「世界で一番強い」オルフェーヴル=語り継いでいこう、その黄金の輝きを

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一番嬉しかったダービー、それ以降は重圧との戦い

ゴールドシップに夢を託した楽天・田中マー君(左)も池添を祝福 【写真:中原義史】

 そんな池添が、オルフェーヴルとともに歩んできた中で最も嬉しかったレースは、ダービーだという。

「勝ったレースはどれも思い出深いんですが、一番はダービーですね。そこから後のレースは三冠がかかった菊花賞もそうですし、ずっとプレッシャーを感じていました。ですから、ダービー以降は終わってホッとしたレースがほとんど。でも、これ以上のプレッシャーはないと思うので、自分の精神面を強くしてくれました」

 油断すればすぐ振り落とされてしまうくらい気性の荒い愛馬をなだめつつ、勝って当然という重圧の中で当たり前のように勝たせなければいけない責任。その2つを同時にこなしてきた、密度が濃すぎる3年半。それももう終わりかと思うと、大きな重圧から解放された安堵感と、まだまだ離れたくない寂しさと、複雑な思いが巡ったのではないか。
「6つもGIを勝つ馬に出会ったことはなかったですからね。その背中、走り……すべてが僕の財産です。本当にかけがえのない存在です」

「オルフェーヴルに出会えて本当に良かった」

引退式には約6万人が残り、最後の雄姿を見送った 【写真:中原義史】

 この日、オルフェーヴルのラストランを見ようと、中山競馬場に集まった観衆は前年比日123.3%の12万4782人。日も暮れた17時から行われた引退式にはおよそ6万人の人たちが残り、その最後の雄姿を見送った。
 両前脚を高く上げて立ち上がろうとしたり、最後の口取り記念撮影でもピタッと駐立せずに、何度も嫌がる素振りを見せるなど、最後まで“らしい”一面をのぞかせたオルフェーヴル。ファンは稀代の個性派スーパーホースの姿を、有馬記念のレースと合わせて、その目に、その心に、強く焼き付けたに違いない。時間は前後するが、有馬記念後のインタビューで池添は、ファンにこんなメッセージを送った。

「オルフェーヴルは世界一強い馬です。また、過去の名馬と同じように、オルフェーヴルは今の時代を築いた馬。震災があった年に三冠馬となり、被災地の方には元気と勇気を与えたと思っています。みなさんには、オルフェーヴルの力強い走りを語り継いでいってほしい。オルフェーヴルに出会えて本当に良かったです」

オルフェ2世がデビューするその日まで

オルフェーヴルの強さを語り継いでいこう、そして、果たせなかった夢は2世に託そう 【写真:中原義史】

 これまでオルフェーヴルを勝たせることが池添や池江厩舎をはじめスタッフの使命だったとしたのなら、我々やファンは池添の願いどおり、オルフェーヴルの破天荒な強さを語り継いでいくことを使命としなければならない。そして、オルフェーヴルで果たせなかった夢は、2世へと受け継がれていく。

「そうですね、そうやって子どもに乗ることができるのは騎手の醍醐味ですからね。オルフェーヴルの子どもで凱旋門賞に挑戦して、勝つことができれば、これ以上のことはないと思います」

 順調ならば4年後の17年にオルフェーヴルの子どもたちがデビューする。その日まで、黄金に輝くオルフェーヴル物語を“第1章”として語り合っていこう。


<了>

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