F1の来期シート争いは拝金主義!?=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第18回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

実力派がそろった名門フェラーリ

フォースインディアと契約し、2014年シートを確保したニコ・ヒュルケンベルグ(右)。残るシートを手にするのは、誰なのか? 【Force India F1 Team】

 今シーズンのF1も、WECも、WRCも終了して、あちこちで表彰式やら何やらが始まっているが、同時に、来季のドライバーが次々と発表されるに及んで、私は少々ガックリ来ている。ここではF1に限って話をするが、各チームのドライバー獲得の物語が陳腐に過ぎる感じがしてならないのだ。

 フェラーリがフェリペ・マッサを切ってキミ・ライコネンを獲得したのは仕方ないだろう。マッサは個人的に好きなドライバーだが、実力低下は明らか。トップチームであるフェラーリとしては、力の落ちてきたドライバーを使い続けることはできなかったということだ。フェラーリはチームの成績がすべてである。

 メルセデスは今年と同じニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンのコンビだが、ロズベルグに押され気味のハミルトンの来季の奮起が欲しい。ただ、ハミルトンをメルセデスに移籍させた功労者のロス・ブラウンがチームを離れることになり、ハミルトンにその影響が出なければいいが……。

レッドブルのリカルド起用には懐疑的

 あまりよく理解できないのがレッドブルとマクラーレンの人選だ。

 特にレッドブルは引退するマーク・ウェバーに代わり、セバスチャン・ベッテルのチームメートとしてダニエル・リカルドを起用した。しかし、このリカルドの実力がよく分からないので、私は本当にこの人選が成功だったのか否か、懐疑的だ。

 これまでのトップチームの人選は、少なくとも実績を上げたドライバー、あるいは多くの関係者が高く評価したドライバーの中から行われた。そして、そうした評価を得たドライバーは良い仕事をする。だが、リカルドがこれまでそうした評価を受けたかといえば、私は決してそうではないと思う。ウェバーと比べると、チームの戦力低下は明らかだろう。

 では、なぜリカルドなのか?
 レッドブル子飼いドライバーの中からドクター・マルコがピックアップしたに違いないが、“ウェバーのようにベッテルと問題を起こさない”ドライバーで、手持ちの中で最も優秀だったということだろう。

「だからメキシコ人は信用にならない!」

 マクラーレンはケビン・マグヌッセンを獲ったが、これはセルジオ・ペレスにほとほと手を焼いていたことが分かる。と言っても、ペレス自身ではなく、彼が持ち込む予定の『Telemexマネー』の未着という事態だ。
「だからメキシコ人は信用にならない!」とマクラーレンの関係者が言ったとか言わないとか。でも、かつてマクラーレンでアシスタント・マネージャーとして働いていたジョー・ラミレスほど素晴らしい人物はいなかった。彼はメキシコ人だ。

 恐らく、マクラーレンの首脳陣はマグヌッセンの起用が少し早いことは覚悟の上だろう。しかし、『Telemex』からの資金が約束通りに振り込まれないことでペレスに肩身の狭い思いをさせるより、放出して身の丈にあったチームで走らせる方が、彼のためにも良いと考えたに違いない。

 加えて、噂ではあるが日本企業のスポンサーも決まったそうだし。ペレスはそのおかげでフォースインディアに押し込まれることになりそうだが、マクラーレンのマグヌッセンより伸び伸びとしたレースをするのではないかと思う。

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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