高橋大輔が見せたここ一番の強さ 男を見せた織田、決断した無良=NHK杯男子

構成:スポーツナビ

プログラムを戻した無良 今後の仕上がりに期待

プログラムを戻した無良。今後の仕上がりが楽しみだ 【坂本清】

 無良くんはやはりプログラムを以前のものに戻しましたね。それが正解だったかどうかはまだ分からないですが、彼の個性にあったプログラムなのでとても良かったです。4回転も着氷し、トリプルアクセルもやはり素晴らしかったです。後半の2つのジャンプに失敗してしまったのが点数が伸びきれなかった理由です。トリプルアクセルは軸が傾きましたがそこをきちんと着氷させるのも彼の技術の高さですね。

 前のスケートカナダが終わってから2週間もないですが、短期間でここまで合わせてきたことがすごいです。いくら昨年まで滑ったプログラムとは言っても、去年のプログラムからジャンプのコースもスピードも変わります。しかも今回の場合は、洋風から和風のプログラムに戻したんですから雰囲気もかなり違います。それをやりきったのがすごいですね。これを練習していけばより良くなるのではないでしょうか。彼の高いジャンプには会場からも「オオー」と歓声が上がっていました。

 プログラム変更はよく決断したと思います。フィギュア選手にとって、シーズンプログラムを作るのが一番大変なんです。プログラム作成にかかる時間は人それぞれですが、大体5〜6月に作って、7〜8月に手直しをして、9〜10月に最終確認をしてシーズンに向かいます。3月の世界選手権が終わったら振付師さんの予約を取ったり。シーズン中に次のシーズンを考える事もあります。それくらいかけて準備するので、前のプログラムに戻す決断がなかなかできなかったのもよく分かります。これを全日本までに仕上げたら楽しみになると思いますね。

 今後へ向けては技術は世界のトップの力を持っていますので、プログラムコンポーネンツを詰めていく事が大事だと思います。今回は急なプログラム変更があったので、滑らかさが出ればもっと点数は上がるのではないでしょうか。

4回転の失敗が全体に響いたフェルナンデス

日本でも人気のフェルナンデス。五輪では表彰台を狙う存在だ 【坂本清】

 今回表彰台候補に挙げられていたフェルナンデス選手。彼は4回転を2種類持ち、成功率も高い、表現力もある選手ですが今回は残念な結果になりました。
 ショート、フリーともに冒頭の4回転に失敗しましたが、4回転ジャンパーにとって、4回転のミスは大きいです。ルール上、1つの演技で3回転は2回までしか跳んではいけないのですが、4回転予定だったジャンプが3回転になってしまうとプログラムに影響が出ます。それにジャンプを跳んでいる本人は、4回転の回転が足りなかった時に、それが4回転ではないことは分かるのですが、3回転なのか2回転なのかは分からないんです。その状態で、それ以降のどのジャンプを何回転にしてコンビにして……と頭の中で色々と考えてしまうと、表現することまで頭が回らなくなってしまう。後半のジャンプがダブルになったのもそれが理由なんじゃないかと思います。3回転は2本しか跳べませんが、2回転は何回跳んでもいいですから。

 今日の結果で、GPファイナル進出の6人に、パトリック・チャン(カナダ=世界選手権覇者)、羽生(結弦)くん、高橋くん、町田(樹)くん、中国のハン・ヤン、そして織田くんが有力になってきました。福岡でのGPファイナルでぜひ会いたいですね。

<了>

中庭健介/Kensuke Nakaniwa

中庭健介さんがNHK杯男子を解説 【スポーツナビ】

1981年10月15日 福岡県福岡市生まれ。ダイナミック且つ繊細な演技で多くのファンを魅了した、日本フィギュアスケート界を代表する選手の一人。8歳からフィギュアスケートをはじめ、全日本選手権大会での入賞経験も多数(04年2位、02年、05年3位ほか)、GPシリーズなどの国際大会にも数多く出場し、29歳まで現役を続けた。2010−2011シーズンを最後に現役を引退。現在は地元福岡で選手育成に力を注いでいる。

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