグビーから脱却できず、2月と5月には県の決勝戦で深谷高に敗戦。だが、今年度からコーチに就任した元早稲田大、リコーの後藤悠太氏が「BKの選手に自信をつけさせた」という指導のかいもあり、徐々にFWがBKを信頼する。11月の花園予選の決勝では、BKで展開しつつ、モールで崩して決勝トライを挙げて深谷に勝利し、54年ぶりの2度目の冬の全国大会の切符を手に入れた。