攻め続ける真央、鈴木は決戦で大人の演技

構成:スポーツナビ

プログラム変更が吉に 3位村上佳菜子

村上、こん身の演技で3位に 【坂本清】

 村上選手も頑張っていました! SPのプログラム曲を2シーズン前に戻していましたが、正解だったと思いますね。変更は勇気がいることだと思うんですが、変えた曲に良いイメージがあったのかもしれません。経験を積んで以前よりも深く、うまくなったエッジワークが生きていました。アップテンポな曲でそれをやろうとすると難しいですが、この曲には合っていましたね。

 冒頭の連続ジャンプ、3回転トゥループ−3回転トゥループの2つ目は、まるで単発の3回転トゥループのように幅も高さもありました。
 連続ジャンプの1つ目はそれまでの助走で跳べるのですが、2つ目を上手く跳ぶには1つ目のジャンプの降り方が大事になります。助走の勢いを落とさないようにしたり、体幹、手の位置も単発のジャンプとは違って次につなげやすいようにして。2つ目のジャンプにうまくつなげられるかは、1つ目のジャンプを跳んでいる間に感覚で分かるので、連続ジャンプの2つ目を例えば予定通り3回転でいくか、2回転にするかなどは、1つ目を跳んでいる空中で判断しています。
 他のジャンプですが、次の3回転フリップは安心していましたが、アクセルはちょっと心配していました。村上選手はアクセルがシングルになったりする印象もあったのですが、しっかり跳んでいました。フリーでも3回転−3回転、後半のアクセルはひとつのポイントになるかなと思います。

4位の宮原知子が持つ、スピンでの強み

15歳の宮原が4位に 【坂本清】

 すごかったです! 宮原選手は背も小さくて(143センチ)、演技を見せるには不利な部分もあるのですが、手足が長く見えるような振り付け、工夫がされています。伸ばしている方の手に、顔を向ける事だとか。
 宮原さんは関大リンクで練習をしているのでよく知っているのですが、練習の鬼ですね。例えば、「このステップを1周やって」という指示があったとしたら、その1周を終えても言われた事がモノになるまで練習を続けています。
 それから彼女は、大きい会場になるとスイッチが入るというか、ゾーンに入るようなところがあります。普段は恥ずかしがり屋で、ジュニアのときはポロっと失敗もあったりしたのですが、今季シニアに上がってからはあまりそういうところを見ない気がします。
 技術的な部分で良いところは、スピンの回転が落ちず、ポジションもきれいなところです。加点がもらえるスピンだと思います。スピンは、右回転、左回転の両方を同じレベルでできるところも強みですね。回転自体は両方できる人もいますが、普通は同じレベルでできないので試合ではどちらか1つ(多くは左回転)を使います。でも両方ができるとその分、評価を取りにいく作戦が取りやすいんです。

さすが元世界女王、5位安藤 戻ったジャンプの高さ

安藤は5位。元世界女王の貫録 【坂本清】

 休養から今季復帰した安藤選手ですが、本当によくここまで戻ってきましたね。復帰後はアイスショーも含めて、良かったり悪かったりと波があったようなのですが、全日本にしっかり合わせてきました。試合から遠ざかると、試合までの持って行き方とか、少しずつ忘れていってしまうものなのですが、さすが世界選手権で2度優勝している選手です。ジャンプの高さも出てきて「私が知っている美姫ちゃんに戻った」と思いました。あくまで私の意見ですが、ジャンプの軸がぶれていなくて、休養前よりもむしろ良くなったようにも見えました。フリーも期待したいですね。

6位の今井遥、持ち味発揮 優雅さのワケ

優雅さが光る今井遥 【坂本清】

 今井選手は華があります。遅咲きですが、すごく良い子で、いろいろと努力しているんだろうと思います。
 今井選手のスケートは、一歩の蹴りですごく滑れるのでスピードも落ちないし、足への負担も少ない。蹴りが少ない分、頭のぶれも少ないので、それが優雅に見える理由かも知れないです。またジャンプを降りた後の流れがきれいで、出来栄え点でコツコツと得点を重ねられる選手ですね。

<了>

澤田亜紀/Aki Sawada

1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では優勝1回を含め、6度表彰台に立った。シニアでは2004年全日本選手権で、安藤美姫、浅田真央、村主章枝に次ぐ4位に入り、07年四大陸選手権でも4位の成績を残した。5つの3回転ジャンプを跳ぶなど力強いジャンプが持ち味。トレードマークとも言える、氷上での明るい笑顔も人気を呼んだ。11年に現役の第一線を退き、現在は関大を拠点にコーチとして活動している。

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