なぜ36歳ママさんランナーが勝てたのか=千葉真子氏が横浜国際女子マラソンを解説

構成:スポーツナビ

マラソンには技術だけでなく、経験も大事

今春にプロとなった野尻は、地元・富山で独自のトレーニングに励んでいる 【写真は共同】

――マヨロワ選手は自己ベストが2時間23分52秒と、今回出場した日本人選手と大きな差はありません。結婚と出産を経て、36歳になった今も強さを発揮しています。彼女から学べることはありますか?

 私自身も、マラソンを5回くらい走って、初めて「もしかして、これがマラソンなのかな?」というのが徐々に見え始めました。マラソンは、つかみどころがなくてものすごく難しい。マヨロワ選手もマラソンを始めたころは、調子が良くて前半に飛ばしてしまったレースも多かったそうです。どんなトレーニングを積んだのかを尋ねても、彼女は「経験なんです」と言います。走りの技術ももちろん必要ですが、経験もマラソンには非常に大事になってくるということですね。

――マヨロワ選手のように、自分のスタイルを見つけるのは難しいのでしょうか?

 野尻選手と大久保絵里選手(ミキハウス)は、この春からプロとして新しいチャレンジをしています。樋口選手も、今回は長い距離を走り込むのではなくスピード練習をたくさんやったとのことでした。みんな、まだ自分の走りを模索中なのかなと思います。

――後半にペースを上げる戦略は、日本人選手でも取り入れられるものでしょうか?

 おそらく日本人の場合は、最初から最後まで一定のペースでいった方が、力を発揮できる人が多いのではないかと思います。ただ、世界の主流は後半にペースをあげるレースになってきていますので、日本人選手もそれを踏まえた練習が必要でしょう。
 また、今回のマヨロワ選手の優勝タイムは2時間25分台ですが、今季の世界ランキングは10人中9人がアフリカ勢で、トップの記録がリタ・ジェプトゥ選手(ケニア)の2時間19分57秒です。日本のレースも大切にしてほしいですが、世界での戦いを見据えると、海外のレースに挑んでいく必要もあると思います。

長く競技を続けられる環境作りを

――マラソン界は高速化が進んでいます。日本人選手が世界で勝つためには?

 日本はまだ層が薄い印象です。スピードレースだと日本人はかなり苦戦すると思います。ただ、この後の五輪はリオ、東京と暑さの中でのレースが続きます。その中でメダルを目指すのであれば、日本人もまだまだ食い込んでいけると思います。

――今回のレースを見て、あらためて日本女子マラソン界に思うことがあれば教えてください。

 海外では、結婚・出産を経ても、40歳くらいまでは現役選手としてやっていけるという認識があるそうなんです。マヨロワ選手もそうですし、8月のモスクワ世界陸上でも、37歳のバレリア・ストラーネオ選手(イタリア)が銀メダルでした。日本人の中でも、プロになった野尻選手や大久保選手のように、いろんなやり方を求めて走る選手が出てきました。長く陸上をやるという意味では、こういった選手をサポートするスポンサーさんが名乗り出てくれることもありがたいですね。日本でも、40歳くらいまで競技を続けられる環境が少しずつ整ってきているのかなと思います。

<了>

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