鈴木の自信、村上の全力、真央の力み=全日本フィギュア女子FS解説

構成:スポーツナビ

ソチ決めた! 自身最後の全日本選手権で初V。五輪代表入りを決めた鈴木明子 【坂本清】

 フィギュアスケートのソチ五輪代表選考会を兼ねた全日本選手権が23日、さいたまスーパーアリーナで行われ、女子フリースケーティングでは、前日のショートプログラム(SP)2位の鈴木明子(邦和スポーツランド)がフリー144.99点、合計215.18点で初優勝を飾り、ソチ五輪代表入りを決めた。
 2位は村上佳菜子(中京大)で、フリー135.10点、合計202.52点。SP首位で、グランプリファイナル優勝の浅田真央(中京大)は、フリー126.49点、合計199.50点で3位だった。
 昨年の全日本3位、15歳の宮原知子(関大高)は、フリー125.06点、合計191.58点で4位。出産を経て、9月に3季ぶりの競技会復帰をした元世界女王の安藤美姫(新横浜プリンスFSC)は、フリー106.25点、総合171.12点で7位に終わった。
 スポーツナビでは、5つの3回転など力強いジャンプや氷上での明るい笑顔が持ち味で、2007年四大陸選手権、04年全日本選手権で4位に入るなどの成績を残した澤田亜紀さんに、女子FSを解説してもらった。
 3枚の五輪切符獲得を目指した、各選手の演技は――。

次々に良さが出た、初優勝の鈴木

 優勝した鈴木選手は、すごく自信があるように見えました。次々とジャンプを決めていくごとに良いところが出てきて、楽しそうに滑っていました。フリーの4分間があっと言う間に感じました。集中して、得点源になるところをしっかりと、ひとつひとつを大事に演じていました。後半のスピンでは、会場のお客さんがだんだんと立ち上がりはじめて、最後には総立ち状態でした。
 鈴木選手は、ジャッジだけでなくお客さんをすごく意識したようなプログラムだなと思います。ジャッジは選手と同じ目線のところにいますが、お客さんの席はもっとその上にあります。そこにも訴えかけるように、意識した動きをしているようですね。合計が215.18点という高得点ですが、そういった表現の部分、演技構成点のところが特に評価されたかもしれないです。

みんなの妹キャラ村上、力を尽くして2位

SP同様、力を存分に発揮した村上 【坂本清】

 村上選手は今日もすごく良かったです! 冒頭の3回転トゥループ−3回転トゥループですべてが決まると思って見ていましたが、昨日と同じくらい良かった。1発目のジャンプが決まると、すべてが乗ってきますし。懸念していたアクセルジャンプも、軸がゆがむ事もなくしっかり跳べていました。すごく集中していた様子で、良い表情で滑っていましたね。フリーで使っているようなスローな曲は長く感じる事もあるのですが、鈴木選手と同様にフリーの4分間がすごく短く感じられました。力を出し切ったと思います。
 村上選手は昔は背が小さくて、その分、体全体を使って大きく見せるように表現していました。それが大きくなってから、さらに良くなっている感じがします。
 会場の雰囲気も、最後のスピンでお客さんも、選手席にいた男子選手たちも総立ちでした。会場のみんなが不調だった今季前半の様子を知っていて、それを踏まえてみんながお母さんのような気持ちで応援していたのかも知れません。彼女は実際に妹キャラですし。今日の演技後も、昨日のSP後と同じように、顔をくしゃくしゃにして喜んでいました。

真央は3位 オーバーターンの理由

浅田は力み? トリプルアクセル決まらず 【坂本清】

 浅田選手は、トリプルアクセルの1本目が着氷しましたがオーバーターン、2本目は1回転になり流れてしまいました。後半、3回転フリップからの3連続も、2つ目の2回転ループが1回転になり、3連続につなげられませんでした。冒頭のアクセル2本の失敗で頭がいっぱいになっていたのかもしれません。
 特に前半のアクセルは、浅田選手にとって大きな得点源です。それに失敗してしまうとリカバリーの事を考えたり、それ以降のジャンプで「キチンとやらないと」と思ってしまったりするので、そういう事の影響もあったかもしれないですね。逆に、最初に(得点を)稼げていれば楽になりますし、自分のジャンプに自信が持てて、気持ちも乗ってきますから。
 ジャンプがオーバーターンになる理由として、ジャンプを開く(空中姿勢から着氷姿勢に体勢を変える事)のが遅くて回り過ぎてしまったりする事があります。アクセルの場合は右足を振り上げて跳ぶので、振り上げた右足の勢いが強すぎると、足の回転は早いけど上半身は回転が遅くなり、着氷前に感覚が狂い、体を開くのが遅くなったりする事があるんです。それから、ジャンプの高さがいつもより低くなってしまったときもオーバーターンになる可能性があります。高さがないのに回転の勢いがいつものままだと、回転し切るまでに着氷してしまうのでオーバーターンになってしまいます。今日の浅田選手のアクセルの場合も、高さがないように見えました。2つ目のアクセルは1回転になってしまいましたが、1つ目で失敗した分、「やってやろう」と力み過ぎたのかもしれないですね。ジャンプのミスがあったからか、滑りがいつもよりも少しだけ焦っているようには見えました。
 そんな中でも、指先、足先への意識はしっかりしていて、後半のステップはいつもと同じようにスピードに乗っていました。演技中にミスがあっても、それに左右されず無意識にできる身に付けた武器です。ジャンプには調子の良し悪しがありますが、スケーティングは変わらない、辛いときに助けてくれるものだと思います。

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