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なぜ36歳ママさんランナーが勝てたのか
千葉真子氏が横浜国際女子マラソンを解説
横浜国際女子マラソンはマヨロワ(左)が初優勝。36歳のママさんランナーが勝てた理由は!? 右は2位の野尻あずさ
横浜国際女子マラソンはマヨロワ(左)が初優勝。36歳のママさんランナーが勝てた理由は!? 右は2位の野尻あずさ【写真は共同】

 第5回横浜国際女子マラソンが17日、神奈川・山下公園を発着点とするコースで行われ、36歳のアルビナ・マヨロワ(ロシア)が2時間25分55秒で優勝した。日本人最高の2位には2時間28分47秒をマークした野尻あずさ(ヒラツカ・リース)が入った。3位はジェシカ・アウグスト(ポルトガル)で2時間29分11秒。昨年2位の那須川瑞穂(ユニバーサルエンターテインメント)は2時間30分27秒で4位に終わった。


 スポーツナビでは、2003年パリ世界陸上マラソンの銅メダリストで、マラソン解説者の千葉真子さんに、レースのポイントなどを聞いた。

持ち味生かしたマヨロワが作戦勝ち

――レースをご覧になっての感想を教えてください。


 前半と後半で順位が目まぐるしく変動して、勝負としては非常に見応えがありました。マヨロワ選手の優勝は、長年の経験による作戦勝ちですね。もし、彼女がペースメーカーについていたら、展開はまた違っていたかもしれません。今回は、前半に力をためて後半に爆発させるという、自身の持ち味を生かした作戦がビシっとはまりました。


――2位に入った野尻選手の走りはいかがでしたか?


 彼女は今年の春からプロになり、練習方法を変えました。地元・富山の立山連峰で、山中や石畳の登山道といった不整地を走っているようです。中でも変わっているのが、12時間走などの動き続けるトレーニング。実業団ではなかなかやりません。体の内面や脳の環境を改善したり、回復させる目的で取り入れているそうです。さらに、以前より肩の力が抜け、上下動の動きも減って洗練された走りになったと思います。本人は「走ってみないとこのやり方があっているのか分からない」と言っていましたが、今回、日本人トップの2位になり、ある程度の結果が出ました。ゴール後には清々しい笑顔も見られましたので、本人にとっても、次のレースにつながるレースができたという自信になったと思います。今回は上手(マヨロワ)がいましたが、16年のリオデジャネイロ五輪を目指す過程としては、良いステップアップのレースになったと思います。


――前回2位の那須川選手は4位に終わりました。


 去年と比べて40キロ走の回数が少なかったということで、レース前会見で本人も話していたように、脚作りに不安があったようです。それがモロにレースに出てしまいましたね。呼吸が苦しいというより、脚がだるくて前に進んでいないように見えました。

想定外に速かった後半の追い上げ

――レースを振り返りたいのですが、前半は、那須川選手、正井裕子選手(日本ケミコン)、樋口紀子選手(ワコール)の先頭集団と、海外招待選手を中心とする第2集団に分かれました。


 今回のレースでは、ペースメーカーの設定タイムが5キロ17分20秒でした。昨年の16分55秒と比べてだいぶ遅いので、大集団になってレースが進むと予想していました。市民ランナーの方までもくっついてくるのではないかと思っていましたが、意外にも先頭につく人が少なくて驚きました。つかなかった理由としては、気温が少し高かったのを危惧したか、マヨロワ選手のように後半上げていく作戦だったかのどちらかではないかと思います。


 その中で那須川選手は、前半は余裕がありましたし、優勝を狙っていたので「ついていって当然」というのがあったと思います。正井選手は、もともとトラック中心の選手でスピードがあるので、多少なり余裕があったでしょう。また、チームが来年3月で休部するので、チームのユニホームをなるべくテレビに映したいという、プラスアルファの思いもあったと思います。


――野尻選手は、序盤はゆっくり入って7キロ過ぎで先頭集団に追いつきました。


 これまでの野尻選手は、気持ちが前へいってしまい、先頭を引っ張るようなレース展開が多くありました。ただ、今回はレース前の会見で「後ろからみんなを見渡すようなレースをしたい」と話していましたので、後方からレースを眺めるという意味合いがあったのでしょう。


――20キロでペースメーカーがレースから外れ、野尻選手と那須川選手が一騎打ちになりました。2人の走りに変化はありましたか?


 那須川選手は、あまり前に出て引っ張るという意思が感じられず、「できれば野尻さんの後ろについて力をためたい」という走りでした。それに対して野尻選手は、普段から一人で練習をしていることもあり、前を引っ張ることが負担になっているようには見えませんでした。自分の世界に入り込み、ペースメーカーが作ってくれたリズムを保っていたように感じます。


――その後、マヨロワ選手が一気に差を詰めてきました。


 マヨロワ選手は、中間点を過ぎてもかなり余裕があったのでしょう、手元の時計で43秒あったトップとの差を、わずか7キロで一気に縮めてきました。ためていた余裕を爆発させたような走りでしたね。実は、中間点まではコーチが設定タイムを決めていたようなんです。ただ、「半分を過ぎてからは自分の判断で行きなさい」という指示だったと聞いています。


 先頭集団のペースはそんなに落ちていません。ただ、マヨロワ選手が20〜25キロの5キロを16分50秒ほどで走りました。それまでトップの2人は17分20秒ほどで進んでいましたから、そこで大きく追い上げたということになります。

 野尻選手も那須川選手も、マヨロワ選手の追い上げも多少は想定していたと思います。ただ、ここまで勢いよく詰めてくるとは考えてなかったでしょうね。来るとしても、35キロあたりかなと思っていたのではないでしょうか。


――28キロでマヨロワ選手が野尻選手に追いつきました。野尻選手も追いすがる姿勢を見せましたが、ついていくのは難しかったのでしょうか?


 1キロで6秒くらい詰めてきたわけですから、走りが違いましたよね。マヨロワ選手の走りは地に足がついて、しっかり地面を捉えた走りです。ベテランの貫禄やたくましさを感じました。それに比べて野尻選手は、力強さが足りないかなと思いました。

 後半の1番苦しいところで離されてしまいましたので、前がペースダウンしないと、もう1度前を追っていくのは難しいでしょうね。並ばれるのは仕方ないとしても、その後で離されずに2段階、3段階のスパートができるスピードが備わっていないと、優勝は難しいと思います。

構成:スポーツナビ

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