検証・統一球〜打球への影響を探る〜 11〜12年は「特別」なボールだったのか

データスタジアム株式会社

今季のトピックスのひとつが統一球の仕様変更。シーズンが終わったいまだからこそ、もう一度統一球がもたらした影響を考えたい 【写真は共同】

 2013年は東北楽天が創立9年目での日本一、さらに田中将大の連勝記録、東京ヤクルト・バレンティンのシーズン本塁打記録の更新など、話題の多いシーズンであった。そして、もう一つ忘れてはならないのは、6月に明らかになった統一球の仕様変更である。今年も統一球であったことは変わりないが、シーズンが終了したいまこそ、より低反発であった過去2年や統一球導入前と比べながら、統一球がもたらした影響を探っていきたい。

13年統一球、「飛ぶボール」とは少し大げさ

プロ野球年度別平均得点(拡大してご覧ください) 【データ提供:データスタジアム株式会社】

 2011年、12年とボールが低反発になり、本塁打が大幅に減少。それに伴い、試合中に入る得点が少なくなったことは、多くのファンが実感したところだろう。具体的な数値で見ると、11年のチームの1試合平均得点は3.28点、12年は3.26点だった。
 これは、それまでのプロ野球に親しんできたファンにとって、非常に違和感のあるものとなった。なぜなら、1980年から2010年まで約30年もの間、チームの1試合平均得点はおよそ4〜4.5点の内に収まってきた。それが低反発球になり突然、平均3点台前半しか入らない野球に変わった。11年、12年の平均得点は、歴史をさかのぼると1950年代後半のそれに近い。“投高打低”とも言うべき、この時代の野球を知らないファンからすれば、低反発球の下での野球はより一層、特異なものに見えたはずだ。

 そんな2シーズンが過ぎ、13年になってまたボールの仕様が変わった。「飛ぶボール」という表現がよく用いられるが、得点はどのくらい増えたのだろうか。計算してみると、13年の平均得点は3.99点。確かに増えているが、「飛ぶボール」という表現は少し大げさのようにも思える。歴史的に見ればこの数値は、1980年から2010年までの約30年間における下限値程度のもので、4.92点を記録した04年など、これよりはるかに“打高投低”のシーズンもある。
 よって、13年のボールはあくまで「過去2年に比べて飛ぶ」というだけで、「歴史的に飛ぶボール」ではないということが言える。このように長い歴史の中で見た位置づけというのは、統一球を語る上で、しっかり押さえておきたいポイントだ。

11年、12年は本塁打と安打が極端に減少

 次に打者の成績から見ていきたい。統一球導入後は例年より軒並み下がった。10年の12球団平均打率は2割6分9厘だったのに対し、11年は2割4分7厘、12年は2割4分8厘と2分ほど下がり、13年は2割5分8厘と上昇した。打率が下降した背景には当然だが安打の減少がある。安打を増やすには本塁打を打つか、フィールド内の打球がヒットになれば良い。そこで本塁打とフィールド内の打球に分けて影響を見ていきたい。

 本塁打(ランニング本塁打は除く、カッコ内は1試合平均数)は、09年1532本(1.77本)、10年は1605本(1.86本)だったのに対し、11年は937(1.08本)、12年は880本(1.02本)と、1試合平均1本を切るかどうかまでに下降。しかし、今年は1308本(1.51本)にまで戻った。得点を挙げる上で重要な本塁打がここまで減れば、得点減は自然な成り行きである。

 インプレーの打球の変化にはBABIPという指標を用いる。これはBatting Average on Balls In Playの略であり、「フィールド内に飛んだ打球がどれだけ安打になったか」を示すものである。式は「(安打−本塁打)÷(打数−三振−本塁打+犠飛)」で算出できる。

年度      平均得点    BABIP
2009    4.13    .302
2010    4.39    .311
2011    3.28    .293
2012    3.26    .290
2013    3.99    .300

 平均得点が4.39だった10年はBABIPが3割1分1厘に対し、11年は3割を切る2割9分3厘。フィールド内打球の安打数差は1189本であった。

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日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

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