元日本代表が語るラグビーW杯とNZ戦=11.2対オールブラックスいかに戦うべきか
ラグビー元日本代表の(左から)松田氏、田沼氏、増保氏がワールドカップの魅力、そして11.2NZ戦の展望を語った 【スポーツナビ】
アンバサダーとしてフォーラムに参加したのは、ラグビー元日本代表選手の松田努氏、増保輝則氏、田沼広之氏の3名。ラグビージャーナリストの村上晃一氏の司会のもと、田沼氏が所用により遅刻するという“緊急事態”でのスタートとなったが、実際に出場して体験したワールドカップの魅力、また思い出話など、時には松田氏が“寒い”と評判のジョークを交えつつラグビーファン垂涎の内容を披露。田沼氏もなんとか講演時間ギリギリに到着し、ラグビーの魅力を大いに語るとともに、3名ともラグビーワールドカップ2019成功のためのアンバサダーとしての活動を報告した。
平尾誠二監督からの熱い手紙に涙
松田氏が99年W杯ウェールズ大会で、当時の平尾監督から熱い手紙をもらったエピソードを披露 【スポーツナビ】
1. 「強いニッポン」で世界の人々をおもてなししよう
2. すべての人が楽しめる大会にしよう
3. ラグビーの精神を世の中に伝えよう
4. アジアにおけるグローバルスポーツの発展に貢献しよう
4本目の柱に関してはすでに日本がアジア各国に対し活発に支援をしていることから、まず講演は1〜3本目の柱に関するトーク内容となった。
実際に複数回にわたってワールドカップに出場した経験から、増保氏が感じたことは、ラグビー大国の“本気度”はもちろんのことだが、試合以外に目を向けると、開催国のホスピタリティに感銘を受けたと言う。
「僕は91年のイングランド、95年の南アフリカ、99年のウェールズの3大会に出場しましたが、迎えてくれる国のホスピタリティがすごく高かったですね。例えばホテルから会場まで白バイが3台くらいで移動バスを先導してくれて、僕らはノンストップで試合会場まで行くことができました。他にもボランティアだったりいろんな方たちの協力があって、本当にストレスのかからないおもてなしを受けました」
91年から4大会にわたってワールドカップに参加した松田氏は、99年のウェールズ大会において、初戦のサモア戦の前に当時の平尾誠二監督から手紙をもらったことを明かした。
「選手全員に手紙をくれたんです。平尾さんは普段から熱い人なんですが、その手紙にもすごく熱いことが書いてあって、試合前だったんですが感極まって涙してしまいましたね。それくらい気持ちが入りました」
ただ、試合は同年のパシフィック・リム選手権で勝っているサモアに9対43で完敗。松田氏はタックルを受けて負傷してしまうアクシデントもあったが、それだけ各国の“本気度”の違いを実感したという。
痛感した世界の壁……しかし「今のJAPANは強い」
増保氏はラグビー強豪国が見せるW杯での“本気”に何度も驚かされたという 【スポーツナビ】
「95年当時、僕は25歳で、足が速くて絶好調だったんです(笑)。でも、世界はもっとすごかった。オールブラックスをはじめ、ウェールズ、アイルランドにまったく通用しなくて、まだまだ力が足りないなと感じましたね。自分の中では結構いけるんじゃないかと思っていたんですが……」(松田氏)
「95年はいろんなことがあったんですが、その後に心を入れ替えて、本当の意味でワールドカップに出場したと思ったのが99年でした。もうこれ以上トレーニングできないってくらいの準備をしていったんですが、それでも1勝もできませんでした。世界各国の選手たちはみんな、このワールドカップに向けてベストコンディションを作ってきますし、これが本当の戦いなんだと改めて感じましたね」
しかし、だからと言って来たる2015年のイングランド大会での6大会ぶりワールドカップ勝利は決して遠いものではない。「現在の日本代表は、今までの日本代表の中で一番強いと思う」と増保氏。「強いJAPANになっているので、次のワールドカップまでにさらに強化して、本戦で勝ってほしいですね」と大きな期待を寄せている。そして、15年のイングランド大会へ向けての大きな試金石ともなるのが、11月2日に東京・秩父宮ラグビー場で行われるニュージーランド代表「オールブラックス」とのテストマッチだ。この目前に迫った大一番については、フォーラム参加者との質疑応答でたっぷり語っているので、当レポートの2ページ目からを参照してもらいたい。
ラグビー普及のため『桜満開プロジェクト』開始?
時間ギリギリに到着した田沼氏だったが、代表ジャージを着用して「桜満開プロジェクト」発足を宣言 【スポーツナビ】
松田氏は熊本のファンから「北海道から沖縄まで日本全国でパスをつないできたボールを使って開会式でキックオフをできないか」というアイデアをもらい、増保氏は「地道な活動が大事」と説く。
「例えばSNSなどを利用したり、ファンの方と密にコミュニケーションをとっていきたいですね。ファンの方といっしょにラグビーを広げていく活動ができるのではないかと思っていますし、ラグビーファンをいい意味で巻き込んでいきたいですね」
さらに増保氏が、ラグビーワールドカップ2019の認知活動として強く提案したのが“ピンバッジ”の着用だ。
「東京五輪招致のときに、いろんな方が招致バッジをつけていて、それがよく目に付きました。これはラグビーも見習った方がいいと思います。結構みなさん、上着につけているバッジには目が行くと思うんですよ。僕もワールドカップのバッジをつけていると、周りの方の目がバッジに行くのを感じるんですね。ですから、いろんな方にバッジをつけていただいて、2019年のラグビーワールドカップが日本で開催されるんですよ、ということを少しでも宣伝していければ、少しずつでも認知が広がっていくのかなと思いますね。それで僕は今、たくさんの方にバッジをお渡ししているんです」
そして、ラグビーを知らない人に対しては、「ぶつかり合いながら相手を尊敬できる。試合後には敵味方チーム合わせて30人同時に仲良くなれるラグビー独特の精神」(増保氏)、「パス回しではなくて、直接響いてくる当たりの激しさを見てほしい」(松田氏)と、コンタクトスポーツだからこそ生まれる魅力をアピールしていきたいとそれぞれ語った。
と、講演も終了間際になったところで、田沼氏がようやく到着。「いろんな人たちに出会えること、ラグビーで人がつながっていくこと」と実体験からのラグビーの魅力を語ると、ただ一人、日本代表のレプリカジャージを着てきたことにも言及。「99年ウェールズでのワールドカップで、街中の人たちがウェールズのジャージを着ていて、街が真っ赤に染まっていたんです。そんな光景を見てめちゃくちゃ気持ちが高揚しましたし、こんな国の代表になりたいと思いました」。そんな強い想いから、日本全国でもラグビー日本代表の試合がある日はみんなジャージを着て一体となって応援しよう!という意味と目的を込めて、ジャージの左胸に刺繍された桜のマークにちなみ『桜満開プロジェクト』を独自で立ち上げて、講演会第1部は幕を閉じた。
※次ページからはフォーラム参加者との質疑応答、11.2ニュージーランド戦の話など