山中慎介の挑戦者は“弁護士の卵”=「“神の左”をかわす自信はある」

長谷川亮

半年後にはメキシコで弁護士資格を取得

山中に挑戦するアルベルト・ゲバラは半年後には自国メキシコで弁護士資格を取得予定という知性派ファイター 【スポーツナビ】

 ボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチ(10日、東京・両国国技館)で王者・山中慎介に挑む同級8位のアルベルト・ゲバラ(メキシコ)が5日、都内・帝拳ジムで公開練習を行った。

 ゲバラは19戦18勝(6KO)1敗の戦績を持つ23歳で、世界タイトルには昨年12月、レオ・サンタクルス(メキシコ)が持つIBF王座に初挑戦。判定負けに終わったが、強打で無敗のサンタクルス(当時23戦22勝1分)を相手に判定勝負まで持ち込み、「よけるのがうまく、足を使うのもうまい。今までで一番倒しにくい相手」と山中も1日の公開練習でゲバラを評している。

 自国では半年後に弁護士資格を取得予定で、現在も週2回学校に通うインテリファイターであるゲバラは、逆に山中を「パワフルでいいボクサー。パワフルなボクサーにはクレバーに戦わないといけない」と分析。「いつもクレバーな戦いを心掛けている」「インテリジェントな試合をしたい」とも語っており、熱く打ち合うのではなくフットワークを使った知的な戦いが持ち味だ。

公開練習では基本に忠実なボクシングを披露

 この日のゲバラはすでにランニングとフィジカルトレーニングを済ませたとのことで、公開練習はサンドバッグとシャドーボクシングの軽めのメニュー。独特なリズムとフォームで変則的な選手も見られるメキシカンだが、ゲバラは丹念にジャブを突き、そこから右ストレート、左フックを綺麗に繰り出す、基本に忠実なボクシング。近距離では左フックの上下打ちにアッパーを織り交ぜ、連打をまとめるとその後はステップでサンドバッグから距離を取り、自身のスタイルを垣間見せた。

 山中対策には「サウスポーとのスパーリングを重点的にやり、足を使ったボクシング、打ち合いの部分であったりをサウスポーと積んできました」とゲバラはいい、「ゴッド・レフト(神の左)」と呼ばれる山中の必殺パンチにも「いいニックネームですね」と笑顔を見せ、「彼の左をかわす自信はある。左を打ってきたらカウンターで迎え撃ちます」と全く怖れた様子を見せなかった。

 容易に接近・踏み込みを許せば、山中の左ストレートが飛んでくる展開が予想されるが、ゲバラは「先に手を出してイニシアチブ(主導権)を取っていきたい」と試合展開を思い描く。

 山中戦で世界王座、そして半年後の弁護士資格と、異色の“二冠”を狙う知性派ファイター・ゲバラ。はたして山中の“ゴッド・レフト”とそのプレッシャーを前に、クレバーな戦いを遂行できるのか。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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