父・力道山から伝承した「プロレスの力」=百田光雄から息子・力へ――

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トペ・スイシーダは「今回もチャンスがあれば」

2003年に行われた没後40周年追悼興行では、トペ・スイシーダを披露するなど奮闘した百田光雄(右) 【スポーツナビ】

――本来であれば息子さんのデビュー戦を終えて一息つきたいところだと思いますが、今回はメインイベントでさらに過酷な戦いが待ち構えています。

 それもプレッシャーなんですよね。対戦相手は健介選手、初代タイガーマスク選手、藤原組長ですけど、戦ったことがあるのは健介選手だけなんですよ。

――初対戦となる初代タイガーマスク選手と藤原選手の印象は?

 初代タイガーマスク選手は技巧派ですよね。藤原組長は関節技が専門だから、手や足を取られないようにしないと。試合は見たことあるし、やることも把握しているつもりなんで。初対決だし、楽しみな相手ではありますよね。

――秋山選手と高山選手という心強いパートナーがいるとはいえ、体格的には一番厳しいでしょうし、唯一の1日2試合となります。それでも「楽しみ」と言えるのは、やはりこれまでの経験があるからでしょうか?

 過去にトップと言われるレスラーとは何人もやってきたんで。特に小橋建太選手とは若い時から対戦して、トップになってからも試合をして、胸をザクザクにさせられたこともあるしね(苦笑)。小橋選手と健介選手は基本的に似たタイプですし、チョップにしても小橋選手の攻撃が耐えられたんだから、健介選手のチョップもどうにかなるかなという気はしています。僕は年齢も高いし、体格的にもジュニアですけど、父が亡くなってから区切りとなる半世紀が経って、まるっきり父を知らない選手ばかりでやらせるわけにはいかないですから。血を継いでいる僕が入るからこそ、没50年の記念になるかなと思います。みんなキャリアがあるから、いい試合になるのは当然。ガンガン来るだろうし、僕もできる限り頑張りたいですね。

――10年前の没40年記念興行(2003年12月11日、後楽園ホール。百田&菊地毅vs.丸藤正道&KENTA)ではトペ・スイシーダも飛び出しましたが、今回はどうですか?

 もう、65歳を過ぎているんだよ(苦笑)。ヒザが悪くなっているから、走るスピードが落ちているんです。トペはスピードがないと威力も出ないし、自分のダメージが大きくなるんですよね。チャンスがあればやりたいと思うけど。65歳でやったらそれはそれですごいからね。だけど、普段は単なるジジイだけど、リングに上がると気力が出て、動きもいいと言ってもらえるので。実際にリングに上がった時に体が動くのは事実ですから。あと2カ月間があるので、どうにかコンディションを整えられたらと思います。

――百田さんはずっと素晴らしいコンディションをキープしていますよね。

 あんまり変わったとは言われないんですけど、自分の中にはあるんですよ。例えば、タックルを受けて受け身を取る時。次の瞬間はパーンと身体を起こすんですけど、そのタイミングが半テンポ遅くなっているなと感じるんです。まあ、これはしょうがないでしょう(苦笑)。今でも20代や30代の動きができたら不思議ですよ。自分の身体の衰えを意識しながら、体力的には落ちないように練習をキープしているので、それを保っていい試合をお客様にご提供できればなと。やっぱりプロですから、お客様にちょっとでも喜んでもらえればいいなと思います。

――必然的に百田さんに声援が集まる展開になるでしょうね。

 相手の3人はガンガン攻めてくるタイプですから。以前に小橋選手と試合をやった時に、あの小橋選手にブーイングが飛んだんですよ。やっぱり僕が高齢だというのを皆さんわかっているので(苦笑)。だけど、高齢と言っても藤原組長とは僕よりひとつ下なだけだから。初代タイガーマスク選手は…55歳か。9歳違うんだ。だいぶ若いなあ(笑)。もちろんパワーで勝てるとは思ってないけど、それを耐えて切り返せれば…。そこが一番のポイントだと思うね。たぶん僕が息絶えなければ、試合が終わった後にコメントをして終わりという形になると思うんだけど、それができるかどうか(苦笑)。這ってでもやらないといけないと思ってますけど。

――。関節を極められ、チョップで胸は真っ赤で、蹴りで足を引きずるような状態になっても、最後は締めると。

 まあ、若いころからケガになれているんで。結構しぶといんですよ。

未来に繋がる「プロレスの力」

――ひとりのレスラーとして今後についてはどう考えていますか?

 ノアを辞めた時に引退試合をしようという気持ちはあったんです。だけど、今度息子がデビューするじゃないですか。彼がある程度の形になるまでは続けなきゃいけないかなという思いはちょっとありますね。もちろんどれだけサポートできるかはわからないけど、ちょっとでも自信を持つまでは側にいた方がいいかなと思うんで。最終的には息子とシングルマッチをやって、負けて引退…とかさ(笑)。そういうことも有り得るわけだから。相手の技を受けて、そこから返せるかどうかがプロレスの一番の見せ所。受ける体力がなくなった時点で僕はダメだと思います。受け身を満足に取れなくなったら辞めるべきだと思うし、それはレスラーとしてのポリシーですよね。

――力選手のデビューが決まって、モチベーションは上がってますか?

 普段は下がってますよ(笑)。だけど、練習すると上がるんです。今日は軽めにしておこうかなと思っても、ビシッとやらなきゃいられないタイプなので、やっている間に気合いが入っちゃうんだよね。リングに上がって試合をする時も一緒で、グッと精神的に高揚してくるというか。だけど、練習も試合もしていない時は、単なるジジイです(苦笑)。

――興行タイトルは「プロレスの力」ですが、改めてその力を感じられる興行になりそうですね。

 プロレスを見て、楽しんで、喜んでもらうのがベストだと思うので。今はリングでの戦い以外のところでプロレスが伸びている部分があるじゃないですか。でも、僕はリングの上で身体と身体をぶつけ合って、お客さんに声援してもらうのがプロレスだと思っているので。単純に言えば、父の時代のプロレスが一番わかりやすいかなと。

――この時代にあえてシンプルなプロレスを見せたいと。

 父が自分よりデカい選手をなぎ倒す姿を見て、皆さんが興奮していたので。父も100キロ以上ありましたけど、それでも外国人と比べれば小さかったですから。そういう相手と試合をして、「小さくてもあんなに頑張れるんだ」とお客さんに夢を与えられるのがプロレスなので。不景気な今の時代に、ちょっとでもプロレスを見て、「よし、俺も頑張るぞ」と力になってくれれば。

――百田さんの試合を観て、励まされる世代の方もいらっしゃるはずです。

 団塊の世代に「65歳のオッサンがこんなに頑張れるんだ!」というのを見ていただければベストだと思います。これまでのダメージがないとは言わないですけど、それでも自分でカバーしてね。「もう辞めておけよ」と言われるようになったら辞めようという気持ちは常にあるんだけれど、リング上に上がるとまだまだ動けますから、見に来てくれたお客さんにいい形でアピールできればと思いますよ。

――百田さん自身もプロレスに力をもらってきたわけですしね。

 それはありますね。父が生前に試合をしているのを見てましたから。僕の記憶は、父が相撲を廃業して、プロレスラーになるぐらいから始まっているんです。父がレスラーになって、人気が上がっていく過程をずっと側で見てきて、僕も息子と言うより、ひとりのファンとして父を見ている部分が強かったんです。それを力にしてここまでやってきたところはありますよ。父に近づけるとは思っていなかったけれども、ちょっとでも近づきたいと気持ちでやってきて。

――当日は大きな百田コールが巻き起こるんじゃないでしょうか。

 いまだに僕に声援してくれるお客さんがいて、また大きい声でコールしてくれるんだから(笑)。あれを言ってもらえると自分のテンションが上がるので、そうすると「よし!」と思えるから。そう思えるうちは頑張りたいなと思います。当日は僕が選んだ父の名勝負の映像を場内で流す予定なので、それも楽しみにしてもらえたらなと。力道山の時代以来久々に会場に来る方もいるでしょうし、団塊の世代の方も多いと思うので、そういう方にもう一度プロレスに興味を持ってもらって、今後に繋げていきたいですね。もう一度、プロレスを盛り上げたいと思います!

(構成・文:村上謙三久)
■力道山没50年追悼記念興行『プロレスの力』
12月16日(月)東京・後楽園ホール 試合開始19:00

<スペシャル6人タッグマッチ>
百田光雄、秋山準、高山善廣
藤原善明、初代タイガーマスク、佐々木健介

<第1試合 “力道山3世”力のデビュー戦>
 百田光雄、力
折原昌夫、NOSAWA論外

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