「僕のスケート人生は幸運の連続だった」=フィギュア織田信成インタビュー・後編

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現役ラストシーズンに臨んでいる織田。『笑顔』というテーマのもと、スケートを楽しんでいる 【坂本清】

 織田信成(関西大学大学院)は、自身のスケート人生に感謝している。母親がコーチであったこと、競技を続けられる環境に恵まれていたこと、そして第一線で活躍できたこと。もちろん不慮のアクシデントもあったが、「僕のスケート人生は幸運の連続だった」と、穏やかな面持ちでそう語る。今季のテーマを『笑顔』としたのも、現役ラストシーズンを楽しく滑りきることで、そうした感謝をこれまで支えてくれた周囲の人々に伝えたいと思っているからだ。来年2月のソチ五輪の出場枠をめぐる男子の争いは熾烈を極めている。2010年のバンクーバー五輪では、不本意な出来に終わっているだけに、今回に懸ける思いは誰よりも強いかもしれない。「(ミスをした)その選手がこんな演技をしてるんだと日本だけではなく世界にアピールしたい」。インタビューの最後、織田は力強くそう宣言した。

若手のおかげでハングリー精神がよみがえった

昨年の全日本選手権では4位と表彰台を逃した。しかしこの敗戦により、ハングリー精神がよみがえったと振り返る 【坂本清】

――2011年のけがから復帰したときはどういった気持ちでしたか?

 まず本当に試合に出られて良かったなと思いました。それと同時に、また五輪と世界選手権の切符を勝ち取らないといけないという新たな不安も生まれましたね。ただ、それもぜいたくな悩みなのかなって思ったんです。けが明けのシーズンだったので復帰できて良かったなという感謝の気持ちもありましたね。

――けがを乗り越えて変わったと思うところは?

 これまで以上にどういう練習をするか、どうコントロールするかを綿密に考えるようになりました。ここが痛いときはこの練習をするといった練習方法であったり、ケアだったりを学べたのはけがの成果だったと思います。

――昨年の全日本選手権は4位で表彰台を逃しましたが、焦りなどはありましたか?

 焦りよりもすごく悔しかったです。スポーツなので練習して勝たないといけない、感謝しているだけではいけないと感じました。1位になるということは誰かを蹴落として勝っていかないといけない。そういうハングリー精神が自分にはなかったと再確認できました。当時は宿舎のホテルでうなだれてました(笑)。ただ、その3週間後に国民体育大会があったのでそこで必ず勝ってやろうとモチベーションは上がりましたね。

――ここ最近は若い選手の台頭が著しいですよね

 そうですね。でも自分が勝つ、何が何でも勝ち取ってやろうというハングリー精神が若手選手のおかげでよみがえりましたね。そのときの負けが五輪選考会じゃなくて良かったなと思います。

デビッドは曲選びに間違いがない

振付師への感謝を述べる織田。曲選びに間違いがないと絶大な信頼を寄せる 【スポーツナビ】

――今季のプログラムは楽しく滑ることができていますか?

 フリースケーティング(FS)に関してはステップの部分で表情を明るくするよう振付師の方に言われていますし、ショートプラグラム(SP)も明るく滑ってほしいと言われたので、楽しさや笑顔を自然に表せるように練習から気をつけています。

――テーマを「笑顔」にしたきっかけは?

 今季が現役最後のシーズンだったのでしんみり終わりたくないと思ったんです。SPもFSも楽しく滑れることができるように先生に曲を選んでもらったので、精いっぱい頑張ろうと思いこのテーマに決めました。

――SPの『コットンクラブ』はデビッド・ウィルソン氏の振り付けですが、今回は最後のシーズンということで依頼をしたんですか?

 デビッドはジュニアからシニアに上がるまでサポートしてくれた恩人です。そうした先生に感謝を込めて演技したいなと思い、依頼したんです。FSの振り付けを考えてくれたローリー(・ニコル)はけがをしてからもお世話になっていました。FSでいつも満足できる振り付けを考えてくれるので、それで現役生活を終えることができたらいいなと思ったからです。

――05年に世界ジュニアを制した際もデビッド・ウィルソン氏の振り付けだったので、ゲンを担ぐじゃないですが、最後のシーズンもそれでいこうと考えた部分もあったんですか?

 そうですね。デビッドは曲選びに間違いがなく、振り付けやプログラムに関しても絶対的な信頼を置けるんです。まあ、彼は感情の起伏が激しい人なので、調子が乗らないと練習に来ないときもあるような人なんですけど(笑)。ただ、そういうところも含めてデビッドに付いていくんだという気持ちです。

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