日本一に導いた楽天・嶋のファインプレー=マー君攻略も巨人が優勝できなかったワケ
エース・田中で第6戦を落としながら日本一に輝いた楽天。巨人に最後まで流れを持っていかせなかった楽天の勝因とは? 【写真は共同】
スポーツナビでは、元楽天の山村宏樹氏、元巨人の橋本清氏に、日本シリーズの戦いを、それぞれのチームの立場から特別解説してもらった。巨人は絶対エース・田中将大を攻略しながらなぜ優勝できなかったのか。楽天が優勝できた勝利の立役者とは――。
山村氏「流れを再び引き寄せたマギーのタイム」
巨人は前日、田中投手に打ち勝ち、波に乗るところで、初回に畳み掛けられなかったのは結果的に痛かったですね。1死一、二塁の場面で、阿部慎之助選手がピッチャーゴロに抑えられましたが、あそこで1本出ていたら、流れは一気に巨人に傾いたと思います。
また、打線ですが、先手先手で得点できたのは良かったですね。特に3点目、牧田明久選手のホームランが効果的だったと思います。対左投手要員でスタメンだった牧田選手でしたが、(右投手の)澤村拓一投手を相手によく打ったと思います。星野監督の期待に応えた一発になりました。2点を取って、3回もチャンスがありながら得点できなかった中、リードを3点に広げられたのは大きかったです。2点では第6戦のようにワンチャンスでひっくり返されますので。8回以外、毎回安打でしたし、簡単に3人で終わらないという姿勢も見えて、3点ですが、得点以上に打線が活発だったのは良かったと思います。
前日、田中投手で楽天は敗れましたが、チームに「田中に恩返ししたい」というようなコメントも見られました。今まで頑張ってきた田中投手に対し、「前日は打線も守備も応えられなかった。日本一にならないと田中投手の頑張りも薄れてしまう」という思いから、「チームのみんなが田中投手に日本一をプレゼントしたい、最高の栄誉を付けてあげたい」という思いを感じられました。
阿部を眠らせた、3戦までの徹底したインサイド攻め
阿部を完全に封じた楽天バッテリー。嶋(右)を中心に徹底したインサイド攻めが効果的に働いた 【写真は共同】
具体的には、阿部選手はインサイドのカット系、スライダーがファウルになっていました。どんどんインサイドに投げていき、ファウルを打たせた。阿部選手は体が開いていてしまっていて、外角の球に対応できていませんでした。緩急も織り交ぜ、幅広く攻めることができたことで、阿部選手を眠らせたまま終わらせることができたと思います。
阿部選手の調子の良し悪しに関係なく、ベストスイングをさせず、結果を出させなかったこと。阿部選手を徹底的にマークし、則本昂大投手、田中投手、美馬投手で眠らせることができたのが大きな勝負の分岐点になったと思います。
強打者相手にインサイドを投げるのはピッチャー心理としては投げにくいものなんですが、則本投手、田中投手、美馬投手が、攻めていき、投げきれたことがポイントになったと思います。インサイドをトコトン攻めた。バッテリーのこのしつこさが4勝3敗という結果につながったと思います。
9年、楽天に携わったすべての人あっての日本一
創設1年目を知らない選手が増えてきていますが、創設期を知らない選手たちが躍動している姿は、私ら創設期にいたメンバーとしてはうれしい限りです。星野監督のもと、のびのび野球をやって、頼もしくなったと思います。
9年の歴史、どこか1年が欠けていても今季の優勝はなかったと思います。歴代の監督さん、携わったコーチの方、関係者の方、すべての人といっしょに勝ち取った日本一だと思います。
また、ファンの後押しがあって9年間、選手たちは頑張れて来られたと思いますので、あらためて日本一のファンが楽天には付いていると感じました。
※次ページは橋本氏による巨人の解説