育てる徳島、成長でつかんだJ1昇格=前半戦15位から驚異の巻き返し
京都は昨年、徳島は2年前のリベンジ懸けた一戦
四国初のJ1昇格を果たした徳島。前半戦15位から驚異の巻き返しを見せ、ついに悲願を達成した 【写真:アフロスポーツ】
国立霞ヶ丘競技場。1964年の東京五輪を目指して建造されたこの建物は、2度目の東京五輪を機に生まれ変わることとなる。各種大会がこの建物で行われるのも今年度で最後になるのだなという感慨を持ちながら立ち止まり、ちょっと見上げてみた。つまり、J1昇格プレーオフ決勝戦も、2度目にして早くも「ラスト国立」ということになったわけだ。
J2の3位から6位チームがノックアウト方式で対戦し、「最後の昇格切符」を争うJ1昇格プレーオフ。今季は3位・京都サンガと4位・徳島ヴォルティスが、この決勝の舞台に生き残ってきた。京都にとっては同じく3位になりながらプレーオフで敗れた昨年のリベンジ、徳島にとっては最終節で昇格を逃した悪夢の2011年のリベンジといったところだろう。そのチームスタイルは対極に近い。ボール保持を重視し、最後はドリブルを多用して崩しにかかる京都に対し、コンパクトな守備ブロックを素早く形成して相手の攻撃に耐え、奪ったボールをつないで攻める徳島の対戦である。京都にとっては決して相性の良いタイプではない。実際、今年の対戦は京都から見て、1分け1敗。練習試合でも、京都は勝てていない。
昇格プレーオフの当事者になって見えるもの
プレーオフの最大目的が「興行」であることは言うまでもない。動員できないのではやる意味がない。その点では、「たとえ関東勢でなくとも2万人を集められる」ことが分かったのは収穫なのかもしれない。試合中、スタンドの反応に注視していたが、サポーターが詰めかけたゴール裏を除くメーン・バックスタンドについては、どちらの応援でもない「サッカーファン」が多数派に見えた。ヤマザキナビスコカップ決勝や天皇杯決勝のようなカードを問わない動員力のあるイベントになるのは、こういう人が増えるかどうかに懸かっているので、昇格プレーオフというイベントのあり方は一定の成功を収めたと言えるのだろう。
もちろん、別の見方もある。「サッカー先進国ならあり得ないルール」という言葉は、複数の指導者の口から聞いた言葉だ。恐らく指導者仲間の会合などでそうしたことが語られ、言葉がシェアされていっているのだろう。リーグ戦で3位になったチームが上がるべきというロジックを一概に否定することはできない。ただ、当事者になってみて見えてくるものもある。例えば、徳島の長島裕明コーチの場合もそうだった。
今季から徳島のコーチに就任した長島氏は、プレーオフ制度に懐疑的だった。だが、いざリーグ戦に臨んでみると、「誰が考えたのかは知らないが、うまくできている」とも実感させられたという。「終盤になっても消化試合ができない。上位2つ、プレーオフまでの6位以内、あるいは残留争い。すべてのゲームがどれかには関わっている」ということが生み出す持続的な緊張感は、J2の経験が豊富な長島コーチにとって新鮮なものだったという。前半戦を終えて22チーム中15位と、絶望的に思える低迷をしていた徳島が息を吹き返せたのも、こうしたレギュレーションと無縁ではない。3位の尻尾は見えずとも、6位の尻尾なら十分に見えたのである。