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育てる徳島、成長でつかんだJ1昇格
前半戦15位から驚異の巻き返し

京都は昨年、徳島は2年前のリベンジ懸けた一戦

四国初のJ1昇格を果たした徳島。前半戦15位から驚異の巻き返しを見せ、ついに悲願を達成した
四国初のJ1昇格を果たした徳島。前半戦15位から驚異の巻き返しを見せ、ついに悲願を達成した【写真:アフロスポーツ】

 12月8日、東京メトロ副都心線・北参道駅で下車して、歩き出す。約1キロの道のりだが、正直に言うと道に迷い、経過すること25分。もはやそこにあることが当たり前で、もうすぐ大改修工事に突入して跡形もなくなるなど信じられない。そんな巨大構造物が視界に姿を現した。


 国立霞ヶ丘競技場。1964年の東京五輪を目指して建造されたこの建物は、2度目の東京五輪を機に生まれ変わることとなる。各種大会がこの建物で行われるのも今年度で最後になるのだなという感慨を持ちながら立ち止まり、ちょっと見上げてみた。つまり、J1昇格プレーオフ決勝戦も、2度目にして早くも「ラスト国立」ということになったわけだ。


 J2の3位から6位チームがノックアウト方式で対戦し、「最後の昇格切符」を争うJ1昇格プレーオフ。今季は3位・京都サンガと4位・徳島ヴォルティスが、この決勝の舞台に生き残ってきた。京都にとっては同じく3位になりながらプレーオフで敗れた昨年のリベンジ、徳島にとっては最終節で昇格を逃した悪夢の2011年のリベンジといったところだろう。そのチームスタイルは対極に近い。ボール保持を重視し、最後はドリブルを多用して崩しにかかる京都に対し、コンパクトな守備ブロックを素早く形成して相手の攻撃に耐え、奪ったボールをつないで攻める徳島の対戦である。京都にとっては決して相性の良いタイプではない。実際、今年の対戦は京都から見て、1分け1敗。練習試合でも、京都は勝てていない。

昇格プレーオフの当事者になって見えるもの

 国立に近づくと、その外からも徳島の応援が聞こえてきた。気合いは十分といったところだろうか。そういえばどのくらいのお客さんが入るのだろう。昨年は27,433人を動員した大会だが、今年は両チームともに関東勢ではない。別に関係者ではないが、集客は気になるところである。報道受付に旧知のJリーグ広報担当者がいたので聞いてみると、「前売りで2万までいきました。良かった」。ホッとした表情での返答を聞いて僕も勝手にホッとする。確かに良かった。


 プレーオフの最大目的が「興行」であることは言うまでもない。動員できないのではやる意味がない。その点では、「たとえ関東勢でなくとも2万人を集められる」ことが分かったのは収穫なのかもしれない。試合中、スタンドの反応に注視していたが、サポーターが詰めかけたゴール裏を除くメーン・バックスタンドについては、どちらの応援でもない「サッカーファン」が多数派に見えた。ヤマザキナビスコカップ決勝や天皇杯決勝のようなカードを問わない動員力のあるイベントになるのは、こういう人が増えるかどうかに懸かっているので、昇格プレーオフというイベントのあり方は一定の成功を収めたと言えるのだろう。


 もちろん、別の見方もある。「サッカー先進国ならあり得ないルール」という言葉は、複数の指導者の口から聞いた言葉だ。恐らく指導者仲間の会合などでそうしたことが語られ、言葉がシェアされていっているのだろう。リーグ戦で3位になったチームが上がるべきというロジックを一概に否定することはできない。ただ、当事者になってみて見えてくるものもある。例えば、徳島の長島裕明コーチの場合もそうだった。


 今季から徳島のコーチに就任した長島氏は、プレーオフ制度に懐疑的だった。だが、いざリーグ戦に臨んでみると、「誰が考えたのかは知らないが、うまくできている」とも実感させられたという。「終盤になっても消化試合ができない。上位2つ、プレーオフまでの6位以内、あるいは残留争い。すべてのゲームがどれかには関わっている」ということが生み出す持続的な緊張感は、J2の経験が豊富な長島コーチにとって新鮮なものだったという。前半戦を終えて22チーム中15位と、絶望的に思える低迷をしていた徳島が息を吹き返せたのも、こうしたレギュレーションと無縁ではない。3位の尻尾は見えずとも、6位の尻尾なら十分に見えたのである。

川端暁彦
川端暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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