エスポ後藤浩輝、有終のJCダートへ=佐藤哲三と“3人”で迎える集大成

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エスポワールシチーに騎乗する後藤浩輝。JCダートで有終の美を飾れるか 【netkeiba.com】

 昨年5月のNHKマイルCでの落馬負傷以来、1年半ぶりに復帰を果たした後藤浩輝騎手。復帰後初の重賞タイトルとなったのが、エスポワールシチーでの南部杯(10月)だった。エスポとのコンビで続くJBCスプリントも勝利し、ラストラン、12月1日のJCダートへ。かつての主戦で長期休養中の佐藤哲三騎手から託された大事な手綱。大仕事を前に後藤騎手の決意に迫る。(取材・文:花岡貴子)

「こいつとなら理解し合えるかも」

「エスポ騎乗の依頼を受けた直後は不安が大きかった」と後藤は明かす 【netkeiba.com】

 後藤は南部杯の騎乗依頼を受ける前から、エスポワールシチーという馬は“難しい馬”と感じていた。

「我が強くて難しい馬だという話は聞いていたし、レースを見ても哲三さんは一見、簡単そうに乗っているけど、その“簡単そうに見える”競馬をするのがどれだけ大変だろう、と思っていましたから。依頼を受けた直後は、うれしい気持ちより、どうやって自分が乗りこなすかという不安のほうが大きかった。まして、復帰直後の自分にそんな難しい馬を乗りこなせるのかと」

 その不安が大きく取り払われたのは、南部杯の追い切りで初めて調教にまたがったときだという。

「『こいつとならやっていける、理解し合えるかも』と。自分と性格的な波長が合わせられると感じました。まずは、ひと安心でしたね。エスポワールシチーは今年8歳。これだけ年をとっている分、変えられないものがある。一言で言えば、頑固。自分の中の動きのルールを持っていて、それをこっちが受け入れてあげないと向こうも心を開いてくれなくなる。老舗の職人さんのところに初めて行く新人レポーターのような気持ちというか(笑)。
 しかも、こっちは病み上がり。お伺いを立て、おだて、なかなか開いてくれない口を開かせる、みたいな気持ちで挑んでいった感じ。持ち上げすぎてもダメだし、どこかのタイミングで自分の気持ちをぶつけなければいけない。そんな“合いの手”みたいなタイミングを計るのに意識を集中していましたね」

佐藤哲「俺が乗ってるみたいだった」

復帰後初の重賞タイトルとなった南部杯は、後藤がGI初勝利を収めた思い出のレースだ 【netkeiba.com】

 南部杯では、それまで佐藤哲とエスポワールシチーとのあいだで交わされていた細かいルールを再現することに徹した。

「事前に哲三さんが教えてくれた方法をそのまま。パドック、返し馬の一歩目、ゲートの裏での歩かせ方、スタートの一歩目の操作方法……。ひとつでも飛ばしたり、順番を変えると馬の気持ちが萎えてしまう。そのルーティンは哲三さんとのあいだで完成されていた。そして、それを完璧に再現できたから結果が出たんだと思います。
 また、哲三さんが南部杯を見て『俺が乗ってるみたいだったな』と言ってくれたのには感激しました。『良かった、目指していたことがちゃんとできた』と思いました。本人に認めてもらえたのだから」

 盛岡競馬場で行われる南部杯は、後藤が最初にGIを制したレースだ。
「2000年にゴールドティアラで勝ったときも今回も、プレゼンターは(鈴木)淑子さんだった。お互い『あれから十数年経ったね』と喜びを分かち合いました。復帰直後に勝てたので、我ながらドラマチックだなと思いましたね。当日の盛岡競馬場はすごい大歓声。自分がもう一度、騎手としてやっていく中で、歴史をなぞるように盛岡で勝てたのは自分にいちばん似合っているな、と感じました」

 続くJBCスプリント。1400メートル戦はエスポワールシチーにとって初の距離だった。
「南部杯はお手本がありましたが、JBCスプリントは哲三さんを再現したくてもその材料がない。哲三さんにイメージを聞きましたが、今の馬場状態やコース形態は、哲三さんにはなかなかイメージが湧きにくい。だから、自分が思うプランを哲三さんに投げかけました。すると、哲三さんからも具体的にこんな感じで、というプランが出てきた。それを自分なりに消化して本番に挑みました」

 そのイメージが正解か、不正解か。こればかりはやってみないと分からない。
「まさにチャレンジでしたね。終わってみれば、そのイメージ通りでホッとしました。哲三さんと僕とで、意見やイメージを半々に作り上げた感じでした」

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