ハマると怖い堅守速攻、ギリシャ侮れず=欧州勢で日本が最もやりにくいタイプ

河治良幸

ゲカス、カラグニスのベテランも健在

2004年のユーロ優勝を知るカラグニス(10番)はいまだ健在。本大会時には37歳となるが、あふれる闘志は衰えない 【Getty Images】

 3人のほかに注意したいアタッカーはやはりゲカスだ。本大会時に34歳となる彼は絶対的なエースとしての働きこそ厳しくなったものの、ジョーカーとしては持ち前の決定力を発揮できる。攻撃に変化を加えたい場合はMFのソティリス・ニニス(PAOK)がウイングの一角を担うことも。このギリシャ随一のテクニシャンが波に乗ると、日本のディフェンスが取るべき対策にも柔軟性が求められてくる。またイタリアのジェノアで活躍するヨアンニス・フェトファツィディスは中盤から前線にかけてすべてのポジションをこなすオールラウンダーで、運動量が豊富な上に高速ドリブルも厄介だ。同点で終盤に差し掛かると非凡な攻撃力を備える彼らが立て続けに出てくるため、日本としては後半の早い時間帯までにリードしておきたいところだろう。

 攻守のバランスに優れる中盤をまとめるのは来年37歳となるギオルゴス・カラグニス(フラム/イングランド)だ。かつてインテルでプレーした経験を持つベテランは優勝したユーロ04の“生き証人”でもある。準々決勝に進出したユーロ12では「我々にクリスティアーノ・ロナウドはいない。だからこそ全員で戦う必要がある」と語るなど、ギリシャの高い組織力を象徴する選手だ。カラグニスは時に中央でアクセントをつけ、また時にワイドなポジションでウイングやサイドバックと絡んでチャンスを生み出すなど、サイドアタック主体の攻撃にアクセントを生み出せる希少な存在だ。それと共に90分間にわたり、仲間を鼓舞する生粋のファイターでもある。

 中盤の3枚は相手のフォーメーションやスタイルに応じて、正三角形にも逆三角形にもなるが、主に守備のバランスを取るのがアレクサンドロス・ツィオリス(PAOK)だ。ギリシャが相手の中央攻撃を止め、さらにセカンドボールを拾って効果的な速攻につなげるための生命線であり、日本にとっても彼の周囲にギャップを生み、本田圭佑や香川真司が突ける状況を作り出せるかが、流れの中で得点を奪うためのキーポイントになるだろう。もう1人のMFであるヨアンニス・マニアティス(オリンピアコス)は守備と攻撃をつなぐ役割をこなすタイプだが、点を取りたい時間帯ではこのポジションにニニスが投入される。

組織的な守備を崩すのは簡単ではない

 逆に守り切るときはDF登録の選手をツィオリスと並べるケースも。シャルケ04所属で内田の同僚であるキリアコス・パパドプーロスは適材だが、現在は右ひざを負傷して離脱中だ。センターバックの主力候補としても期待される若きストッパーの復調はギリシャの浮沈を握ると言っても過言ではないかもしれない。そのパパドプーロスを含め、ディフェンスラインの人材自体は豊富で、誰が出てきても組織力に大きな差がないのはギリシャの強みだ。ただ、その中でもソクラティス・パパスタソプーロス(ドルトムント/ドイツ)は統率力が高く、厳しい状況でも的確なステップワークで相手アタッカーの侵入を抑えられる。彼とパパドプーロスがそろうと、日本の強みであるスピーディーなコンビネーションが本大会に向けてさらに高まっても、そう簡単には崩せないだろう。

 両サイドバックは守備で献身的な働きを示しながら、機を見て一気に駆け上がれるタイプをそろえる。現在の主力であるトロシディスもホセ・ホレバス(オリンピアコス)も欧州チャンピオンズリーグのようなハイレベルなステージで決定的な仕事を何度もしており、特に香川が主力になる左サイドの対面、ギリシャにとって右サイドに位置するトロシディスはいかなる時間帯でも警戒しておく必要がある。守護神のオレスティス・カルネジスはスペインのグラナダで控えだが、ギリシャ代表ではディフェンスラインの背後で的確にポジションを取り、好セーブにつなげている。彼が冬の市場で移籍しなければ日本にとってありがたいニュースとなるが、これまでの安定感を見る限り大きなミスは期待できない。

 ギリシャから中盤の主導権を握ることは日本代表にとって困難ではないが、バイタルエリアに蓋をされたときにどう崩すか。10月のセルビア戦とベラルーシ戦から未消化の課題に向き合って強化する必要があるだろう。加えてギリシャのダイナミックなサイド攻撃とカウンターに対応するためのしっかりした準備が必要だ。もちろんギリシャはセットプレーの得点力が強みのチームでもある。セットプレーの守備での不安は世界の舞台において日本の宿命とも言えるが、流れの中で優勢でもセットプレーで負けてしまったとならないように、何らかの対策を講じて臨むべきだろう。

<了>

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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