さらなるレベルアップを―浅田真央の挑戦 少しずつ積み重ねた佐藤コーチとの信頼関係

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佐藤コーチが求めているもの

スピン、ステップ、スパイラル。ジャンプ以外の評価が高いのも浅田の強みだ 【写真:ロイター/アフロ】

 浅田を見守る佐藤コーチの目も温かい。しかし、より高みを目指しているだけに指摘は厳しい。自己ベストをマークしたFSの演技については、「ポロポロとミスがあるので、決して満足できる状態ではないんですけど、いままでと比べれば滑れているかなと思うので、それは良かったです。あと少し正確にやれればいいなと思っています」と、注文をつけた。

 佐藤コーチが求めているのはスピードのある質の高いジャンプ。だが、速すぎてもいけない。トリプルアクセルの精度を上げるためには「彼女の体力に一番合ったスピード」で跳ぶ必要があるのだという。
「練習でも確率が高まってきていますし、あとちょっとできればいいなと思うんですけど、力が入ってしまうんですね。本番になると興奮状態になって、練習の時より速いスピードで入っているから、やっぱり振られてしまう。原因としてはそこが一番大きいと思います」

 こうした課題を解決するために、佐藤コーチは練習方法を変えることを検討している。試合を想定し、1回の演技に懸けるやり方だ。練習時から本番を意識した構成にすることで、練習と試合の差を埋めようとしているのである。

 浅田も佐藤コーチの練習方法には全幅の信頼を寄せている。
「試合では何が起こるか分からないし、そういうことを想定した練習をしていこうと思っています。不安をなくすために練習をしているので、練習をしていけば大丈夫という信頼はあります」

トリプルアクセルを2回入れる可能性

挑戦を続け、手応えを感じながら、集大成の時へ―― 【坂本清】

 NHK杯のFS後、浅田は12月のGPファイナルか全日本選手権でトリプルアクセルを演技中に2回入れる可能性を示唆した。佐藤コーチには相談済みで、「スケートアメリカのとき、信夫先生と一緒に練習しているうちにアクセルの調子が良くなっていき、すごく簡単に跳べるようになっているので、これなら入れてもいいんじゃないかと話をしました」と、笑顔を見せた。まだ1度も練習はしていないそうだが、「80パーセントぐらいはできると思っています。自分としてはバンクーバー五輪のときよりも調子が良いですし、できるという自信があります」と力強く語っている。

 バンクーバー五輪では、SPとFSで計3回のトリプルアクセルを成功させた。あれから間もなく4年が経過しようとしているが、進化した姿を見せるには当時を超える演技を披露するしかない。「FSはこれからブラッシュアップをするので、さらにレベルアップした『ラフマニノフ』を滑ることができると思います」と、浅田も手応えを感じている。

 この3年間は徹底的に基礎を見直してきた。そのなかで苦しんだこともあったが、いまようやくその基礎が身についてきて、大輪の花が咲こうとしている。
「ジャンプや技術の面で自分はもっと上を目指せるんじゃないかなと思っています。上のレベルで練習していくのが楽しいですし、それを試合で出せたらもっと最高です」

 12月にはGPファイナルと全日本選手権が控えている。今季限りでの現役引退を表明している浅田にとっては、両大会への出場も最後となる。ソチ五輪の出場権も懸かってくるが、それ以上に飽くなき向上心を持った浅田がどこまでレベルアップを遂げるのかが楽しみでならない。

<了>

(文・大橋護良/スポーツナビ)

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