プレミア・夏の補強の“費用対効果”は?=明暗がはっきり分かれる現地の評価

寺沢薫

チームを変えたエジルの加入

夏の補強で最も評価が高いのがアーセナルのエジル(右)。彼の加入がチーム全体を変えた 【Getty Images】

 早いもので、2013年の終わりとともに、イングランド・プレミアリーグの折り返し地点が近づいてきた。この夏、プレミアリーグの全20クラブは歴代最高額となる6億3000万ポンド(約1060億円)を移籍マーケットにつぎこんだが、各クラブが投じた補強資金の“費用対効果”もそろそろ見えてくる頃合いだ。

 今夏、最も高額な4200万ポンド(約70億円)という移籍金でプレミアへやってきたのが、レアル・マドリーからアーセナルに加わったメスト・エジルだ。そして、ここまでリーグで最も成功を収めているニューフェイスもまた、ここまでリーグ最多の7アシストをマークしているエジルである。高い技術やパスセンスはもちろん、「エジルが来たことで、他の選手たちが自信と野心を持つようになり、より良い選手へと成長している(『インデペンデント』)」というように、彼の加入がアーセナルのチーム全体を変えたという点も高評価の要因だ。クラブOBの元フランス代表MFエマニュエル・プティにいたっては、「彼の移籍金は高額だったが、移籍マーケットで最高のバーゲン品だった」と最大級の賛辞を送っている。

補強に失敗したトッテナム

 対照的に大型補強が実っていないのが、アーセナルの宿敵トッテナムだ。チームの成績自体はさほど悪くないが、プレミアリーグはここまでの16試合でわずか15ゴールと得点力不足が深刻で、レアル・マドリーに移籍したガレス・ベイルの穴は埋まっていない。夏にはベイルの売却額を上回る投資で7選手を獲得したが、「1億1100万ポンド(約187億円)が無駄に」と刺激的な見出しを打つ『ザ・サン』は、「新加入選手の中では、MFパウリーニョが最も良いプレーをしている。しかしプレミアリーグで輝きを放っている選手は1人もいない」とバッサリだ。

 特にクラブ歴代最高額でローマから獲得し、ベイルの11番を受け継いだエリック・ラメラに対しては「まったくインパクトを残せていない。いいプレーができたのはヨーロッパリーグの1試合だけ」と辛辣(しんらつ)な評価。他メディアでもホームシック疑惑が持ち上がるなど、プレミアにまったくなじめず、先発もままならない状況で批判の矢面に立たされている。2600万ポンド(約44億)でバレンシアから加入し、ここまで4得点のロベルト・ソルダードも決定力不足の“戦犯”に挙げられているが、こちらはアンドレ・ビラス=ボアス監督の戦術の犠牲になっているという見方もある。『デイリーメール』はバレンシア時代に彼が挙げた公式戦82ゴールのうち、エリア内での得点が81ゴールを占めたというデータを用い、チームが彼にチャンスを供給できていないと指摘をしている。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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