モチベーションはチャンピオンとお金!?=UFCファイター水垣偉弥に聞く

長谷川亮

子供時代に良く見ていた大相撲と時代劇

大学院で電子工学を専攻していた水垣。今の戦い方には参考になっていないとか!? 【スポーツナビ】

12月7日、オーストラリア・ブリスベンで行われる「UFC Fight Night 33」(12月7日・FOX SPORTS「FOX bs238」で11時から放送)に、4連勝を懸け参戦するUFC唯一の日本人ランカー水垣偉弥。インタビュー後編では“インテリジェント・スナイパー”とも呼ばれる、その来歴や人となりに迫ってみた。

――経歴面のお話をお聞きしたいと思います。大学院を卒業されていますが、専攻は何だったんですか?

 専攻は電気工学です。

――大学院での経験・専攻が何か役に立っていることはありますか?

 格闘技には全然ないですね(笑)。本当は大学を卒業して、バイトしながら格闘技をやりますって父に言ったんですけど、父が真っ青になっちゃって(苦笑)。それで出た結論が2年間大学院に行かせてやるからちょっと考えなさい、と(苦笑)。僕もバイトをしながらやるより、その方が練習もできそうだしいいかなと思って。

――どの段階でプロファイターになろうと思ったのですか?

 入門当初はただ見るのが好きで始めただけだったんですけど、意外と会長とか教えてくれる選手だったり周りからの反応が良かったので、はい。

――プロデビューは大学在学中に?

 はい。就職は考えてなくて、プロとしてやって行きたいと思ってました。

――海外で戦いたいっていうのはいつぐらいから思っていたんですか?

 プロになって修斗へ出始めたころ、雑誌を見てユライア(・フェイバー)とかがWECでやっていたんです。それでここでやりたいなと思って、それから海外志向になりました。

――高校時代まで剣道をされていたそうですが、これが役に立っていることはありますか?

 大学院の経験に比べると、剣道は比較的役に立っている感じがします(笑)。剣道って相手が出てくるところを叩いたりとかそういうのが大事なので、あまり剣道は強くなかったですけど、そういうカウンターのタイミング、相手が仕掛けてくる気配とか、そういうものを感じるのが他の選手よりちょっと敏感な感じはします。

――あとは相撲を見るのもお好きなのだとか。

 幼稚園ぐらいの時に千代の富士とかを見るのが好きっていう変わった幼稚園児で、相撲で友だちを投げ飛ばしまくっていた記憶があるんです。でも、その相撲の経験は意外と身体の使い方っていう面で役に立っているのかなって最近思いました。意外とあれはよかったんじゃないかって。今思うと、ですけど。

――時代劇を見るのも好きだったなんて話をお聞きしたのですが。

 時代劇をよく見ていたのも幼稚園から小学校低学年です。何でかは分からないんですけど、幼稚園ぐらいから水戸黄門とかを見ていました。それで時代劇が好きだったので、じゃあやらせようかみたいな感じで親が剣道の道場へ連れて行ったらしいです。何で好きになったのかは今も謎です(笑)。

――でも今になってみると、そうやって剣道や相撲の経験が生きている部分があると。

 そうですね、結構つながっている気がします。

「打撃が得意なのでUFCでも勝負できている」

――格闘技を好きになったのはいつからなんですか?

 格闘技を好きになったのは中学生ぐらいです。小学校の時はプロレスが好きで結構見ていました。友だちに1人すごいマニアの奴がいて、そいつがプロレスから格闘技に趣味が移ったんです。ちょうどPRIDEが始まったのが中学ぐらいで、それでPRIDEとか修斗を見始めて、最初に「この人カッコいいな」と思ったのは(佐藤)ルミナさんです。

――そのころから「いずれやるなら修斗」っていう思いがあったんですか?

 PRIDEとかはデカいんで、自分には無理だなって思うところがあって、それで総合格闘技=修斗みたいなところがあったんです。軽量級とかボクシングみたいな感じでやってるのは修斗しかないっていう認識だったので、自然と修斗っていう感じでした。

――UFCでは日本人ファイターがなかなか結果を残せていない厳しい現状がありますが、ご自身が活躍できている理由はどういうところにあると思いますか?

 UFCとか海外のMMAを見ると、MAXを10とすると寝技のレベルは8とか9で組み技のレベルは相当あると思うんです。でも、打撃のレベルは6とか7とか、トータルのバランスから考えると、MAXに対してまだ打撃の方が低い気がするんです。自分はその打撃が得意なので、寝技をしのいで逆にそこで勝負できるっていうところで、有利に働いてるんじゃないかって思っています。逆に組み技が得意な選手は、苦労するんじゃないかなっていう感覚があります。

――水垣選手から客観的に見て、UFCのバンタム級でこの選手に注目して見たら面白いという選手は誰になりますか?

 やっぱりユライアは特別な存在っていう感じはあります。

――実際に対戦してみていかがでしたか?

 最初はいい感じで立ち上がれたんですけど、一瞬の極めちゃう力とか持ってる選手だなっていうのは、終わった後で考えるとありました。

――UFCの他の階級というのは見たりしますか?

 普通に好きだから見ていて、好きなのはフランク・エドガーとかベンソン・ヘンダーソンです。エドガーの試合はいつも苦しい状態になってからの巻き返しで折れない心というか、そういうところはほんとに憧れる感じがあります。自分も試合でダウンとかしちゃっても、ああいう風に最後まで戦いたいなって、そう思える選手です。70キロでやっていた時はほかの選手より明らかに小さいのに相手を投げ飛ばしたり、そういうロマン的なところもありますし。

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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