浅田真央が続ける自分に対する挑戦

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悔いが残ったFSでの失敗

挑戦し続ける浅田真央。15歳でのファイナル初優勝から8年も、意欲はますます高まるばかりだ 【坂本清】

 浅田真央(中京大)にとって、もはや敵は内なる自分しかいないのかもしれない。今季のグランプリ(GP)シリーズは2戦2勝。12月5日から行われたGPファイナル(福岡)でも、2位のユリア・リプニツカヤ(ロシア)に12点近くの差をつけて危なげなく連覇を達成した。決して完璧な演技をしているわけではない。7日のフリースケーティング(FS)でも、冒頭のトリプルアクセルで転倒、2本目も回転不足を取られた。スピンではすべてレベル4を獲得しているが、自身が目指していた演技には程遠い出来だった。

 浅田もそれを認めている。
「今回のファイナルでは、自分の目指していたことがショートプログラム(SP)ではできていたんですけど、FSではそれを達成できなくてとても悔しい気持ちです。トリプルアクセルを2回入れるというプログラム構成は、いま自分ができる最高レベルのものです。1回目をしっかり降りたら、もう1回は落ち着いていこうと思っていたんですけど、大きな転倒をしてしまうとやはりなかなか次が難しいです。シミュレーションができていない状況での挑戦だったので、もう少し練習が必要かなと思っています」

 5日のSPでは、回転不足こそ取られたもののトリプルアクセルの着氷に成功。「良いジャンプを跳べている」と、手応えを語っていた。周囲の期待も当然高まっていたはずだが、またしても成功はおあずけとなってしまった。自身への期待もあったのだろう。FS後にミックスゾーンに現れた浅田の表情は、とても優勝者のそれには見えなかった。

「今回は順位よりも自分が目指しているレベルの演技をしようと思っていました。SPは満足していますが、FSはまだまだ目指しているエレメンツをクリアすることができなかったので、悔いは残っています」

積極的に挑戦したことは意味がある

トリプルアクセルは1本目が転倒。今後は、課題のクリアに挑む 【坂本清】

 そもそも浅田がFSでトリプルアクセルを2回入れることを示唆したのは、11月に行われたNHK杯でのことだった。「スケートアメリカのとき、(佐藤)信夫先生と一緒に練習しているうちにトリプルアクセルの調子が良くなっていき、すごく簡単に跳べるようになったので、これなら入れてもいいんじゃないかと思ったんです」。突如として飛び出したこの発言は驚きを持って伝えられた。

 浅田は2010年のバンクーバー五輪で、女子選手として史上初となるSPとFSで計3回のトリプルアクセルに成功。これはいまも破られていないが、五輪以降は、満足に跳べない日々が続いていた。ようやく今年初めから挑戦できる状態となり、2月の四大陸選手権ではうまく着氷した。とはいえまだ確率は低い。今季に入ってからも試合ではまだ1度も完璧には決めてはいなかった。

 それでも「80パーセントぐらいはできると思っています。もっと上のレベルで練習していくほうが私も楽しいし、それを試合で決められたら最高です。バンクーバー五輪のシーズンより調子もいい。できる自信はあります」と、浅田は力強く宣言していた。

 そして迎えたGPファイナル。FSでトリプルアクセルを2回入れる演技構成に変えた浅田は果敢にチャレンジした。結果は前述の通りだが、積極的に挑戦したことには意味がある。「今回は挑戦してみなきゃ分からない部分があったので、とりあえず挑戦して、ここから先をどうするかを、この先の練習を見て決めていきたいと思っています」と、佐藤コーチも同調していた。

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