守らず攻める浅田真央の強さ=GPファイナル女子FS解説

構成:スポーツナビ

転倒あるも疲れ見せず 全日本でも攻めるか

2位リプニツカヤ(左)と3位のワグナー(右)。各国の五輪代表争いも、佳境に入る 【坂本清】

 フリーのプログラム曲は「ピアノ協奏曲第2番」ですが、後半にどんどん盛り上がるプログラムで、それに合わせるようにスピードも上がって、総集編のように最後に一番盛り上がって終わります。まるで浅田選手のスケート人生、長い時間をもの語っているようで、この最後の場面が私は好きです。冒頭に転倒がありましたが、浅田選手だけは疲れが見えませんでした。ミスをした後の、日々の練習もしているんだなと思いました。

 浅田選手は“守って”いる試合を見た事がない気がします。いつも攻めているイメージです。守りに入るとかえって焦ってしまう事もありますが、浅田選手の場合は攻めているからこそ思い切りできるのではないかと思います。
 今回の試合で課題が見つかったと言っていましたし、全日本選手権(12月21日開幕、五輪代表選考大会)でも「フリーで2本のトリプルアクセル」を入れるのではないでしょうか。いつも1本で構成しているジャンプを2本にすると、息が上がるところが違ったりするのですが、それが上手くいくと筋肉の感じも違うんです。感覚的な話になってしまいますが、もうポンポンと跳べてしまうような。練習ではなく、いい緊張の中でやってみて感じたこともあると思います。それを全日本で挑戦するかもしれませんね。

強み発揮したリプニツカヤ “怖い存在”ワグナー

 2位に入ったリプニツカヤ選手は、彼女だけ大きなミスがありませんでした。ロシアの女子五輪代表は2枠ですが、このままいけば行けるかもしれませんね。ロシア杯のフリーのようにミスが出れば分かりませんが、彼女の場合はジャンプを後半に5回入れています。後半にジャンプが5回なんてすごく体力がいることなんですが、それでも手の動き、表情もしっかり演技を続けて、ジャンプが上手くいっても喜んだり表情も変わらず曲に入り込んでいるところが強みですね。

 3位のワグナー選手は前半はすごく良かっただけに、後半が残念でした。今回ジャンプのミスはありましたが、音楽をしっかり踊れていて、間の取り方もすごく良かった。ジャンプの失敗でスピードが下がっただけなので、そこをしっかりすれば怖い存在になるかもしれません。

<了>

澤田亜紀/Aki Sawada

1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では優勝1回を含め、6度表彰台に立った。シニアでは2004年全日本選手権で、安藤美姫、浅田真央、村主章枝に次ぐ4位に入り、07年四大陸選手権でも4位の成績を残した。5つの3回転ジャンプを跳ぶなど力強いジャンプが持ち味。トレードマークとも言える、氷上での明るい笑顔も人気を呼んだ。11年に現役の第一線を退き、現在は関大を拠点にコーチとして活動している。

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