検証・統一球〜打球への影響を探る〜 11〜12年は「特別」なボールだったのか
今季のトピックスのひとつが統一球の仕様変更。シーズンが終わったいまだからこそ、もう一度統一球がもたらした影響を考えたい 【写真は共同】
13年統一球、「飛ぶボール」とは少し大げさ
プロ野球年度別平均得点(拡大してご覧ください) 【データ提供:データスタジアム株式会社】
これは、それまでのプロ野球に親しんできたファンにとって、非常に違和感のあるものとなった。なぜなら、1980年から2010年まで約30年もの間、チームの1試合平均得点はおよそ4〜4.5点の内に収まってきた。それが低反発球になり突然、平均3点台前半しか入らない野球に変わった。11年、12年の平均得点は、歴史をさかのぼると1950年代後半のそれに近い。“投高打低”とも言うべき、この時代の野球を知らないファンからすれば、低反発球の下での野球はより一層、特異なものに見えたはずだ。
そんな2シーズンが過ぎ、13年になってまたボールの仕様が変わった。「飛ぶボール」という表現がよく用いられるが、得点はどのくらい増えたのだろうか。計算してみると、13年の平均得点は3.99点。確かに増えているが、「飛ぶボール」という表現は少し大げさのようにも思える。歴史的に見ればこの数値は、1980年から2010年までの約30年間における下限値程度のもので、4.92点を記録した04年など、これよりはるかに“打高投低”のシーズンもある。
よって、13年のボールはあくまで「過去2年に比べて飛ぶ」というだけで、「歴史的に飛ぶボール」ではないということが言える。このように長い歴史の中で見た位置づけというのは、統一球を語る上で、しっかり押さえておきたいポイントだ。
11年、12年は本塁打と安打が極端に減少
本塁打(ランニング本塁打は除く、カッコ内は1試合平均数)は、09年1532本(1.77本)、10年は1605本(1.86本)だったのに対し、11年は937(1.08本)、12年は880本(1.02本)と、1試合平均1本を切るかどうかまでに下降。しかし、今年は1308本(1.51本)にまで戻った。得点を挙げる上で重要な本塁打がここまで減れば、得点減は自然な成り行きである。
インプレーの打球の変化にはBABIPという指標を用いる。これはBatting Average on Balls In Playの略であり、「フィールド内に飛んだ打球がどれだけ安打になったか」を示すものである。式は「(安打−本塁打)÷(打数−三振−本塁打+犠飛)」で算出できる。
年度 平均得点 BABIP
2009 4.13 .302
2010 4.39 .311
2011 3.28 .293
2012 3.26 .290
2013 3.99 .300
平均得点が4.39だった10年はBABIPが3割1分1厘に対し、11年は3割を切る2割9分3厘。フィールド内打球の安打数差は1189本であった。