高校サッカー選手権、予選で敗れた実力者=プロの舞台で活躍を誓うJ内定選手たち
鹿島に加入する杉本(右)ら予選で敗れたJ内定選手たち。選手権でも活躍が期待されていた注目選手を紹介したい 【安藤隆人】
しかも、今大会は例年以上に波乱が起こり、全国各地で実力派ぞろいの強豪チームが予選で敗れ去った。本来ならば、今大会の『優勝候補』や『顔』となるはずだった選手たち。ここでは選手権開幕を前に、敗れ去りしヒーローたちを紹介していこう。
波乱と言う言葉に飲み込まれた数々のチーム。代表格を挙げるとすれば、前橋育英(群馬)、正智深谷(埼玉)、中京大中京(愛知)、帝京大可児(岐阜)、作陽(岡山)、大津(熊本)だろう。この中でも帝京大可児のFW杉本太郎(鹿島アントラーズ加入内定)、中京大中京のFW宮市剛(湘南ベルマーレ加入内定)、正智深谷のFWオナイウ阿道(ジェフユナイテッド千葉加入内定)、作陽のFW平岡翼(FC東京加入内定)は、ぜひ本大会で見たかったタレントだった。
悔いを残して終わった杉本
「負けた直後はもう頭の中が真っ白で、本当に何も考えられなかった……。今年は絶対に出ないといけなかったし、本当に出たかった」(杉本)
彼には苦い思い出がある。1年生の時にはU−15日本代表に選ばれていたものの、帝京大可児が2年前に選手権に出場した際にはベンチにも入れず。チームメイトの戦う姿をスタンドでメガホンを持ちながら見つめた。2年時にはピッチに立つも、2回戦でその年に優勝した鵬翔(宮崎)にPK負け。この悔しい思いを晴らすために、自身最後の選手権はどうしても立ちたい舞台だった。だが、自らも不発に終わって終戦。試合後に杉本はこう語っている。
「僕はいつも最後は悔いを残して終わる。満足して終わった大会は一つもない。だからこそ、この悔しさはプロで晴らしたい」
MVPを取ったAFC・U−16選手権。授賞式を終えた彼と会ったが、笑顔が無かった。トロフィーを持って記念撮影には応じてくれたものの、そこでも笑顔はなかった。決勝でウズベキスタンに敗れたショックもあるが、それ以上に決勝で決定的な仕事ができなかった自分がMVPをもらってもいいのかという困惑と疑問が、彼の笑顔を奪っていた。
U−17W杯でも、敗れたラウンド16のスウェーデン戦で、日本のラストチャンスと言える決定的なシーンを迎えたが、彼の放ったシュートは枠を逸れた。試合後、目に涙をためて、「あれを決めていれば……すみません」と、力なくつぶやいた。
一見華やかに見えるが、悔いだらけの3年間。この悔しさは本人が語るように、プロの場でぶつけるしかない。