一度は引退…久保英恵 五輪への15年=アイスホッケー女子、帰ってきた天才

沢田聡子

強豪スイスからゴール、大きな自信に

11月7日〜10日の五カ国対抗戦でも久保(左)はエースとしての実力を存分に発揮した 【田口有史】

 最終予選後、合宿や遠征を経てきた日本代表は、7〜10日・新横浜で行われた女子アイスホッケー5カ国対抗戦で五輪出場国を含むランキング上位の4か国と対戦した。西武プリンセスラビッツの主力として3日まで行われていた日本リーグの優勝に貢献している久保を、代表チームスタッフは2戦目(対スロバキア)のメンバーから外し、休養させた。対スロバキア戦を観戦した久保は、五輪出場国であるスイス、ドイツとあたる3、4戦目について「勝たなければいけない」と言った。
「五輪に向けて、今回の大会で勝てば自信になりますし、日本のイメージが強くつくと思うので、結果にこだわっていきたい」

 出場国の中では世界ランキング最上位(5位)のスイスと対戦した3戦目、久保は2点目のゴールを挙げて2−0で勝利。ゲームベストプレーヤーに選ばれた。
「今大会で、五輪に出場する国に勝つことが目標だった。ここで勝ったことで日本のイメージができたので、良かったと思います」
 試合後、カメラの前でそう話した久保は、自身のプレーについては「90(パーセント)ぐらい」は戻ってきた、と言った。

五輪は辿り着いただけで満足できる舞台ではない

ソチでも久保(中)の大きな“スマイル”は見られるか 【田口有史】

「得点を求められているので、シュートの精度をもっともっと上げて、チャンスを決めきれるようなプレーヤーになりたいですね」 
 それでも決めるべきときに決める。チャンスをものにできるのは何故なのか、という問いに、久保は豪快に笑いながら答えた。
「何ですかね。持ってるんですかね」

 しかし翌日、日本はソチであたることが決まっているドイツに1−3で敗れる。ゲーム終了間際に仕掛けた6人攻撃(GKをベンチに上げ、代わりにFWを一人増やして行う)で挙げた唯一の得点をアシストした久保だが、前日とは全く違う固い表情でミックスゾーンに現れた。
「3−0の状況で、最後1点6人攻撃で点数が入れられたということは、まだ可能性はあるのかなと思います」と収穫点を挙げた一方、「プレッシャーをもう一歩速くいければ、ドイツにいいようにパックを回されたりしなかった」と反省点を挙げ、表情を崩さないまま足早に会場を後にした。

 久保が自身を「持ってる」と言い切れる背後には、華やかな笑顔からは窺えない競技人生が潜んでいる。代表発表はこれからだが、久保英恵にとって五輪は、辿り着いただけで満足できる舞台ではないはずだ。

<了>

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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