“完ぺき”ではなく“妥協”のJC連覇=最強証明ジェンティル来春再びドバイへ

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名手の腕、女王の底力

「次も喜んで乗りたい」とムーアも女王ジェンティルドンナの能力を絶賛だ 【写真:中原義史】

 日本の競馬ファンにとってはスノーフェアリーとのコンビが印象深い30歳の若き名手。石坂師から出されたオーダーはたった一言、「人馬のリラックスがあれば、それでOKだ」。ではその言葉を受けて、ムーアはどう勝利に導いたのか。

「特に作戦はなかったんですが、結果的にペースがすごくゆっくりで他の馬も折り合いに苦労していた。自分もジェンティルドンナを1コーナー過ぎくらいまでは手の内に入れていたんだけど、ペースが遅くなってからはハミを持っていくような気配だったので、ここで無理に下げると絶対にいいことがないと思って、妥協して少し前に行かせました」
 完ぺきな騎乗でもっての勝利、というわけではなかった。事実、「考えていたよりも前の位置になって、仕掛けていくのも200メートル早くなってしまった」と振り返ったムーア。しかしながら、折り合いを探るギリギリの中で馬としっかり会話を交わし、ケンカをせずに“最良の妥協点”に落とし込む――この一連の作業を初コンビの相手にすぐさまやってのけてしまった腕は、さすがというべきだろう。

 そして、「200メートル早くなった」仕掛けでなお、最後まで他馬に先頭を譲らなかったジェンティルドンナの底力は、石坂師の言葉を借りれば「最強馬の1頭だと示した」に十分すぎるほどのパフォーマンスだった。これまでの馬と比較するのは嫌いだけど、と前置きした上でムーアが語った。
「日本のファンのみなさんにはスノーフェアリーが印象に残っていると思いますが、優秀な牝馬の共通点は、すごく賢くて、反応が良くて、ギアチェンジができて、勝つんだという闘争心を持っていること。ジェンティルドンナはもちろん、その全部を持っている。次も騎乗依頼が来たら、ぜひ、ぜひ、喜んで乗りたいですね(笑)」

来春ドバイ挑戦が濃厚

来春ドバイ挑戦へ、今度こそ日の丸を掲げたい 【写真:中原義史】

 ジェンティルドンナの今後について、石坂師は「ジャパンカップを勝ったら少し休ませたいと思っていたので、自分としては有馬記念はほぼ出走しないと思っています。来年からまた大きなレースを目指していきたいです」と明言。正式に決まったことではなく、まだ計画段階という前提ながら、「ドバイに行くことになると思う」と話した。

 日本が誇る国際ビッグレースを連覇した女王にとって、あと足りないものがあるとすれば、それは海外でのGI勝利という勲章。来春、日の丸をまとった貴婦人が再びドバイの地を踏む。今度こそ世界中のスポットライトを一身に集めたい。

<了>

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