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「逆転の駒澤」からの脱却でつかんだV3
元駒澤大・神屋氏が全日本大学駅伝を解説
全日本大学駅伝で駒澤大が3連覇を手繰り寄せた要因は!? 元駒澤大の神屋氏が解説した
全日本大学駅伝で駒澤大が3連覇を手繰り寄せた要因は!? 元駒澤大の神屋氏が解説した【写真は共同】

 第45回全日本大学駅伝が3日、愛知・熱田神宮から三重・伊勢神宮までのコースで行われ、駒澤大が5時間13分9秒で大会3連覇を果たし、学生駅伝3冠に王手をかけた。2位は東洋大で5時間16分19秒、3位は明治大で5時間18分32秒だった。


 駒澤大は、1区・中村匠吾がスタートダッシュに成功し、必勝パターンに持ち込んだ。2区で一度は東洋大に先頭を譲るも、4区の村山謙太が区間新の快走でトップに立つと、最後まで危なげなくたすきをつないだ。

 一方の東洋大は、学生駅伝で5大会連続2位と悔しい結果に終わった。


 スポーツナビでは、駒澤大OBで全日本大学駅伝に4年連続(1998〜2001年)出場し、現在は武蔵野学院大学陸上競技部監督を務める神屋伸行氏に今大会を総括してもらった。

大きかった「1区・中村」の効果

――駒澤大が3連覇を果たしましたが、レースをどう見ましたか?


 駒澤大は、10月の出雲駅伝と同じく1区に中村選手を置きました。安定したレース展開が予想されましたが、それが見事に当たって、駒澤大の力を楽に発揮できる状態でした。他を寄せつけない強さを発揮しましたね。


 中村選手は、箱根駅伝のエース区間である2区に使われてもおかしくない、本当に強い選手です。今回は自分の役目をはっきりと分かっていましたね。東洋大・設楽悠太選手が仕掛けるのも分かっていながら、余裕を持ってついていき、勝てると分かってから突き放しにかかっています。本当に落ち着いた、これ以上ないというレースを見せてくれました。


――走力では2人に大きな差はないと思いますが、1区終了時点で32秒もの差がついた要因は?


 高校時代の(双子の兄である)設楽啓太選手、悠太選手を見る限り、自分たちでのびのびと走るタイプだと思います。2人が責任を負わされる区間を走った時は、結構、力を発揮できていないことが多いんです。他人を意識して、無理やり相手を離して何秒リードしなきゃいけないというレースを、彼ら2人がやるイメージはありません。


 今回、悠太選手は中村選手を離さないといけない状況にあって、“らしく”ない走りだったと思います。もし、中村選手とトントンでも良いという状況だったら、もう少し楽なレースができたのではないかと思います。


――駒澤大は“常勝軍団”と言われながら、これまで勝てないことが多くありました。それが今年はここまで2勝。昨シーズンとはどこが違うのですか?


 1区の中村選手が区間賞を取れるというのが大きいのではないでしょうか。駒澤大は、これまで、後半を頑張って勝っていくというイメージが強くありました。1区で負けてしまう、1区で出遅れるというイメージもあります。そこで中村選手が1区に来ると、隙のないオーダーになる感じを受けました。「逆転の駒澤」よりも、1区からしっかりと行く駒澤大の方が、オーダーにも幅が出ます。出雲も全日本もそれで勝てたのだと思います。

東洋大は“らしさ”を出せず……

――2区、3区は東洋大が1位に立ちましたが、その後、駒澤大がトップを奪還しました。


 駒澤大の区間配置がポイントだったと思います。全日本は8区、1区、4区という順で区間距離が長いのですが、今回の大八木弘明監督のオーダー配置は、その区間に、学生陸上界トップの3人(窪田忍、中村、村山)を強い順に並べた感じです。本来はエース区間と見てもおかしくない2区も、つなぎ区間と考えていたのではないでしょうか。なので、1区でトップ、2区、3区で抜かれたり抜き返したりして4区でトップに立つというレースが、すでに想定されていたのかもしれません。


 全日本には、先ほど挙げた3人にちょうど良い距離の区間があるんです。大八木監督としては、適材適所でポンポンと配置した結果だったのではないでしょうか。悩むとしたら「1区に中村はぜいたくかな」といったところだと思います(笑)。今回は勝ちにいったオーダーに見えました。


――東洋大は、学生3大駅伝で5大会連続2位と悔しい結果になりました。


 東洋大が弱いのではなく、結局、勝ったところが強いという部分が多々あります。また東洋大は、以前、箱根駅伝で突っ走って勝ったように、のびのびとトップを走った時に強さを発揮するんです。それが、ここ最近は1区で区間賞を取れなかったり、追わなければいけない状況で負けています。追う展開では、東洋大らしくないレースになってしまうのかなと思います。


――追わなければいけないことで、精神的な影響も大きいのでしょうか?


 経験の差もあるのではないでしょうか。東洋大は、どちらかと言えば大学で伸びた選手や、チームより個人で強かった選手が集まっています。設楽兄弟も田口雅也選手もそうですよね。強い高校を出て、高いレベルでずっと駅伝をしてきた選手と比べると、駅伝の経験を多く積んではいないので、「何としても追わなければいけない」というレース経験もそこまで多くない。だから、出雲や全日本のような追う展開になると、どうしても力んでしまい、力を発揮できないまま終わってしまうのだと思います。


 一方で、駒澤大の場合は、トップに立つと強いんです。トップを走っても粘るという、1秒、2秒を大事にして走り続ける駒澤大のスタイルに対して、どうしても前半突っ込んでしまうと東洋大は厳しいです。

構成:スポーツナビ